数年前、女優アンジェリーナ・ジョリーさんの告白から日本でも広く知られるようになったHBOC(遺伝性乳がん卵巣がん症候群)。どんなリスクがあるの?
Q. HBOC(遺伝性乳がん卵巣がん症候群)について教えて!
A. 乳がんや卵巣がんを高い確率で発症します
女優アンジェリーナ・ジョリーさんが告白して話題になったのがHBOC(遺伝性乳がん卵巣がん症候群)です。HBOCとは、BRCA1かBRCA2という遺伝子の変異が原因で、乳がんや卵巣がんを高い確率で発症する遺伝性腫瘍のこと。乳がんの原因の多くはエストロゲンの影響や生活習慣などが関係していますが、遺伝性、家族性の乳がんもあります。
「遺伝性、家族性の乳がんは、乳がん患者の約5~15%といわれています。血縁者に乳がんか卵巣がんの人が複数いたら、乳腺外科で相談してください。全国のがん診療拠点病院には、遺伝カウンセリングを行う遺伝相談窓口も設置されています」
Q. HBOCだと必ず乳がんや卵巣がんが発症するの? 確率はどのくらい?
A. 乳がん約50~90%、卵巣がん約20~60%の確率とされています
「日本で1年間に乳がんと診断される女性の数は約9万人を上回り、そのうち5~15%が遺伝性の乳がんといわれています。遺伝性の乳がんの中で最も頻度が高く、よく研究されているのがHBOC(遺伝性乳がん卵巣がん症候群)です。
HBOCの人は、比較的若い年齢から乳がんや卵巣がんを発症する傾向があり、生涯で乳がんになるリスクは約50~90%、卵巣がんは約20~60%の確率だと報告されています」
●どんなリスクが?
BRCA1、またはBRCA2遺伝子に変異があると、変異がない場合に比べて次のようなリスクがあります。
- ・乳がんの発症リスクが6~12倍に高まる
- ・若い年齢での発症(40歳未満での発症)が多い
- ・両方の乳房にがんができやすい
- ・卵巣がん(卵管がん・腹膜がんを含む)の発症リスクが高まる
- ・すい臓がん、男性の乳がん、前立腺がんの発症リスクが高まる
お話を伺ったのは
1993年東京慈恵会医科大学卒業。ドイツ・イエナ大学留学、亀田総合病院乳腺科部長、相良病院附属ブレストセンター放射線科部長を経て、現職。2018年より昭和大学医学部放射線医学講座客員教授を兼務。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク(BCIN)理事長
構成・原文/増田美加