【第1カ条】「まだ大丈夫」は通用しない。すい臓の老化を自覚して血糖値に目を向けよ!
「血糖値なんて、若い頃は気にしたこともなかったはず。ほとんどの人がそうでしょう?
でも、40代、50代になったらそれでは通用しなくなるんです。すい臓も老化します。
50歳を過ぎたらすい臓の老化を前提に、血糖値に目を向けることが大事です」
そう語るのは、糖尿病の専門家・やさしい内科医こと山村聡先生。
若い頃は、食後に血糖値が上がっても、すい臓が素早く反応してインスリンを分泌し、血糖値をスムーズに元の値に戻してくれていました。けれど、年齢とともにその分泌スピードは落ちていく。血糖値をコントロールする力が、知らぬ間に弱まっているのです。
この連載では、40代〜50代の読者モニターが、血糖値の変動を2週間継続して追うことができる「FreeStyleリブレ2」を装着して、血糖値の変化を観察(連載「血糖値を測ってみた!」の過去記事一覧はこちら)。
すると…、ほぼ全員に「血糖値スパイク(*)」が発生していることがわかりました!
* :血糖値が急上昇し、その後急降下する状態。グラフにスパイクのようなトンガリができることからこう呼ばれます。特に血糖値ピークが180mg/dLを超え、かつ30分で60mg/dL以上の急上昇の場合。
白米や甘いお菓子以外でも、血糖値が乱高下することがよくあるという驚きの結果になったのです。
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「血糖値スパイク」が、なぜ怖いのか?
血糖値の急上昇や乱高下は肥満につながるだけでなく、血管を傷つけ、動脈硬化などの生活習慣病に直結。心筋梗塞、脳梗塞などの引き金にもなります。
40代、50代以降の女性の場合、イライラ、だるさ、眠りが浅い、感情の浮き沈みなど、更年期の不調と思っていたら、実は血糖値の乱高下による症状だった! ということも。
「糖尿病じゃないから関係ない、と思っている人ほど危ないんです。放置せずにコントロールする意識が必要ですよ」
これまでと同じ食生活・習慣を続けているだけで、血糖値は知らないうちに危険ゾーンに近づいていくもの。今こそ、自分の血糖値に目を向ける習慣を。
【第2カ条】「低GI」でも油断は禁物。「糖質の量」を見える化せよ!
糖質自体は悪ではありません。エネルギー源として必要不可欠な存在です。
でも、気をつけたいのは「どのくらいの量をどんなタイミングでとっているか」という点。
連載では、パンやご飯や麺、おやつなどさまざまな食品を実際に食べ比べたり、食間の長さを変えたりして、血糖値の推移を見てきました。
食材のGI値(グリセミック・インデックス)が低くても、糖質量が多ければ血糖値はぐんと上がってしまうケースにも遭遇。
例えば「玄米は白米より血糖値を上げにくい」と信じていたのに、実験してみたらむしろ玄米のほうがスパイクが起きた…なんてこともありました。
GI値信仰はもはや崩壊した!
「そもそもGI値という考え方自体が、1980年代に登場した古い理論。
現在のように、リアルタイムで血糖値の変化が見られるようになって、初めて“GI値通りにはならないじゃないか”という事実が見えてきたんです。
だからこそ、まずは自分が日常的にどれくらいの糖質をとっているかを意識すること。そして、糖質をとったときに自分の体がどう反応するかを知ることが、血糖値コントロールの第一歩です」
「GI値が低い=安心」ではなく「糖質量が多い=要注意」という、シンプルな視点へ切り替えを。
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【第3カ条】我慢より継続。「無理なく続けられる血糖ケア」を暮らしに組み込もう!
この連載でわかったのは、血糖値は、「何を選んでどう食べるか」「何と組み合わせるか」「どんなタイミングで食べるか」「何をして過ごすか」で大きく変わるということです。
・和菓子のほうが洋菓子より血糖値が上がりやすい
(和菓子と洋菓子、血糖値が上がりにくいのはどっち? スイーツと血糖値の関係を糖尿病内科医に聞いてみた【40代、50代の血糖値ケア】はこちら)
・食前にナッツやプロテインをとると、血糖値が上がりにくくなる
(食前に食べる「〇〇」が血糖値の上昇を防ぐ! 40代、50代に多い不調や生活習慣病の対策におすすめはこちら)
・食事の間隔が空きすぎると、血糖値スパイクが起こりやすい
(【検証】食事の間隔が長いときvs.短いとき、血糖値が上がりづらいのはどっち?【40代、50代が血糖値を測ってみた】はこちら)
・GI値よりも糖質量のほうが血糖値に反映される(白米vs. 玄米など)
(驚きの結果に! 白米と玄米、血糖値が上がりづらいのはどっち?【40代、50代が血糖値を測ってみた】はこちら)。
だからこそ、自分の生活スタイルや体質に合った食べ方を探すことが一番の近道といえそうです。
「ストイックすぎる人がたまにいて、糖質を極限までカットする、食事を楽しまず我慢し続ける。でもそれ、一生続けられますか?」
山村先生いわく、ストレスだって血糖値を上げる要因のひとつ。
我慢のしすぎでイライラするくらいなら、たまにはちょっと血糖値が上がるおやつを楽しんだほうが、結果的にはいいかもしれません。
大切なのは、無理なく、緩やかに、でも確実に。
自分に合った“血糖値との付き合い方”を見つけていきましょう。
【教えていただいた方】

九州大学医学部卒業。2024年12月に「やさしい内科クリニック」を開院。糖尿病啓発・予防のため血糖値に関するSNS発信を行っている。豊富な診療経験をもとに、一人一人のライフスタイルに合わせた血糖値改善、ダイエットプログラムの開発にかかわるなど、病気の予防と医療の架け橋として活動中。 自らの体を実験台にしてさまざまな食材の血糖値を測定するYouTubeチャンネル「やさしい内科医のY's TV」が人気。登録者数は8万人超。著書に『糖尿病専門ドクターが検証! 血糖値を下げる食事法について、実際に試してみた』(KADOKAWA)。
※血糖値の変動には個人差があり、モニターの結果はあくまで一例です。同じ食材をとっても人によって、また食べるタイミングなどによって変化します。
※モニターはFreeStyleリブレ2を2週間装着して間質液中のグルコース値を測定しました。間質液中のグルコース値は血糖値と相関することが知られています。この記事中では、間質液中のグルコース値を「血糖値」としています。
取材・文/蓮見則子
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