年齢とともに靭帯の弾性が低下して足まわりが硬くなる
人生100年時代、いつまでも自立した生活を送るためには、筋肉を維持することが大切です。筋肉のケアは何歳になっても効果がありますが、今から運動習慣をつけることが大切です。
この連載では主に、足や手といった末端の筋肉や機能を強化する方法を紹介します。
※足や手の大切さについては、第1回参照。
「年齢とともに一般に足の関節の靭帯の弾性が低下し、可動域が少なくなってきます。膝や足首だけでなく、足を構成する小さな関節が硬くなり足まわり全体が硬くなる傾向があります。
特に親指の柔軟性は大切です。親指が十分に反らないと、歩くときにブレーキとなったり蹴り出しの力が伝わりにくくなります。そのため、同じスピードで歩いたとしても若いときより、より多くのエネルギーが必要となるため、余計に歩くのがおっくうになってしまいます。
足の親指の可動域は、親指の付け根(母趾中足趾節関節・ぼしちゅうそくしせつかんせつ)を横から見たときに約90度ほど反る必要があります。ここの柔軟性が失われて、可動域が狭くなると、歩行で疲れやすくなったり、足首や膝がそれを補おうとして使いすぎになって痛みを生じたりします」(大渕修一先生)
ストレッチで足の親指と足底腱膜の柔軟性をアップ!
そこで行いたいのが、足指を反らせるストレッチです。
「足指を反らせると、中足趾節関節のストレッチになるだけでなく、歩いたときに痛みを発生しやすい足底腱膜のストレッチにもなります。
足底腱膜は足の指の付け根からかかとまで、足の裏を膜のように張っている筋膜です。足底面の親指の付け根やかかとの前方の痛みがある場合には、足指を反らせて足底腱膜を十分にストレッチすると、歩くときの足底腱膜のストレスが軽減します」
【親指ストレッチ】
1 椅子に座り、右脚の膝を曲げて左膝に乗せます。右手で足首あたりを持ち、左手で足の親指を反らせて10秒キープします。ゆっくり元に戻し、脚を組み替えて左足も同様に行います。これを10回行います。
赤丸のあたりを、右手で軽く押さえて行い、足底腱膜の張り具合を確認しながら行う方法もあります。
足指の骨をつなぐ靭帯を伸ばす
「5本の足指の骨(中足骨)は、一体となって衝撃を吸収したりバランスをとったりするために、5本の中足骨を束ねるように靭帯が伸びています。ちょうど扇の要のようになっていますが、この靭帯は小さい靭帯なので加齢の影響を受けやすく、硬くなり可動域が狭くなってしまいます。
足底面から親指で押して、反対に他の指を足の甲から添えて左右に引き伸ばすようにすると、この小さな靭帯がストレッチされます。
土踏まずは、縦のアーチと横のアーチというふたつの橋梁構造を持っていて、荷重を分散したり、バランスをとったりしていますが、このストレッチは横のアーチを正常化するのに役立ちます」
【足の甲のストレッチ】
1 椅子に座り、右脚の膝を曲げて左膝に乗せます。両手の親指をそろえて、足裏の土踏まずの少し上部に置いて、左右の4指で足の甲を包みます。
2 ゆっくりと両手の親指で足裏を押しながら、甲を左右から丸めます。土踏まずの部分に卵があって、それを包み込むようなイメージです。ゆっくり甲を伸ばしたら10秒キープして元に戻します。これを10回繰り返します。
脚を組み替えて、左足も同様に。
お風呂上がりなど、体が温まっているときに行うといいでしょう。一日靴に押し込んで酷使した足をいたわるように、または運動不足で筋力低下が気になる人は足の血流を促すような気持ちで行います。
このストレッチを行うことで痛みを感じる場合は無理をせず、一度、整形外科で診てもらってください。
【教えていただいた方】
東京都健康長寿医療センター 研究所・福祉と生活ケア研究チーム研究部長。国立療養所東京病院附属リハビリテーション学院卒業後、米国ジョージア州立大学大学院にて理学修士号、北里大学医学部大学院にて医学博士号を取得。北里大学医療衛生学部助教授などを経て現職。専門は理学療法学、老年学、リハビリテーション医学。著書に『70歳からの筋トレ&ストレッチ』(法研)など多数。
イラスト/green K 取材・文/山村浩子