カメラのレンズに当たる水晶体が白く濁ることで、視野がぼやける、かすむといった症状が起こる「白内障」について、眼科医の板谷正紀先生にお話を伺いました。
お話を伺ったのは
板谷正紀さん
Masanori Hangai
眼科医、医学博士。医療法人クラルス理事長、板谷アイクリニック銀座院長。硝子体手術と緑内障手術のエキスパート。
白内障
霧がかかったように見える… 多くは加齢現象
カメラのレンズに当たる水晶体の約65%が水分で、残りはタンパク質と微量の塩分でできています。健康な水晶体は透明ですが、加齢などでタンパク質が変性すると、白く濁ります。
これが白内障で、誰にでも起こり得る加齢現象です。症状は、視野がかすむ、光がまぶしいなど。
「薬ではよくなりませんが、手術で完全に治ります。手術で濁った水晶体を取り除き、代わりに人工の眼内レンズを挿入します。
最近は技術の進歩で、乱視がある場合はトーリックレンズ、ピントが遠くにも近くにも合う多焦点レンズなど、多種類の中から個々のライフスタイルに応じて眼内レンズが選べます。それにより、乱視や老眼も改善されるので、私は“ハッピーな手術”と呼んでいます」
水晶体の濁りが原因
眼球に入ってきた色や形の光情報は、水晶体で屈折を調整してピントを合わせています。この水晶体が濁ると、光が拡散して、視野に霧がかかったようになります。
水晶体(すいしょうたい)
毛様体筋の伸縮で厚みを変えて、画像がきれいに見えるようにピントを調整します。
水晶体のほか、代表的な目の病気に関係する部位の説明は、あなたの症状はどれ? 40歳を過ぎたら注意すべき目の病気は?/ 目の病気①をご参照ください。
白内障の手術方法
手術には、水晶体をそのまま取り出す方法と、超音波で砕いて吸い出す方法があります。現在は傷口も小さく、短時間ですむ超音波式が主流になります。
水晶体嚢外摘出術(ECCE)
嚢(水晶体の袋)の部分だけを残して、濁った水晶体の核を丸ごと摘出し、代わりに眼内レンズを挿入します。
超音波乳化吸引術(PEA+IOL)
超音波で核を砕いて、水晶体を吸い出します。切開部が2~3㎜とごくわずかで、短時間ですむメリットが。
イラスト/コタケマイ(asterisk-agency)<解剖図> 構成・原文/山村浩子