40歳以降は女性も内臓脂肪に要注意!
「40歳を過ぎた頃から太り出した」
「なかなか痩せられない…」
これは、更年期世代の女性からよく聞くこと。
しかも、その太り方には特徴があるというのです。
「この世代の女性が太り出すのは、年齢による基礎代謝の低下に加え、糖質過多の食事と運動不足が大きな原因です。特に、女性ホルモン(エストロゲン)が減少してくる更年期からは、女性も内臓脂肪がぐんと増えやすくなるのが特徴です。女性ホルモンは女性の体の守り神として、さまざまな働きをしていますが、そのひとつが、内臓への脂肪の蓄積をしにくくしてくれることです」(山田悟先生)
内臓脂肪というと男性のイメージですが、女性も40代以降は女性ホルモンの分泌の低下に伴い、内臓脂肪がたまりやすくなる…という事実!
「そして、肥満と同時に、高血圧、脂質異常、高血糖が次々と起こります。これがメタボリックシンドロームです。中には高血糖が早く進行して糖尿病になる人もいます。現在の日本人の多くがメタボリックシンドロームを構成する疾患に悩まされています。その男女合わせての数は、高血圧症の人が4000万人、血糖異常の人が2000万人、脂質異常症の人が1400万人といわれています。私の専門である糖尿病の患者においては、日本人の40歳以上で、おおよそ3人に1人の割合です」
これは大きな驚きで、かつ深刻な問題です。
「確かに、糖尿病で通院するのは男性が多いのですが、女性も40代~50代以上になると増えてきます。ここには、子どもが小さい世代の主婦層の健診受診率の低さと、その後、子育てが一段落して健診受診率が上昇することが関与している可能性があります。さらに、メタボリックシンドロームが上流となり、下流で生じる病気には、脳卒中や心臓病、がんなども挙げられます」
日本人の死亡原因の上位を占める病気の、根底にあるのがメタボリックシンドローム。それを予防、改善する救世主が、ロカボ食※なのです。
※ロカボ食とは?
1食20g以上40g以下で糖質を摂取し、これで1日3食と、それとは別に嗜好品で1日糖質10gを摂取する食事法。緩やかな糖質制限といえます。
我慢するというより、工夫して糖質を上手にとり、楽しく食べようという考え方でもあります。
*主食に含まれる糖質量/白米ご飯半膳で糖質約28g、食パン8枚切り1枚で約20g、パスタ半皿で約34g、ラーメン麺半量で約28g、そば半量で約20g。
ちなみに小腹がすいたときにナッツ類を食べるのはいいとされますが、ナッツに混じっていることのあるドライフルーツは要注意。健康によいというイメージではやっている、甘酒をとるのも注意が必要です。
アルコールを飲まない、痩せている女性も要注意!
隠れ脂肪肝=非アルコール性脂肪肝とは?
また、糖質を摂取することで、お酒を飲まなくても脂肪肝になりやすくなる…って知っていましたか?
「脂肪肝というと、飲酒習慣のある人がなるものだと思っている人が多いのですが、糖質(特に果糖)のとりすぎでもなります。これを非アルコール性脂肪肝(NAFLD)といいます。重症の非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は肝硬変や肝臓がんへと進行するリスクが高く、特に肥満体でなくても見られるので、まさに「隠れ脂肪肝」といえます」
繰り返しますが、この原因でもある糖質(特に果糖)のとりすぎには、本当に注意が必要です。ダイエットのためと思ってカロリーは控えめにしているのに、健康や美容によいと思ってフルーツスムージーや野菜ジュースはしっかり摂取している…そんな女性に「隠れ脂肪肝」は生じがちです。
高血糖は骨質を悪くして、骨折の原因に!
もうひとつ、女性ホルモンの恩恵を受けている臓器に「骨」があります。
「更年期以降は、骨がもろくなり、骨粗しょう症になりやすくなります。そこに、糖質過多の食事を続けて、高血糖の状態が続くと、それに拍車をかけることになります。骨は鉄筋コンクリートのような構造をしていて、コンクリート部分はカルシウムで、鉄筋にあたる部分はコラーゲンでできています。糖質過多の食事を続けていると、やがて骨の鉄筋にあたるコラーゲンに糖化が起こります」
糖化とは、体の中でタンパク質と余分な糖が結びつくことで、タンパク質が変性&劣化してAGEs(蛋白糖化最終生成物)という老化物質を生成する反応のこと。老化の原因といわれています。
「骨が糖化すると、しなやかさを失い、もろくなり、骨質が落ちます。こうなると、骨密度がそれほど低くなくても、骨折しやすくなるので注意が必要です」
特に、閉経後は骨粗しょう症になるリスクが高まります。それが進むと、ささいなことで骨折して、それを機に寝たきりになることもあります。それを予防するためにも、40代からの「骨活」が重要です。その一端を担うのが、ロカボ食の実践なのです。
「もちろん、ロカボ食は若いときから行うべきなのですが、特に体が大きく変わり、体調をくずしやすくなる更年期世代こそ実践して、100年時代といわれる、この先の人生に備えて欲しいのです」
【教えていただいた方】
北里大学北里研究所病院 副院長・糖尿病センター長。日本内科学会認定内科医・総合内科専門医。多くの糖尿病患者と向き合う中、カロリー制限中心の食事療法では、食べる喜びが損なわれている現実に直面。患者の生活の質が高められる糖質制限食に出合い、積極的に治療に取り入れている。著書多数。
取材・文/山村浩子