骨から分泌されるオステオカルシンというタンパク質は、骨を作るだけではなく脳も活性化してくれると、医師で群馬大学名誉教授の山口晴保先生。ウォーキングなどで体を動かし、人生を楽しく笑顔で過ごすことも良薬になります。
教えてくれた人
山口晴保さん
Haruyasu Yamaguchi
医師、群馬大学名誉教授、認知症介護研究・研修東京センター長、日本認知症学会名誉会員。脳βアミロイド沈着機序をテーマに30年にわたり病理研究を続け、その後、臨床研究に転向。より実践的な認知症医療・ケアに取り組んでいる。著書多数
骨は適度な衝撃を受けると、骨をつくる骨芽細胞の働きが活発になり、骨が丈夫になります。「このときに骨から分泌されるオステオカルシンというタンパク質には、高血糖を抑える働きもあります。高血糖が続くと認知機能が低下するので、骨への軽い衝撃運動は認知機能の低下の予防にもなります」。
それにはウォーキングや、両足のかかとを持ち上げてストンと床に落とす「かかと落とし運動」がおすすめです。「折れない骨づくり」は実は脳にも重要なのです。
「認知症を発症すると、もの忘れなど不便なことも多々あります。しかし、生活を工夫し、まわりからの援助を受ければ、普通に暮らし、人生を楽しむこともできます。たとえ進行して会話が思うようにいかなくなっても、笑顔にはなれます」。
イギリスの調査で、人生を楽しんでいる人は死亡率が低いという報告も。「長生きをすれば、それだけ認知症になる確率は高まりますが、日々を楽しく過ごしていれば、発症を少しでも先送りにできるかもしれませんね」
人生を楽しむ人は長生きする
イギリスの50歳以上の男女1万1391人を対象に、人生の楽しみ度で4分割し、その死亡率を7年間追跡した結果、最上位(楽しんでいるグループ)の死亡率が顕著に低いことがわかりました
写真/高橋ヨーコ 取材・原文/山村浩子