足の甲と足裏を描いているふたつのアーチ…。この「足アーチ」こそが、足の健康を守る要! その大切な働きと、アーチが崩れる理由とは?
お話を伺ったのは
桑原 靖さん Yasushi Kuwahara
「足のクリニック 表参道」院長。2013年に日本初の足専門クリニックを開設。海外の足病医学に基づいて、形成外科、整形外科、皮膚科、リウマチ科など各分野の専門医によるチーム医療で足の総合診療を実践。
足アーチが崩れると衝撃が吸収できない!
「本来、足は、正しい歩き方で適度に内側に体重がかかると、骨と骨に隙間が生じて衝撃を吸収することができます。また、外側にかかると、骨と骨が密になり、ひとつの硬い塊になろうとします」と足専門医の桑原靖先生。
「扁平足の人は、内側に体重が乗りすぎてしまい、足全体が大きく歪んで、足本来の機能を果たすことができません。また甲高の人も足で衝撃を吸収することができず、膝や股関節に負荷がかかります。扁平足も甲高も、歪み方は人それぞれで同じではありませんが、いちばん大きく歪んでいる場所に、痛みや変形といった症状が現れます。
しかし、根本的な原因は、足を構成する重要な『足アーチ』が崩れていること。それは二次的、三次的なトラブルを引き起こし、年齢とともに進行(フットエイジング)していくため、まずはこの足アーチを維持することが大切なのです」
ふたつの「足アーチ」三角アーチと半円アーチが大切
「足はかかと、甲の骨、それぞれの指の付け根を結んだ5つの『三角アーチ(トラス構造)』と、その頂点付近が弓なりに連なる『半円アーチ』で構成されています。
かかとの骨を内向きにしたり、外向きにしたりすることで、足全体の骨組みを緩めて衝撃を吸収したり、強く締め上げて硬くし、地面を踏み返すことができます。
歩くときは、無意識のうちにこのふたつの動作を繰り返しています。また、足の『中心軸』が中指ではなく人差し指であることから、足はもともと内側に倒れやすい構造ともいえます」(桑原靖先生)
◆三角アーチ(トラス構造)
三角を基本形として5本のアーチが組み合わさることで、強固な構造体を作っています。
◆中心軸
中心が少しズレることで足全体に不安定さを生み出し、その結果、さまざまな路面条件に適応することができます。
◆半円アーチ
アーチ構造は力学的に上からの力に強く、これにより、体重が乗っても足の全体構造が崩れずに維持できます。
密接に関係している歩行と「足アーチ」
歩行する際は、まずかかとで地面をとらえ、足全体を着地。次に足首の関節を前に倒し、最後に指の根元の関節を軸にして蹴り出します。
「しかし、アーチが崩れた扁平足だと下図2で衝撃吸収ができず、さらに3や4でもねじれた力が足に加わります。
アキレス腱が硬い場合は3の動きができず、4で足先に過度な負担が。いずれの場合も足トラブルの原因になります」
①まず、かかとから着地。このとき、かかとを前に転がすようにして着地の衝撃を逃がします。
②足全体が地面についたとき、アーチが少したわむことで、さらに衝撃を吸収します。
③足首を軸に足関節が前に倒れ、アキレス腱が伸びて足底腱膜が引っ張られ、体が前に進みます。
④最後に足指の付け根を軸にして回転させ、足底腱膜の張力で、踏み返して蹴り出します。
イラスト/内藤しなこ 取材・原文/山村浩子