目の前に黒い影がチラチラ…これって飛蚊症?
「視界に何か浮遊物が見える」、そう感じたことはありませんか?
これは「飛蚊症」と呼ばれる症状です。
目の前に糸くずや黒い点が飛んでいるように見えるのが特徴ですが、実際にそれが存在しているわけではないので、手で払っても払ってもまだ見えています。
「飛蚊症は、目の前にあたかも蚊が飛んでいるように見える様子に由来しています。病気ではなく症状の名前です。
飛蚊症の主な原因は、目の中にある『硝子体(しょうしたい)』の変化。硝子体はゼリー状の透明な物質で、眼球の大部分を占めていますが、40歳頃から加齢とともにしぼんでいき、網膜から剥がれることがあります。これを『硝子体剥離』といいます。
後部硝子体剥離などと診断されるとびっくりしてしまいますが、加齢とともに誰にでも起こる現象です。
剥離の際に、硝子体にある膜や濁りが影となって映り、浮遊物が飛んでいるように感じるんですよ」
そう教えてくれるのは、表参道内科眼科で外来を持つ宮澤優美子先生です。
飛蚊症の特徴はこんな感じ
✓ 目の前に浮遊物が見え、目を動かすと一緒についてくる
✓ 浮遊物は糸くず、髪の毛、黒い点、虫、リング状、水玉、ふさふさしたものなど人によって違う
✓ 明るい場所にいたり、青空や白い壁を見たとき、特に気になる
放っておくと危険! こんな飛蚊症は要注意
飛蚊症は40代、50代ではとても多い症状。多くは加齢による自然の現象なので特に心配はいらないとのこと。ただし、中には重大な病気が隠れていることもあるので注意が必要です。
「硝子体が剥がれるとき、網膜を引っ張ったり、網膜の血管を刺激して眼底出血が起こることもあります。。
また、飛蚊症とともに『光視症』が出ることがあります。光視症とは、暗い場所で視界の端にピカッと光が走るように感じる症状。これは、硝子体が網膜を引っ張ることで刺激を受け、光を感じてしまう現象です。
光視症が出たあとに急に飛蚊症が増えた場合は、網膜に穴が開いた(網膜裂孔)可能性もあり、そのまま放置すると網膜剥離につながることもあります」
特に、突然、次のような飛蚊症が現れた場合は注意が必要です。
危険な飛蚊症の特徴とは?
✓突然、大きな浮遊物が見えるようになった
✓数が急に増えた(特に1日で倍以上に)
✓ピカッと光る(光視症)
✓視界の一部が欠けたように感じる
「50代の病気」といわれる網膜剥離、放置すると失明のリスクも
網膜が眼球の壁から剥がれてしまうのが網膜剥離。硝子体剥離で網膜が引っ張られて穴があくと、そこから眼球の内部に液体が入り込み、網膜が剥がれてしまうことがあるのです。
「網膜剥離は外傷などが原因の10代の若年層、硝子体剥離が原因の50代、ふたつの世代に多いといわれていたんです。
ところが最近は子どもが少なくなったので、10代のピークがなくなってしまい、すっかり『50代の病気』ととらえられるようになってきました。
進行する前に、できるだけ早い治療が必要になります。
網膜剥離が進行すると、視野の一部が欠けて見えたり、視界がカーテンで覆われたように感じることがあります。これは非常に危険なサインで、放置すると失明のリスクもあります」
飛蚊症は病院に行くべき? 検査と治療法をチェック!
初期の飛蚊症や光視症はうっとうしく感じますが、時間の経過とともに慣れていき、放っておいても問題ないと言われることが多いようです。
「でも、網膜剥離などに早く気がつくには、飛蚊症を自覚した時点で眼科を受診するほうが安心です。早期に発見すればレーザー治療で進行を防ぐことができますよ」
【飛蚊症の検査方法】
✓ 眼底検査(瞳孔を広げて網膜の状態を確認)
✓ OCT検査(網膜の断面を詳しく見る)
【治療方法】
✓ 生理的な飛蚊症 → 特に治療不要(時間とともに慣れる)
✓ 網膜に穴(裂孔)がある場合 → レーザー治療
✓ 網膜剥離が進行している場合 → 手術(硝子体手術など)
【教えていただいた方】

表参道内科眼科。医学博士。日本眼科学会認定専門医。日本眼科学会、日本眼科手術学会、日本眼科医会、東京都眼科医会、港区医師会会員。
「クリニックは、東邦大学眼科名誉教授が開設した所で、眼科の中でも、専門は白内障、網膜硝子体疾患を得意としています。日本大学病院教授、准教授が非常勤で、高度な大学医療レベルを保っています。内科を併設していて、網膜疾患を発症した方が、かかりつけ医ではコントロール不良の、高血圧や糖尿病を管理しています。私は、医局の人事異動で配属され、全体のサポートとしてかかわってきました」
取材・文/蓮見則子