肩に激痛が走り夜も眠れないといった症状は何が原因で起こるのでしょうか? 整形外科医で肩肘専門医の菅谷啓之先生がお答えします。
Q 急な痛みは何が原因?
A 石灰沈着性腱板炎の可能性が大きいです。
「肩が痛む病気には、四十肩・五十肩や腱板断裂以外にもうひとつ、40代~50代の女性に多い『石灰沈着性腱板炎』があります。肩腱板内に石灰が沈着し、突然、前触れもなく激痛が走り、腕を動かせなくなります。
原因は不明で、レントゲンやエコー、CTなどの画像検査で診断し、治療は腱板に針を刺して石灰(初期はミルク状)を吸引します。改善しない場合は、手術で石灰を摘出することもあります」(菅谷啓之先生)
●石灰沈着性腱板炎
肩の腱板内に石灰が沈着して、急性の炎症が起こる病気。特に誘因がなく、突然強烈な痛みが出ます。石灰を吸引して、運動療法などで治療します
Q 整形外科を受診したほうがいいの?
A 確定診断を受けることが重要です。
「四十肩・五十肩だと自己判断で決めつけ、放っておいたり、なかには整体などで不適切な施術を受けて、悪化させてしまう人もいます。診断ができるのは医師だけです。肩に違和感や痛みがあったら、すぐに肩専門の整形外科で正しく診断してもらい、軽症のうちに治療を始めましょう」
Q 医師に伝えるべきことは?
A 痛む状況の細かい説明を!
「肩のどの部分が、どんなときに(どう動いたとき、または寝ているときなど)、どのように痛むのか(激痛なのか、ズキズキうずくのかなど)、痛む状況を細かく説明しましょう。メモしていくと安心です」
Q 診断は何をするの?
A 問診、可動域チェック、画像診断など。
「問診のほかに、肩がどのくらい動くのか可動域のチェック、レントゲン、CT、MRI、超音波検査などの画像検査で、ほかの病気の可能性を排除したうえで、四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)と確定します」
Q 湿布薬を出されただけ。見放されたの?
A セカンドオピニオンを求めたほうがいいですね。
「整形外科医でも肩の治療に詳しくない医師もいます。実際のところ、湿布薬はあまり効きません。見放したのではなく、医師自身がよくわかっていないのかも。肩の専門医を探して、再受診することをおすすめします」
答えていただいたのは
菅谷啓之さん
Hiroyuki Sugaya
東京スポーツ&整形外科クリニック院長。整形外科医、肩肘専門医。米国ハワイ大学医学部客員教授、東京女子医科大学整形外科客員教授
イラスト/内藤しなこ 構成・原文/山村浩子