40代から下半身を強化するために必要なことは4つ。整形外科医で膝の第一人者である巽一郎先生に教えていただきます。
下半身力アップのポイント①
本来の骨格を取り戻す
「頭が前に10°傾くと、それを支える筋肉の負担は約2倍、30°傾くと3~4倍といわれています。この時点では肩こりがおもな症状かもしれません。しかし、それが続くと、猫背がひどくなり、やがてそのバランスをとるために、骨盤、股関節、膝、足先にまで、その影響が表れます。下半身力アップのポイントのひとつめは、正しい本来の骨格を取り戻すことです」
下半身力アップのポイント②
軟骨の健康を守る
「人の体には200ほどの関節があり、その中でも膝には大きな負荷がかかっています。それでも、歩く、立つ、座るといった動作がスムーズに行えるのは、“軟骨”があるからです。膝が痛くなる理由のひとつが、この軟骨がすり減ること。軟骨は再生しないといわれることがありますが、それは間違い。完全になくなると生えてこないだけで、多少すり減っても、適切にケアすれば元に戻ります。軟骨の健康を守ることは、100年歩ける脚をつくるのにとても大切です」
正常な膝関節の状態
正常な膝関節の状態です。ブルーの部分が軟骨、ピンクの部分が半月板です。いずれも衝撃を吸収する役割を果たしています
O脚の膝関節
最初の一歩が痛いといった、初期の状態。衝撃をやわらげる軟骨がすり減りはじめていますが、これならまだ間に合います
下半身力アップのポイント③
主要な筋肉を鍛える
下半身力が低下する大きな要因は運動不足。問題なのは、痛みがあると動くのがおっくうになり、さらに体を動かさないという悪循環に陥ること。「使わない筋肉は“現状維持”ではなく、“衰える”一方です。それを避けるためにも軽い筋トレは必要です。特に鍛えたいのは、内転筋、腹筋、大腿四頭筋、骨盤底筋群。筋肉は脚や腰を守る自前のコルセットと心得てください」
下半身力に重要な4つの筋肉
下半身力に特に重要なのは、正しい姿勢と歩行に関係する4つの筋肉です
下半身力アップのポイント④
血流を促す
体重の減量や姿勢の改善、軽い運動…これにもうひとつ必要なのが“体の柔軟性”を高め、血流を促すことです。「特にお腹ぽっこりさんの下半身は、血液やリンパの流れが滞りがちです。これを解消するために、減量のほかに、特に股関節まわりのストレッチや背骨の可動域を高めることも大切です。体全体のバランスを整え、しなやかな体を維持しましょう」
教えていただいたのは
専門は膝。一宮西病院整形外科部長・人工関節センター長。体への負担を最小限にする膝手術で日本屈指の技術を持つ。一方「すぐには切らない」医師として有名で、独自の保存療法(エクササイズなど)を提案し、全国からの患者が絶えない。著書に『100年足腰』(サンマーク出版)など
イラスト/かくたりかこ 構成・原文/山村浩子