ネットや病院などで、「治験(ちけん)」という言葉を見たり聞いたりすることが増えています。ここでは、その治験について詳しく解説。内容をきちんと理解すれば、あなたも「治験に参加してみようかな」と思うかも!
治験なくして薬は生まれない! 治験は真摯なボランティア
私たちが日常的に使用している薬は、製薬会社の長く深い研究によって作られています。薬を安心して飲んだり注射を受けたりするためには、薬が生まれるまでに実際に使って安全性・有効性を確認するのが必須。それが治験です。
日本は、先進国の中では、治験の実施体制や新薬の開発が遅れているといわれてきました。欧米で使用されている薬でも、日本では承認されない薬があったりするのはそのため。文化や制度の違いもあれば、国民性の違い、つまり日本人は保守的なところがあるからともいわれます。
でも、一番の原因は治験に対する理解不足かもしれません。いつかは自分も使うことになるかもしれない薬の将来を見据えて、治験の意義を考えてみませんか?
「治験」の意味とは?
治験は「治療の試験」という意味。製薬会社が新しい医薬品を開発するために、人での治療効果や安全性を調べる試験のことを指します。
新薬には厚生労働省の承認が必須で、承認を得るために必要なのが治験。人における試験を一般に「臨床試験」といいますが、「薬の候補」を用いて国の承認を得るための成績を集める臨床試験を、特に治験と呼びます。
「治験」は何をすること?
治験を主催するのは、おもに医薬品を開発している製薬会社。治験を実行するのは、実施の基準に関する省令に則った医療機関です。
治験の段階によって、対象者は健康な人と患者の場合があります。治験に参加するのは適任と認められ、同意をした人のみで、その治験薬によって、試験の方法や期間なども大きく異なります。
今なぜ流行ってるの?
新型コロナウイルスの感染拡大により、ワクチンや治療薬の治験の告知が増え、認知度が上がったことが一番の理由。
Web広告やメルマガ、ラジオなどで募集していることが多く、とても流行っているように見えますが、コロナ関連以外の治験が増えているかというと実際はそうでもないようです。
薬(医薬品)ができるまで
- 1 薬の候補を発見(基礎研究) 2〜3年
- 2 動物で試験(非臨床試験) 3〜5年
●ここが治験
- 3 人で試験(臨床試験) 3〜7年
- 第Ⅰ相試験
健康な人で安全性の確認 - 第Ⅱ相試験
少数の患者さんで効果・安全性の確認 - 第Ⅲ相試験
多数の患者さんで効果・安全性の確認
- 4 国の承認を得る(厚生労働省審査による審査〜承認) 1〜2年
- 5 新しい薬の誕生 承認後に販売
- 6 発売後にも調査(第Ⅳ相試験)
販売後も有効性や安全性を調査
治験に参加するメリット&デメリット
治験に参加するといいこともあれば、人によっては心配なことも多いはず。健康な人と病気などですでに治療を受けている人でも違うので、一概には言えませんが、知っておきましょう。
●メリット
- ・新しい治療を受けられる、治療の選択肢が広がる
- ・新薬の誕生に協力することで、社会貢献になる
- ・専⾨医による診察や詳しい検査が受けられる
- ・治験にかかわる通院や診察、検査費⽤の補助が受けられる
●デメリット
- ・ルール厳守のため、⽇常⽣活が制限されることもある
- ・これまで使っていた薬に制限がかかる場合もある
- ・副作⽤が出る可能性もある
- ・プラセボ(偽薬)を使⽤される場合もある
今回取材協力していただいた生活向上WEBのホームページはコチラ
イラスト/カツヤマケイコ 取材協力/生活向上WEB 構成・原文/蓮見則子