そもそも風邪をひいて熱が出るのはなぜ? どう対処するのが正しいの? 意外に知らない「体温」の知識を、国際医療福祉大学医学部心療内科学主任教授の岡孝和先生に伺いました。
発熱をむやみに解熱してはいけない
風邪などに感染すると発熱します。それはどうして?
「ウイルスが体内に侵入すると、それを撃退するために免疫細胞が動き出し、体温を上げるように指示します。その理由は体温の高いほうが免疫細胞の働きがよくなるからと考えられています。
悪寒がして、寒くて布団にくるまったりしますが、これは熱を上げるための反応と行動。やがて熱が上がりきると、今度は汗が出てきます。
昔は発熱したらすぐに解熱剤で下げるべきと考えられていましたが、現在は生体防御機能のひとつと理解し、あまり早い段階でむやみに服用せず、体力の消耗や全体状態を総合的に考えて服用するのがベストです」(岡 孝和先生)
汗や震えは体温調節のための大切な現象
「体温は代謝と筋肉運動などで発生する熱=熱産生と、体外に逃げていく熱=熱放散のバランスで調節されています。
暑いときは『汗をかく』ことで、その水分が蒸発するときの気化熱を利用して熱放散を、寒いときはまず褐色脂肪細胞が熱を生み出し、それでも体温が保てないときはブルブル『体を震わせて』熱を産生しています。
ほかにも、皮膚表面の血管を拡張したり収縮させて血流をコントロールし、体温の調節をしています。これらは無意識に起こる体温調節です」(岡 孝和先生)
お話を伺ったのは
岡 孝和さん
Takakazu Oka
国際医療福祉大学医学部心療内科学主任教授。産業医科大学医学部講師、九州大学大学院医学研究院心身医学分野准教授を経て、2017年より現職。’20年より国際医療福祉大学成田病院心療内科部長を兼任
イラスト/いいあい 構成・原文/山村浩子