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耳掃除はNG! ついやっている習慣が難聴の原因!? (耳を守る生活習慣)

何気なく行っている習慣、健康にいいと思って行っていること、最近使うことが増えたイヤホンやヘッドホンも、実は「耳鳴り・難聴」を助長している可能性が! 日頃やってはいけないこと、逆に積極的に行いたいことなど、「耳を守る生活習慣」について、耳鼻咽喉科医で医学博士の石井正則先生に伺いました。

耳あかは守護神! 耳掃除はしてはいけない

耳かきをしたときに耳あかがコソッと取れることに快感を感じ、定期的に行っている。お風呂上がりに、耳に入った水分をぬぐうとともに綿棒で掃除している。そんな人はとても多いのではないでしょうか?

 

「実はそれは絶対にやめてほしい行為です。耳あかはただのゴミではなく、きちんとした働きがあります。

 

耳あかは、耳の穴にある汗腺の一種である耳垢腺や皮脂腺からの分泌物に、外から入ってきたゴミと古くなった皮膚の角質が混ざったものです。

 

その働きのひとつは、外からのゴミを吸着することです。そして、耳垢腺から分泌される濃度の高い脂質によって、外耳道の潤いを保ち皮膚を守る働きがあります。

 

そして、耳あかは弱酸性で、耳垢腺から分泌されるリゾチームというタンパク質分解酵素と免疫抗体IgAを含んでいて、細菌の繁殖を抑えるなど感染症予防の役割があります。

 

耳掃除をしすぎると抗菌作用や抵抗力が低下して、細菌が増殖したりカビが生えたり、時には就寝中にベッドにいたダニが侵入することさえあります。

 

外耳道は穴の奥から入り口に向かって、表皮が移動する仕組みになっているので、耳あかは放っておくと自然に耳の外に出てきます。

 

むしろ、耳掃除を繰り返すことで、外に出ようとしている耳あかを奥へ押し込んでしまうことがあります。こうして押し込まれた耳あかで、完全に耳の穴が詰まってしまう状態を『耳垢栓塞(じこうせんそく)』といいます。

 

私のところにも、突然耳の聞こえが悪くなったと、慌てて受診に来た患者さんがいたのですが、耳の中に鉛筆の頭についている消しゴム大の耳あかが詰まっていたことがありました。頻繁に耳掃除をすることで、耳あかを奥に押し込んでいた結果です。耳鼻咽喉科ではよくあることです。

 

耳掃除は百害あって一利なし。どうしても気持ちが悪い場合は、2~3カ月に一度、耳鼻咽喉科で取ってもらうことをおすすめします。ちなみに私はいっさい耳掃除をしていません」

 

へッドホンやイヤホンの1時間以上の連続使用をしない

難聴 ヘッドホン イメージイラスト

最近はスマホでも気軽に音楽が楽しめ、ヘッドホンやイヤホンの小型化や性能がアップしていることもあり、日常的に利用している人も多いことでしょう。

 

「しかし、ヘッドホンやイヤホンは使い方によっては音響性難聴になる可能性があります。通常の音は空気に伝わる途中で弱まりますが、ヘッドホンやイヤホンでは音がそのまま耳に伝わります。大音量で音楽を長時間聴くと、内耳の有毛細胞が徐々に壊れていきます。

 

※耳の機能、音響性難聴に関しては第1回参照。

 

しかも、ヘッドホンやイヤホンによる音響性難聴は、時間をかけて少しずつ進行するので、初期には自覚しにくく放置してしまいがちです、すると内耳の有毛細胞が脱毛してしまい、聴力が戻らなくなるので注意が必要です。

 

音量をできる限り下げて、1時間以上連続で聴かないことが大切です。外部の雑音を遮断する(ノイズキャンセリング)機能がついたものを使うのもおすすめです。これを使うことで、音量を下げることができるからです。

 

適度な音量は65デシベル程度、目安はヘッドホンやイヤホンをしたままで会話が聞き取れるくらいです。

 

よく電車内などで、外にまで音が漏れるほどの音量で聴いている人がいますが、あれを長年続けていたら、確実に難聴になります。絶対にやめてください。

 

いずれにしても、1時間たったら一度外して、10~15分は耳を休ませましょう。また、疲労をためずに、十分な睡眠をとり、過度な飲酒を避けることも耳の健康を保つためには大切です」

 

耳に最も大切な栄養素はビタミンB群とC!

毎日の食事で私たちの体はできていますが、特に耳の健康を守るために必要な栄養素はあるのでしょうか?

 

「バランスよくなんでも食べるのが前提ですが、しいて言うならビタミンB群とCです。

 

ビタミンB群は体内の代謝やエネルギー産生にかかわる栄養素。特にビタミンB1とB6は神経機能の維持にもかかわり、ビタミンB2は血管の酸化を抑えることで、内耳の血流を促します。

 

また、ビタミンCは抗ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールの合成を促して、ストレスの軽減に役立ちます。

 

ビタミンB1が豊富な食材は豚肉、うなぎ、そばなど。B6はマグロ、鶏肉、さつまいもなど。B2はレバー、卵など。ビタミンCはピーマン、ブロッコリー、レモンなどです。

 

特にこれらの食材を使った和食がおすすめです」

 

耳の健康を守るなら「ホットヨガ」はNG!

「私はヨガのインストラクターでもありますが、通常のヨガは優れた有酸素運動で『耳鳴り・難聴・めまい』の予防・改善に最適な運動です。しかし、ホットヨガはNGです。

 

ホットヨガはたいてい、温度38~39℃、湿度65%の高温多湿な環境で行います。これは熱中症を起こす危険な環境です。日本の真夏の炎天下で1時間ヨガをするようなものです。

 

実際に、ホットヨガで『耳鳴り・難聴・めまい』を発症したり、症状が悪化するという報告が多発しています。私のところにも駆け込んでくる患者さんが多数いらっしゃいます」

 

ヨガは心地よい環境で気持ちよく行うのが鉄則です。

 

 

[教えていただいた方】

石井正則
石井正則さん
耳鼻咽喉科医・医学博士
公式サイトを見る

JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長。東京慈恵会医科大学大学院卒業とともに、米国ヒューストン・ベイラー医科大学耳鼻咽喉科へ留学。帰国後、東京慈恵会医科大学附属病院耳鼻咽喉科医長、同大学准教授を経て現職。岐阜大学臨床教授を併任。専門は耳鳴り、めまい、難聴、宇宙酔い。日本耳鼻咽喉科学会代議員、宇宙航空研究開発機構(JAXA)・宇宙医学審査会委員。ヨギー・インスティテュート認定インストラクターであり、ヨガのポーズと呼吸の応用で、耳鳴りやめまいの軽減法を提唱している。著書に『70歳から難聴・耳鳴り・認知症を防ぐ対処法』(さくら舎)など多数。 石井正則先生著書

 

イラスト/かくたりかこ 取材・文/山村浩子

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