足指や足裏・甲をしっかり動かして筋力アップ!
前回は、足の靭帯が硬くなることからストレッチを紹介しましたが、足まわりでもうひとつやってほしいのが足の固有筋肉のトレーニングです。足には、足の構造を正常に保つための足の中を縦横無尽に走っている小さな筋肉があります。この筋肉のトレーニングも重要です。
「このような筋肉は、足の構造を維持するために重要な筋肉で、バランスをくずしたときなどにもよく活動します。しかし、高齢期は関節が硬くなること、飛んだり跳ねたりバランスを必要とする活動をしなくなることから、どうしても筋萎縮が進みがちです。あるいは、ハイヒールなど、正常な足の動きを阻害する靴なども筋肉の活動を低下させます。
また、この小さな筋肉は路面の状況を脳に伝えるセンサーの役目を担っていますから、転倒を回避するためにも重要です。寝たきりの主要な原因に転倒があります。小さな筋肉のトレーニングですが、将来の寝たきりを予防することにもつながるでしょう。
※詳しくは第2回参照。
こうした足まわりの筋力を維持するためには、足指や足首、足裏や甲を積極的に動かすことが大切です」(大渕修一先生)
ふたつの足エクサでバランスアップの基礎を作る!
「そのためにおすすめなのが、このふたつのエクササイズです。ポイントは足の握力を高めることです。足の握力が強いほうが、体のバランスを保つ能力や歩行速度が上昇することがわかってきました」
【足指グーパーエクササイズ】
1 椅子か床に座ります。椅子の場合は片足を軽く床から浮かせて、床の場合は両脚を前に投げ出します。
2 いずれかの姿勢をとったら、足の指をギューッと握り「グー」を作り10秒キープ、続いて足指の間の隙間をできるだけ広くするようにして「パー」を作って10秒キープします。
「グー」のときは足首を伸ばして甲を丸め、「パー」のときは足首を曲げて行うと、指が動きやすくなります。この「グーパー」を交互に行い、全部で10セット行います。
足指の付け根(中足趾節関節)のところからしっかり動かすことが大切です。
【タオルたぐり寄せエクササイズ】
1 椅子に座り、床にタオルを広げて置きます。その上に両足を乗せます。
2 両足の10本の指を広げたり丸めるように動かして、タオルをたぐり寄せます。最初はたぐり寄せられなくても、足指の付け根からしっかり動かすことを意識するといいでしょう。そのうち、たぐり寄せられるようになります。
「こうして足指をしっかりと動かすことで、足アーチを作る筋肉やふくらはぎの前と後ろの筋肉も鍛えられ、全身の血行促進にも役立ちます。毎日、寝る前の習慣にするといいでしょう」
【サルコペニアチェック】
サルコペニアに要注意! 筋肉の衰えは40歳から始まっている
●握力/男性28kg、女性18kg未満
未開栓のペットボトルのキャップが開けられればOK。
●両腕脚筋肉量指標(SMI・BIA※測定)/男性7.0kg/m²、女性5.7kg/m²未満
※BIA法:体に微弱な電気を流し抵抗値で筋肉量を推定する方法。
簡単な目安はふくらはぎの周径が男性34cm、女性33cm未満。さらに簡単な目安として両手の親指と人差し指で輪を作り、ふくらはぎのいちばん太い部分を指で囲んだとき、指で囲める場合は筋肉不足です。
●歩行速度/1秒当たり1m(1分間で60m)未満
横断歩道を青で渡り切れればOK。
●5回椅子立ち上がりテスト
椅子から立って座る動作を5回繰り返します。それを終えるまでに12秒以上かかる場合は身体機能が落ちています。
これのどれかに該当するようなら注意が必要です。今から筋トレをしっかり行うことをおすすめします。
【教えていただいた方】
東京都健康長寿医療センター 研究所・福祉と生活ケア研究チーム研究部長。国立療養所東京病院附属リハビリテーション学院卒業後、米国ジョージア州立大学大学院にて理学修士号、北里大学医学部大学院にて医学博士号を取得。北里大学医療衛生学部助教授などを経て現職。専門は理学療法学、老年学、リハビリテーション医学。著書に『70歳からの筋トレ&ストレッチ』(法研)など多数。
イラスト/green K 取材・文/山村浩子