【教えていただいた方】
高田眼科(静岡県浜松市)院長、フラミンゴ眼瞼・美容クリニック(愛知県名古屋市)主宰。眼科医と形成外科医の知識、豊富な眼瞼手術の術者としての経験をもとにファシアリリース法を考案。保険適用手術にこだわり、手がける眼瞼下垂手術は年間2000件以上。全国から患者が来院。メールでの眼瞼下垂相談も可能。
その頭痛や肩こり、まぶたのたるみが原因かも!
眼瞼(がんけん)とはまぶたのこと、下垂(かすい)は垂れ下がるという意味。眼瞼下垂は文字通りまぶたが下がり、不調や不便が起きている状態のことです。
先天性の場合もありますが、40代以降に起こるのはほぼ後天性の眼瞼下垂。まぶたを上げるための筋肉、眼瞼挙筋やミュラー筋の力が弱くなることがおもな原因です。
「眼瞼下垂は知らずに進行していることが多いもの。目の不調だけでなく、頭痛や肩こりを引き起こすことも普通ですよ。不眠や集中力が落ちるなんてこともあります。
もちろん外見も老けて見られがちで、まったくいいことがありません。 あとで説明するようなライフスタイルの変化に伴って、最近は眼瞼下垂で悩む人がとても増えています。
一度なってしまうとセルフケアで治せるものではなく、治療として手術が必要になります。最近は、手術を手がける医師が増え、術法も進化してきていますよ」
こう解説してくれるのは、眼瞼下垂の手術を専門に手がける高田尚忠先生。
浜松と名古屋で実施されている高田先生の手術を受けに、全国各地から患者さんがやって来ます。
まず、次のチェックをしてみましょう。
5つ以上当てはまる項目があったら、もう眼瞼下垂の可能性も!(詳しいセルフ診断は最後に)
頭痛や肩こりが眼瞼下垂からきているものだとしたら、なぜなのでしょう?
「まぶたが上げにくくなると、これを補うためにまぶたの眼瞼挙筋を過剰に使うのはもちろん、額にある前頭筋や眉の力、果ては首や肩の筋肉まで総動員してまぶたを引き上げようとします。
これらの筋肉はつねに緊張して縮んだ状態になり、頭痛や肩こりなどを引き起こすと考えられます。慢性的に交感神経が優位になるのももちろん原因になるでしょう」
加齢だけじゃない、眼瞼下垂を起こすのは生活習慣だった!
眼瞼下垂は誰にでも起こります。
当然ながら、年齢を重ねるほど起こりやすくなりますが、とても個人差があります。
実は、眼瞼下垂を誘発、進行させる要因はその人の生活習慣にもあるのです。
まぶたの開け閉めにかかわる組織を無意識に傷めている習慣や癖には意外なものも!
思い当たる習慣や癖はできるだけ改善したいもの。
眼瞼下垂になっていない人は予防が、なっている人でも進行をくい止めることができるかもしれません。
◆◆眼瞼下垂を進行させる要因◆◆◆
【コンタクトレンズの長期使用】
特にハードコンタクトレンズを使っている人は要注意。つけたり外したりするとき、まぶたを引っ張るのが大きなダメージに。外すときはできるだけ優しく。できればつけない日を作り、まぶたを休めることも大切。
【アイプチの長期使用】
アイプチやアイテープなどの道具で二重まぶたを作っている人も、眼瞼下垂のリスク大。まぶたは元の位置に戻ろうとするので、筋肉が疲労したり皮膚にも大きな負担が。
【アイメイク】
アイライン、ビューラー、マスカラと、まぶたを引っ張って変形させながらメイクをしていませんか?
メイクを優しくしている人も、クレンジングで負担をかけていたら同じこと。特にウォータープルーフタイプをこすって落としたりするのは負担大!
【まつ毛エクステンション・まつ毛パーマ】
まつ毛エクステンション(マツエク)自体はとても軽いものですが、自まつ毛には余計な重みが加わります。まぶたを上げる筋肉は同時にまつ毛も引き上げているため、重みが増した状態が続くのは大きな負担。 一方、まつ毛パーマは自まつ毛を薬液を利用してカールさせる技術。マツエクのように余計な重みはかからないものの、パーマをかけるときの負担も考慮して。
【目をこする癖】
頻繁に目をこする癖がある人は意外に多いものです。まぶたの組織は想像以上に繊細なもの。ぐいぐいごしごし、力を入れてこすっていないかどうかチェックを。
【スマホやPCの使いすぎ】
長時間スマホやタブレット、PCを使用して目を酷使していると、まばたきの回数が極端に減ります。これがドライアイや目の疲れ、かすみ、視力低下などの原因になり、眼瞼下垂にもつながります。できるだけ目に負担をかけない対策が必要。
【花粉症やアトピー性皮膚炎】
花粉症の目のかゆみやアトピー性皮膚炎で、まぶたをこすったりかいたりする習慣がある人は、若くても眼瞼下垂のリスク大! できる限りこすらない、かかないと肝に銘じることが大事。
意外に簡単、意外にわかる! 眼瞼下垂のセルフチェック
眼瞼下垂になっているのかどうかは、医師にしかわからないと思っていませんか?
もちろん医師以外が“診断行為”をしてはいけませんが、セルフチェックである程度の予想はできます。
眼瞼下垂の診断基準のひとつが「MRD(margin-reflex distance)」。上まぶたの縁と黒目の中央部の距離のことです。
定規を使って測ってみませんか?
◆◆眼瞼下垂診断基準「MRD」測定の仕方◆◆
自分で測る際には、両手が使えることが大事。
鏡に映しながら定規の目盛を見るだけでもOKですが、人に見てもらえれば理想的。
スマホのインカメラで撮影するのも確実です。その場合は両手が使えないのでスマホを立てかけるか、三脚などで固定し、タイマーで自撮りしましょう。
①片手で定規をおでこに垂直に当てます。
②MRDを測るのに重要なのは、おでこの筋肉や眉の力が加わらないようにすること。そのため、もう一方の手の指を眉に沿わせて当て、動かないように押さえてから、おでこの力を抜いて目を閉じます。
③そのまま、そーっと目を開けてください。上まぶたの縁から黒目の中央までの距離は何mmですか? それが自分のMRDです。
◆◆MRDによる眼瞼下垂の判定◆◆
目安として「MRD」が3.5mm以下になると、上まぶたのかぶりによる視野欠損が出てくるため、そのあたりが眼瞼下垂症の診断基準になっています(注1)。
(注1)Cahill, K. V., Bradley, E. A., Meyer, D. R., Custer, P. L., Holck, D. E., Marcet, M. M., & Mawn, L. A. (2011). Functional Indications for Upper Eyelid Ptosis and Blepharoplasty Surgery: A Report by the American Academy of Ophthalmology. Ophthalmology, 118(12), 2510-2517.
↑MRD=上まぶたの縁と黒目の中央の距離で判定します。
距離だけでなく、瞳にどれだけ上まぶたがかぶさっているかも目安に。
眼瞼下垂ではない■正常 3.0㎜以上:黒目がほとんど全部見えている
眼瞼下垂■軽度 1.5㎜前後:黒目にはかかるが瞳にはかかっていない
眼瞼下垂■中度 0.5㎜前後:瞳の一部が隠れている
眼瞼下垂■重度 ― 0.5㎜前後:瞳が半分以上隠れている状態
イラスト/かくたりかこ 取材・文・画像制作/蓮見則子