今回は、毎日の食事で気をつけたいことを考えていきます。
「何かを食べてはいけない…ということはありませんが、血管ケアのための食事は、ちょっとした選び方が大切になります」(池谷敏郎先生)
血管コンシャスな食材の選び方①
栄養素がアップする…米飯は温より冷、白より茶色
「血管のことを考えたら、やはり糖質は控えめにするのが正解です! 血管の老化を進める“5大悪”のひとつに、高血糖があります。糖質の多い食事をすると、血糖値の急上昇と急降下が起こります。
血糖値が上がると、すい臓からインスリンが分泌されて、血糖値を下げてくれるのですが、食事のたびに大量のインスリンを出していると、やがて、すい臓が疲れてインスリンの分泌が悪くなったり、効きが悪くなったりします。その結果、血糖値が高くなり、糖尿病を引き起こします」
糖質は米、パン、麺類などの炭水化物、いも類、甘い果物、スイーツなどに多く含まれます。
「これらをまったく食べてはいけないとは言いません。量を控えてほしいのです、そこで私は“なんちゃって糖質制限(=緩やかな糖質制限)”をすすめています」
例えば、ごはんの量を半分にする。朝、昼、晩のうち1回は炭水化物を抜き、その分、野菜やタンパク質類を多くしてお腹いっぱいにします。
「減らすのが難しい場合は、“選ぶ”という方法もあります。それはGI値の低い炭水化物を選ぶことです。GIとはGlycemic Indexの略で、食後血糖値の上昇度を示す指標のこと。GI値が低い食品は血糖値の上昇を穏やかにします。例えば、精製度の低い穀類…白米よりも玄米、胚芽米、もち麦を。小麦粉なら白いパンよりもライ麦パン、全粒粉パンなどです。白より茶色のものを選びます。
もうひとつ、糖質の中のデンプンは熱を加えた後、冷やされると、その一部がレジスタントスターチという“消化できないデンプン”に変わります。これが小腸で消化されずに大腸まで届き、食物繊維と同じような働きをして、糖の吸収を緩やかにしてくれます。
「よって、ご飯は炊き立てよりも、冷えたおにぎりや弁当、温かい肉じゃがよりも、冷えたポテトサラダがベター。温かいより冷たいほうが、血糖値が上がりにくく、血管には優しいことになります」
血管コンシャスな食材の選び方②
肉は多種を食べるのが正解! 加工肉はほどほどに
前回、魚を積極的にとることが血管力アップにつながるというお話をしました。では、肉はどうでしょうか?
「肉も大事なタンパク質源で、血管の材料になるので、丈夫な血管をつくるのに必要です。特にシニアで肉を控えすぎると、筋肉量が減ったり、骨質が悪くなり骨折の原因にも。逆に90歳越えの長寿者には、肉が大好物…という人が多いのも事実です。
肉を食べるときの注意点は、味つけはシンプルに!がポイント。焼肉やステーキ、焼き鳥などはタレよりも塩で。ハンバーグなどはデミグラスソースよりも大根おろしや玉ねぎをのせたポン酢が◎。糖質や塩分を減らした味つけで食べることです。
もの足りなさは、ハーブや柚子胡椒、レモンやすだちといった柑橘類の風味を生かすといいでしょう」
また、肉の種類は、牛肉、鶏肉、豚肉、羊肉、どれでもOK。
「牛肉は鉄や亜鉛が、豚肉は皮膚や粘膜の健康を守るビタミンB1が豊富。鶏のささ身は脂肪分が少なく低カロリーで、胸肉は疲労回復に効くイミダペプチドが豊富です。それぞれにいいところがあるので、まんべんなく食べるのが正解です」
肉類で食べすぎに注意が必要なのが、ハムやベーコン、ソーセージといった加工肉。塩漬けや燻製などの製造過程で発がん性物質が発生するという報告があります。2015年にはWHOの専門組織(国際がん研究機関)が「加工肉を毎日50g食べ続けると大腸がんの発症リスクが18%高くなる」と発表しました。できるだけ避けるのが、いいかもしれませんね。
血管コンシャスな食材の選び方③
晩酌のつまみはキノコがおすすめ
適量の酒は健康にいい…!?
「実はこれは多少議論が分かれるところです。ただひとつ言えるのは、アルコール自体は血糖値を上げないということ。ただし、日本酒やワイン、ビールなどの醸造酒には、糖質が多めに含まれているため飲みすぎには注意が必要です。ウイスキーや焼酎などの蒸留酒を選び、おつまみの糖質をとりすぎないようにしましょう。
私も晩酌はしますが、そのときのつまみの、最近のお気に入りがキノコです。キノコには食物繊維の一種であるβ-グルカンが豊富に含まれていて、血糖値の上昇を抑え、過剰な糖の吸収を抑制し、おまけに免疫力を上げる働きもあります。
特にβ-グルカンが多いのがマイタケですが、エリンギ、エノキダケ、シメジなどなんでもOK。これらをバターソテーして、しょうゆで味つけしたものが私の定番です」
お酒も上手に付き合うことが大切なようです。
【教えていただいた方】
池谷敏郎さん
池谷医院院長。1962年生まれ。東京医科大学医学部卒業後、同大学病院第二内科に入局。1997年に、池谷医院理事長兼院長に就任。専門は内科・循環器科。現在も臨床現場に立つ。心臓、血管、血圧などの循環器系のエキスパート。
池谷医院院長。1962年生まれ。東京医科大学医学部卒業後、同大学病院第二内科に入局。1997年に、池谷医院理事長兼院長に就任。専門は内科・循環器科。現在も臨床現場に立つ。心臓、血管、血圧などの循環器系のエキスパート。
『1日5分! 血管ケアだけで20歳若返る!』(青春出版社) ¥1100
取材・文/山村浩子