「いいうんち」を出すには、白米を1日2膳食べるのがおすすめ
肛門が切れる裂肛や、痔核が大きくなるのを予防・改善するには、便秘や下痢を防いで、便通を整えることがポイント。肛門に負担をかけずに排便するためにも、硬すぎず、水分を程よく含んだバナナ状のうんちが理想です。
「便は、私たちが摂取した食物から栄養素が吸収されたあとの食物繊維の塊。朝食を抜くなど食事が不規則になると、食物繊維の摂取不足に陥ってしまいます。まずは1日3食きちんと食べることが基本です」(高橋先生)
近年、炭水化物抜きダイエットが注目され、「炭水化物はダイエットの敵」と見られてしまいがち。でも、炭水化物は食物繊維の一種なので、主食となるご飯やパンを抜いた食事を続けていると、便秘しやすくなってしまうのです。
「便通を整えてくれるおすすめの食品は、実は白米ご飯です。白米に含まれるデンプンには、便を程よい軟らかさに保ち、まとまりのある形状にする働きがあります。便秘と痔の予防・改善に役立つので、患者さんたちにも『できれば、白米ご飯を1日2膳食べてみて』とお伝えしています」
便秘しやすい人、下痢しやすい人の食事の改善ポイントは?
昨今の腸活ブームで、玄米ご飯や雑穀ご飯を取り入れている人も多いでしょう。にもかかわらず「便秘ぎみ、または下痢ぎみ」という人がいるのはなぜでしょうか?
「玄米や雑穀は不溶性食物繊維が豊富なことで知られています。すっきりと排便できているのなら、体に合っているサインなので問題ありませんが、玄米や雑穀を毎日食べることによって、便が硬くなってしまう人もいるのです。その理由は、人によって『合う・合わない』があり、腸のコンディションにも多様性があるからです。便が硬いと悩んでいる人は、いったん白米だけのご飯に戻すことをおすすめします。硬すぎず、軟らかすぎないうんちになりますよ」
また、「腸活しているのに、便が硬い人」は、もしかしたら玄米・雑穀とともに根菜類、キノコなどの不溶性食物繊維の摂取過多に偏っているのかもしれません。不溶性食物繊維の摂取量を減らして、海藻類や果物などの水溶性食物繊維を含む食品に置き換えてみるといいでしょう。
一方、「腸活しているのに下痢しやすい人」は、乳製品、甘いもの、果物、小麦、カフェイン、アルコールなど、糖質の摂取過多に偏らないように気をつけましょう。
下痢ぎみの人は高FODMAP食品に注意
「腸活しているのに下痢しやすい」という場合は、高FODMAP食品をとりすぎていないか、日頃の食事をチェックしてみてください。
【高FODMAP食品とは?】
高FODMAP食品とは、腸内で発酵しやすく、吸収されにくい糖質を含む食品のこと。Fermentable(発酵性)、Oligosaccharides(オリゴ糖)、Disaccharides(二糖類)、Monosaccharides(単糖類)and Polyols(ポリオール:ソルビトール、マンニトール、キシリトール)の頭文字からFODMAPと呼ばれます。
主にヨーグルトなどの乳製品、ケーキなどの甘いもの、果物、パン・パスタなど小麦粉を使った食品、納豆・豆乳などの大豆食品、アルコールなど、上に挙げられた糖質を多く含む食品を指します。
なかでもヨーグルトは腸活によいとされる食品ですが、近年、過敏性腸症候群をはじめとする下痢しやすい人たちは、高FODMAP食品を控えるほうがよいといわれているのです。
というのも、糖質は通常は消化を受けたのちに小腸で吸収されますが、人によって高FODMAP食品に含まれる糖質が吸収されにくい場合があるからです。すると吸収されなかった糖質が大腸まで下降して、大腸内の浸透圧が高くなり、水で薄めようとする働きが引き起こされてしまいます。そのため、便が緩くなってしまうのです。また、大腸の中に糖が増えることで、悪い働きをする腸内細菌が活性化し、ガスの発生や痛みを引き起こしやすくなります。
「ですから、便が緩くなりやすい人の場合、高FODMAP食品をとりすぎないよう、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維をバランスよくとることがポイント。高FODMAP食品の摂取が多くなっていないか、食事内容を見直すことが大切です」
便秘対策の水分摂取は適度に。むしろ食事内容のほうが大事!
「便秘予防には水分補給が欠かせませんが、1日2ℓ以上」と、季節を問わずに無理して飲む必要はありません。『2ℓ』にとらわれると、頻尿や尿もれを招くことがあるからです」
成人女性の1日の尿量は1200~1500㎖ほどなので、そのくらいを目安に水分補給量を調節するとよいでしょう。
「痔を予防・改善するには、まずは食事を見直して、排便を整えることが最重要。一汁三菜を基本に、汁物、白米ご飯、水溶性食物繊維、不溶性食物繊維をバランスよく取り入れ、偏った食べ方をしないように心がけてください。
今や、腸のコンディションも多様性の時代。メディアでおすすめの食品であっても、人によって『合う・合わない』というケースがあります。特定の食べ物にこだわらず、自身の便の硬さに応じて食事を合わせていきましょう」
【教えていただいた方】
東京女子医科大学卒業。亀田京橋クリニックにて、全国でも珍しい直陽と肛門の疾患に特化した「女性のためのこう門・おつうじ外来」を担当。専門分野は肛門疾患、排便機能障害、分娩後骨盤底障害。女性たちの便秘や痔、便失禁、直腸脱などのトラブルに対して、専門的な治療とともに生活指導を行っている。
イラスト/内藤しなこ 取材・文/大石久恵