腸のぜん動運動を促すために
リラックスして副交感神経優位にする!
「ぜん動運動は自律神経の働きと連動しています。交感神経が優位なときは、体は活動的で緊張しており、副交感神経が優位になると心身はリラックスします。ぜん動運動が起こるのは、副交感神経が優位なとき。ですから、つねに交感神経の優位な状態が続くと、ぜん動運動が鈍くなり便秘になったり、逆に動きが激しくなって下痢を起こすことがあります。快便のためには、交感神経と副交感神経のバランスがよく、排便したい朝の時間にはリラックスしていることが大切です」(川本徹先生)
8時間は食事の間隔をあける
「排便をするには、便意を催させて便を強く押し出す、特別にパワフルなぜん動運動が必要です。それを『大ぜん動運動』といいます。この大ぜん動運動は一日でも数回しか起こりません。胃と小腸が空っぽなところに、食べ物が入ってきたときに初めて起こります。胃腸を空にするには約8時間食べない時間をつくる必要があります。よって、夜遅くに食事をしたり、朝食を抜くと朝の大ぜん動運動が起こりにくくなります。ただし、朝食をとらなくても、水やコーヒーを飲むとその手助けになります」
出すときの姿勢が大事!
排便時に、ロダンの彫刻「考える人」のポーズが効果的だという説があります。「それは前傾姿勢になることで、大腸の最後の出口部分の直腸が、真っすぐになるので、便が出やすくなるという理論です。私がおすすめするのは、この前に、座ったままバンザイのポーズをプラスすることです。少し上体を反らして伸ばすのがポイントです」。このセットで便を直腸に送りやすくなります。ただし、効果には個人差があるそうです。
●おすすめのポーズ
便座に座ったまま、両腕を肩幅に広げてバンザイをします。少し上体を反らせるようにして、ゆっくり4~5回深呼吸をします
続いて、体を前傾させて、片ひじを膝につけます。このポーズで4~5回息を吸って吐きます
お腹を冷やさない
「どうしても出ないときは、『メンタ湿布』を試してみるといいでしょう。これは病院でも行われることがある、即効ケア方法です」。ハッカ油やペパーミント精油を、洗面器に張った湯に2~3滴加え、これにタオルを浸して絞り、腹部に10分ほど当てます。温感とミントの成分や爽やかな香りで自律神経が整い、ぜん動運動を促します。「とにかく冷やさないことが大切。夏場でも冷たいものを食べすぎないこと。また腹巻きなどで腹部を温めるように心がけましょう」
短鎖脂肪酸で腸を育てる
腸の健康を促すには、「短鎖脂肪酸」を増やすことがキーポイントだと川本徹先生。「短鎖脂肪酸とは腸内細菌が腸内で作り出す、酪酸や酢酸、プロピオン酸などの総称。腸内にビフィズス菌などの善玉菌が多ければ、短鎖脂肪酸がたくさん作られ、ぜん動運動を促してくれるので、便秘の解消や病原菌から体を守るバリア機能を高めます」。短鎖脂肪酸の産生には、水溶性食物繊維が豊富な食べ物をとることが大事。詳しくは「簡単おしゃれな美腸レシピ」へ。
犀星の杜クリニック六本木院長。日本消化器病学会専門医。2022年に開設したクリニックでは、再生医療を主軸にした、生理活性物質を用いた治療を行う。著書多数
イラスト/かくたりかこ 構成・原文/山村浩子