基礎代謝は、女性では15歳くらい、男性では18歳くらいをピークに、その後は年齢とともに低下していきます。年齢を重ねるごとに太りやすくなった…と実感している人も少なくないのでは? これも基礎代謝の低下がひとつの原因なのです。
「この基礎代謝と免疫力は、密接につながっています。筋肉量を減らさないこと、そして体を冷やさないこと。この2つを中心に、基礎代謝を落とさないよう心がけることも、免疫力を低下させない秘訣のひとつです」
対策1:「体を温める食材」をプラス!
免疫をつかさどるNK細胞(第1回参照)は、体温が36.5度のときにもっともよく働き、35度台では働きが鈍るといわれています。免疫力アップには、体を冷やさないように工夫することが大切です。
そのためには、東洋医学でいう「陽の食材=体を温める食材」を積極的に摂るのもひとつの手。しょうが、山椒、こしょう、わさび、唐辛子など辛味があるものやお酢などは、血行を良くして新陳代謝を促し、体を温めます。
そのほか、米、かぼちゃ、ニンジン、ニラ、かぶ、れんこん、小豆なども体を温める食材です。
対策2:“ゆる運動”で病気知らずの体に
新型コロナウイルス対策の外出自粛で、知らず知らずのうちに運動不足になっている人も少なくないはず。適度な運動は、免疫力を高めて健康を維持するために欠かせないもの。しかし、第3回でお伝えしたように、激しい運動は逆に免疫力を低下させてしまうので、注意が必要です。
実は、激しい運動をした人は、まったく運動をしない人より風邪にかかりやすいことが最近の研究で判明。もっとも風邪になりにくかったのが、「中等度の運動=適度な運動」をしていた人でした。
頑張ってジョギングするよりも、まわりの景色を楽しみながらのウォーキング、テレビを見ながらのスクワットやストレッチといった程度でOK! 筋肉の維持、ストレス解消、体温や基礎代謝、免疫力のアップには“ゆる運動”がベストと覚えておきましょう。
対策3:「体を冷やさない」を徹底する!
日ごろから“冷え”が気になり、温活を心がけている女性は少なくないでしょう。奥村先生によると、「温活をしたからといって平熱を上げることは難しいですが、毎日湯舟につかるなど、時々、温熱の刺激を与えることは免疫力の活性には有効です」とのこと。
太い血管が通っている、首、手首、足首の3つの“首”を冷やさない。毎日湯船につかる。夏場の冷房は、外気と室内の温度差を5度以内に抑える。長時間座っている場合は、定期的にストレッチなどで血行を促すなど、“体を冷やさない”温活を徹底しましょう。
このほかにも、免疫力アップに欠かせない対策を奥村先生が教えてくれました!
それは…
対策4:「タンパク質+亜鉛+鉄分」を欠かさない
筋肉をはじめ、免疫細胞の生成に欠かせないタンパク質(アミノ酸)、それを支える亜鉛や鉄分などのミネラルは、毎日欠かさず摂取したいもの。特に、必須アミノ酸を効率よく摂取するためには動物性タンパク質がおすすめです。
「また、亜鉛はタンパク質の合成に欠かせず、不足するとリンパ球のT細胞の働きが落ちてしまいます。鉄分は全身に酸素を運ぶ役割を果たし、不足すると細胞が酸素不足になり体力の低下を招きますので、亜鉛と鉄分もお忘れなく」(奥村先生)
これらを摂取するためには、牛肉、豚肉、鶏肉に加え、それぞれのレバーを食べるようにするのがポイント。亜鉛が特に多い食品は、牡蠣、ウナギ、卵、納豆、ごまなど。鉄分の多い食品は、アサリ、マイワシ、大豆、切り干し大根、ホウレンソウなどです。
対策5:ひと口30回噛む!
昔から「よく噛んで食べなさい」と言われたものですが、噛むことの利点は実にたくさんあります。そのひとつが、唾液の分泌が増加すること。
「食べ物や外気が入ってくる口腔内は、細菌やウイルスが侵入してくる入口。それを防止する第一段階の免疫で活躍してくれるのが唾液です。唾液には、リゾチームなどの抗菌・殺菌作用のある酵素が含まれています。また、唾液に含まれるベルオキシターゼという酵素は活性酸素を除去する抗酸化力があり、がんの発生を抑制するともいわれています。唾液量が増加することで、歯周病や虫歯、そのほかの疾患の予防にもなります」
そのほか、食べ物を食べて噛むときには交感神経が刺激され、エネルギー消費が促されて熱産生が高まります。体温が上昇して免疫細胞も活性化。脳も活性化するので、認知症の予防にも!
残念ながら、唾液の分泌も年齢とともに減っていきます。毎日の食事でよく噛むことで、唾液をしっかり出して、免疫や脳を元気に保つ生活習慣を身につけましょう。
第9回からは、最新の分子栄養学に基づいて、注目の「栄養素」を摂取して免疫力アップを図るおすすめの方法を紹介します。
監修/奥村 康さん(おくむらこう・医学博士)
順天堂大学医学部免疫学特任教授。アトピー疾患研究センター長。スタンフォード大学リサーチフェロー、東京大学医学部講師、順天堂大学医学部教授、同大学医学部長などを経て、現職。免疫学の国際的権威である。著書多数。
イラスト/しおたまこ 取材・文/山村浩子