まぶたが垂れる…その正体は「眼瞼下垂」?
「眼瞼下垂」は、上まぶたが十分に持ち上がらず、目が見えにくい状態を指します。
その原因の多くは、まぶたを持ち上げる筋肉と腱膜が加齢によって弱くなること。
視界が狭くなるだけでなく、おでこや眉の筋肉を無理に使って目を開けてしまうため、額のシワや眉の位置が高くなるなど見た目にも影響が出ます。
それどころか、見えにくいことで頭痛や肩こり、イライラなど、全身の不調につながることも少なくないのです。
40代以降の眼瞼下垂の原因は加齢による場合が多いのですが、外傷、神経麻痺、他の全身疾患でも眼瞼下垂は生じます」
眼科医の宮澤優美子先生によると、眼瞼下垂になりやすいタイプの人がいるそうです。
「ハードコンタクトレンズを長年使用している人、目をこする癖がある人、毎日しっかりアイメイクをしている人、まつエクをし続けている人などは比較的なりやすいですね。
まぶたの開閉にかかわる組織に負担をかける、傷つけるような生活習慣は、眼瞼下垂を誘発、進行させます。
もちろんPCやスマホで目を酷使し続けることも眼瞼下垂につながりやすいんですよ」
早い人は30代、40代でも、50代以降ならなおさら、知らぬ間に眼瞼下垂が進んでいるかもしれません。
セルフチェックで確認!あなたのまぶたは大丈夫?
次のチェックをしてみましょう。
5つ以上当てはまる項目があったら、すでに眼瞼下垂が進行している可能性もあります。
【その症状、眼瞼下垂かも】
□夕方になるとまぶたが上げにくい
□上まぶたが重くてうっとうしい
□上まぶたが黒目にかかっている
□おでこのシワが増えてきた
□眉を上げないと目が開けにくい
□眉の位置が変わってきた
□まぶたのくぼみが気になる
□二重(ふたえ)の線がよれてきた
□二重の幅が広くなってきた
□目が疲れやすい、かすむ
□「眠そう」と言われることが多くなった
□前を見るときいつもあごを上げてしまう
□頭痛、肩こり、首こりが続いている
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さらに、眼瞼下垂かどうか自分で確認する方法も試してみましょう。
【セルフチェック方法】
- 両手の人差し指と中指を横にし、それぞれ眉に当て、眉を押さえて動かないようにします。
- 自然にまぶたを閉じます。
- 眉を動かさず、おでこの力も使わないようにして、ゆっくりと目を開けてみましょう。
- しっかりと開けにくい場合、眼瞼下垂の可能性があります。
「これらのチェックで眼瞼下垂かもしれないと思ったら、一度眼科で診察を受けることをおすすめします。
進んでいそうであれば、眼科以外にも形成外科、皮膚科、美容皮膚科などで診察してもらえますよ。
眼科では、瞳にどれだけ上まぶたがかぶさっているかを正確に見るため、上まぶたの縁と黒目の中央部の距離を測ります。
『MRD(Margin Reflex Distance)』と呼ばれる診断基準です」
【MRDの診断基準】
上まぶたの縁と黒目の中央の距離を計測して判定します。
3mm以上:正常な状態(眼瞼下垂ではない)
1.5~3mm:軽度の眼瞼下垂
-0.5~1.5mm:中等度の眼瞼下垂
-0.5mm以下:重度の眼瞼下垂
と分類します。
眼瞼下垂と皮膚のたるみ、どう違う?
ひと言でまぶたが開けにくいと言っても、まぶたを持ち上げる機能が低下した状態と、皮膚のたるみでまぶたが下がってきたのでは原因が違います。
ふたつを見分けるポイントは、やはり先に紹介したセルフチェック。
皮膚のたるみだけなら仕組みは正常なので、まぶたの縁は比較的動きます。
眼瞼下垂の場合はまぶたの動きがかなり鈍くなります。
【いわゆる眼瞼下垂】
腱膜や筋肉が原因でまぶたを持ち上げる機能が低下した状態。まぶたの縁が黒目まで被さってきます。機能改善のためには、腱膜の修復手術が必要に。
【皮膚のたるみによる眼瞼下垂】
加齢によって皮膚が緩み、上まぶたの余分な皮膚が垂れた状態。横から見ると皮膚が盛り上がって垂れています。筋肉や腱膜に問題がないため、眉下切開など比較的簡単な手術で改善可能。
皮膚のたるみによる下垂は、厳密には眼瞼下垂ではありませんが、眼瞼下垂を多く扱う医療機関ではこれも含めて眼瞼下垂と見なすことが多いようです。
眼瞼下垂は手術で治療可能です
眼瞼下垂になってしまうと、基本的に手術でしか改善できません。
軽度のたるみなら、セルフケアで眼瞼下垂を改善することはできないのでしょうか?
「改善は難しいかもしれませんが、予防はできますよね。
第一に、腱膜を傷める大きな原因、目をこする癖をやめること。むやみにまぶたを触らないこと。
目をできるだけ酷使しないことも大切です。
そしてアイメイクの落とし方にも注意して。アイラインやマスカラを落とす際は、まぶたをこすらず、鏡で確認しながら綿棒で優しくクレンジングします。
症状が進行しているような場合は、医療機関に相談しましょう。
眼科、形成外科、皮膚科、美容皮膚科で診てもらえますが、治療方針や目的が異なるため、事前に確認することが大切です。
眼瞼下垂の手術は、なかなか自分にマッチするところを見つけるのが難しいので、できれば複数の施設でカウンセリングを受け、納得できる治療法を選びましょう」
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二重を整えたいなど、美容目的の場合は美容形成外科や美容皮膚科へ、まぶたの機能改善を重視する場合は形成外科や眼科が適しています。
眼科、形成外科、皮膚科での眼瞼下垂手術は保険適用になりますが、美容目的の場合は自由診療になるのが普通です。
【教えていただいた方】

表参道内科眼科。医学博士。日本眼科学会認定専門医。日本眼科学会、日本眼科手術学会、日本眼科医会、東京都眼科医会、港区医師会会員。 「クリニックは、東邦大学眼科名誉教授が開設した所で、眼科の中でも、専門は白内障、網膜硝子体疾患を得意としています。日本大学病院教授、准教授が非常勤で、高度な大学医療レベルを保っています。内科を併設していて、網膜疾患を発症した方が、かかりつけ医ではコントロール不良の、高血圧や糖尿病を管理しています。私は、医局の人事異動で配属され、全体のサポートとしてかかわってきました」
取材・文/蓮見則子