歯科医院に行くほどではないけれど、あごの歪みが気になる。そんなときは、自宅でのケアをできることから始めてみて。
教えていただいたのは
尾形 愛さん
Ai Ogata
歯科医。ヘルシーオーラルプロジェクト代表理事。大阪で歯科医師として治療を行うかたわら、正しい口腔ケアを子どもから高齢者まで啓蒙する活動に従事。口内から心身を健康にするのが当たり前の未来へ向けて、講演や執筆などを積極的に行っている
筋肉の左右バランスと咀嚼力が健康への鍵!
あごの歪みによる体調不良は普段から防ぎたいもの。咀嚼力の低下によるトラブルも要注意です。
「歪んだままのあごを動かしていると、左右の咬筋バランスに差が出てしまいます。日頃よく嚙む側は筋肉が厚くなり、使われていない側の筋肉は薄くなるのです。
このような状態では咀嚼力が低下し、さらに舌を動かす力や飲み込む力が衰えてしまうことも。
こうしたことが脳の働きをにぶらせたり、唾液の分泌が減ることで消化不良や腸内環境の悪化、免疫の低下につながり、原因不明の不調を起こしかねません。あごを動かす咬筋と側頭筋を中心にマッサージを行い、左右バランスを整えましょう」
「咀嚼筋」をほぐすマッサージ
あごを動かし咀嚼するときに働くのはおもに咬筋と側頭筋。歪んだあごではこれらの筋肉を左右均等に使えません。マッサージでこりをほぐして左右バランスを良好に!
STEP-1
ウォーミングアップ
まず、口内から舌で頰を押すように回して唾液の分泌を促進。マッサージはリンパの流れをよくするために首元からスタートして、その後に咬筋などあごを動かすパーツへ移ります。
舌全体を使って口内から頰を押しながら回します。ゆっくりと、左右10回ずつ。この運動は思い出したときにいつでも行うのがおすすめ
人差し指と中指で鎖骨を挟み、骨の上下のみぞを4~5ポイントずらしながら押します。首の付け根も指を当てて10~20回押します
STEP-2
咬筋をほぐす
嚙み締めるときに使う咬筋の上下の端と、そのまわりの筋肉をほぐします。マッサージは肌をこすらずに、指をしっかり当てたままほぐすようにして。
左右の人差し指の腹であご先から耳の下まで、位置をずらしながら押していきます。咬筋の下端があるエラのあたりは念入りに
小鼻から頰骨に沿って、顎関節まで押して、咬筋上部をほぐします。人差し指を頰骨の下に押し込むようなイメージで
STEP-3
耳の前後をほぐす
耳の後ろには頭蓋骨の下に備わる乳様突起があり、あごや首を動かす筋肉が連結しています。ここをほぐしてあごの動きをスムーズに。
親指の腹で、耳の下から耳の上まで、耳の前と後ろを合計7〜8カ所押していきます。心地よい力加減で、10回を目安に行います
STEP-4
側頭筋をほぐす
側頭筋は口を閉じるときに使われ、咀嚼に大きな役割を果たします。こりがたまりやすい部分なので、マッサージはしっかりと。目元のたるみや眼精疲労にも効果があります。
髪の生え際に4本の指の腹を当て、圧をかけながら小刻みに動かします。このとき、頭皮を動かすようにするのがコツ。少しずつ位置をずらして、こめかみから耳の後ろ側まで行います。心地よい力加減で、10回を目安に
STEP-5
口内から咬筋をほぐす
指を口の中に入れて頰の厚さや硬さを確かめてみて。どちらか片方が厚く硬かったら、そちら側で片嚙みしている可能性が大です。ほぐして緩め、左右のバランスをとりましょう。
左右の頰の厚みと硬さを確認します
口内に親指を入れ、人差し指を頰に当てて、頰の筋肉を2本の指で挟みながらもみほぐします。硬い方を入念に。手を清潔にしてから行ってください
マッサージを1回行っただけで顔の歪みと体の不調が改善!
尾形愛先生がマッサージを施したモデルの症例です。右にずれていたあごが改善して、顔全体が対称になっているのがわかります。1回でも効果が表れるから、セルフでも毎日続ければあごの歪み改善に期待が持てます!
実際はあごのポジションだけではなく、口角の高さと目の大きさにも変化が。悩みだった頭痛や鼻づまりも軽減したそう
撮影/フルフォード海 構成・原文/中込久理