下半身力が低下すると、ぽっこりお腹、たるんだお尻、太い脚…と容姿が悪くなるだけでなく、やがては腰や膝、股関節の痛みへと発展します。
その予防のためにも、避けたいことの一つがニワトリ姿勢です!
急激な体重増加
「膝への負担は、歩行時には体重の約5倍、階段を下りるときには約8倍の力がかかります。特に、お腹に脂肪が多い人は、足先から心臓に戻る血液が、ここで遮断され、戻れなくなった“出戻り血液”と、さらに心臓からやってくる血液が下半身にたまります。このような循環が滞る状態が続くと、脚が太くなるばかりでなく、ふくらはぎに静脈瘤ができたり、血栓ができることで脳梗塞や心筋梗塞になる危険性もあります」(巽一郎先生)
ニワトリ姿勢
「将来的に人が歩けなくなるのは、体を正しく使えていないことが大きな要因です。長年にわたり、間違った姿勢や体の使い方をしていると骨格が歪み、そこからさまざまな不調が現れます。まず注意したいのは“頭が前に出る姿勢”。これを私は“ニワトリ姿勢”と呼んでいるのですが、腰や膝、股関節の痛みはここが原点。早急の改善が課題になります」
正しい姿勢
正しい姿勢は、頸椎は緩やかな前弯、胸椎は後弯、腰椎は前弯をしており、横から見ると緩やかなS字カーブに。重力に対して最も負荷が少ない状態です
よい姿勢を続けていると、膝の変形が起こりにくくなります。正常な脚の場合、膝の角度が175°程度で、膝への負担が最小限に
ニワトリ姿勢
前かがみの姿勢を長時間続けていると、やがて首が前に出て(ストレートネック)、猫背に。そのバランスをとろうとして腰や膝に負担がかかります
前に出た頭を僧帽筋が支え、それに伴い背中の筋肉も緊張します。その結果、腰が丸まり、膝が曲がったおばあさん体型に。こうならないようにしたいもの
頭が前に出た姿勢を続けていると、バランスをとるために、骨盤が後傾して太ももが外側を向き、膝が曲がり180°以上に。こうなると膝への負担が大きくなります
O脚の人の膝への負担
膝の内側に重点的に力がかかるため、やがて内側の軟骨がすり減って、痛みの原因に。これが日本人に最も多い変形性膝関節症です
体重の管理と姿勢は下半身力をつける第一歩
1万人超の足腰を診察し、膝関節の手術の名医である巽一郎先生。一方ですぐに手術はせずに、自分の力で痛みを軽減する取り組みを行っています。
「例えば、膝が痛いのは、必ず原因があっての結果です。その原因を正せば結果は変わります。手術しかないと言われて受診する患者さんでも、膝痛の原因である、体重の減量と歩き方の矯正、大腿四頭筋などの筋トレを3カ月行ってもらうと、約半数の人は手術が不要になります」
40代だと、まだ重症化はしていないとはいえ、腰や膝、股関節に違和感を覚える人が増えてきます。そんな人の痛みの軽減や予防、美容の観点からも、巽先生のメソッドは絶大な効果が!
「40代から気をつけたいのは、まずは体重が増えないようにすることです。歩いているときは、膝には体重の約5倍の力がかかります。特にお腹ぽっこりさんは下半身の血流が悪くなることで、さまざまな健康への悪影響も。そして骨格の歪みの原点となる、姿勢を改善することが重要です」
下半身力を高めて、100年歩ける脚をつくることは、見た目の若々しさを保つだけでなく、健康増進にも役立ちます。将来の寝たきりを予防するために、今すぐに実践を。
教えていただいたのは
専門は膝。一宮西病院整形外科部長・人工関節センター長。体への負担を最小限にする膝手術で日本屈指の技術を持つ。一方「すぐには切らない」医師として有名で、独自の保存療法(エクササイズなど)を提案し、全国からの患者が絶えない。著書に『100年足腰』(サンマーク出版)など
イラスト/かくたりかこ 構成・原文/山村浩子