多くの人が悩んでいる足の病気にも、「足アーチ」の崩れが大きく関係しています。足トラブルの代表例ともいわれる「外反母趾」、その予防と治療法を知っておきましょう。
お話を伺ったのは
桑原 靖さん
Yasushi Kuwahara
「足のクリニック 表参道」院長。2013年に日本初の足専門クリニックを開設。海外の足病医学に基づいて、形成外科、整形外科、皮膚科、リウマチ科など各分野の専門医によるチーム医療で足の総合診療を実践。
外反母趾
アーチの崩れから40歳以降に悪化することも
「親指が外側に曲がり、付け根が出っ張る外反母趾の、最大の要因は遺伝です。病気が遺伝するのではなく、足アーチが崩れた扁平足や、体重をかけたとき親指の付け根に負担がかかりやすい骨格を受け継ぐようです」(桑原靖先生)。
ほかにも、靱帯の強さや筋肉のつき方、関節の柔軟性、生活習慣も関係しており、40歳を過ぎた頃から、筋力の低下などで足アーチが崩れると足の変形が進行することがあります。初期は親指の付け根が赤く腫れて痛み、さらに進むと、親指の付け根の関節が脱臼しますが、それによりむしろ痛みを感じなくなります。
治療の中心は、軽度の場合は医療用インソールでのアーチ補正と歩行機能訓練。変形が進行した場合は3泊4日で矯正手術を行います。
外反母趾が進行する過程
足アーチが崩れて土踏まずが落ちると、足全体が内側にねじれる力が働きます。それに連動して、中足骨が親指を残したまませり出してくるのが外反母趾の始まりです。
加齢や体重増加、筋肉の衰えで、足アーチが崩れて土踏まずが落ちます。
歩行時の踏み返しで親指付け根に負担がかかり、足が内側にねじれます。
ねじれる力が親指の中足骨を押し出して変形。親指が強く痛みます。
無理に動かすことで親指が脱臼。人差し指にも影響を与え、歩行困難に。
進行した場合は手術で矯正を!
足が変形して、インソールでは痛みが取れなかったり、歩行が困難になった場合は、手術が検討されます。第1中足骨を切り、ねじれなどを戻してつなぎ合わせるのが基本です。
親指の変形が進むと足全体のバランスが崩れ、歩行が難しくなることも。
歪んだ骨を切って2分割にし、正しい場所へと組み替えます。
組み替えた骨を、体に吸収されるネジを使ってつなぎとめます。
手術時間は片足40~50分ほど。両足行なっても翌日から歩行が可能。
外反母趾をサポートするソックスが登場!
年間約6000人の患者を診察する桑原靖先生と靴下専業のタビオが共同開発。特殊な編み方で親指を本来の形にサポート。痛みの軽減や、外反母趾の進行をくい止めるのに役立ちます。
親指を外側に引っ張り、土踏まずをしっかりサポートして、足アーチの崩れを防ぎます。
外反母趾サポート五本指ソックス¥2,200/タビオ
イラスト/内藤しなこ 取材・原文/山村浩子