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ビールを飲むと、ビール腹になる?それってほんと?酒呑みの都市伝説のウソと真実

お酒を飲むのは楽しいけれど、お酒の失敗で苦い思い出のある人も多いのでは? そんなときに語られるお酒に関するさまざまなお話。実は常識と思っていたことが科学的な裏づけのないことも。そこで、内科医で抗加齢医学の専門医で、ソムリエ、ワインエキスパートエクセレンスの資格も持ち、ワイン講師でもある青木晃先生にお話を伺いました。

【教えていただいた方】

青木晃
青木晃さん
内科医、日本抗加齢医学会専門医
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医療法人晃和会「ウェルエイジングクリニック南青山」理事長。元・順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座准教授。日本健康医療学会常任理事、日本抗加齢医学会評議員など歴任。日本のアンチエイジング医学の第一人者。ソムリエ、ワインエキスパート・エクセレンス、SAKE DIPLOMAの資格を持ち、ワインスクール「レコール・デュ・ヴァン渋谷校」の校長も務める。医療監修を担当した『美しい女は呑んでいる』(主婦と生活社)が好評。

 

なんとなく言い伝えられてきた、お酒にまつわる話…。これって本当? それとも都市伝説?

 

飲めない人も鍛えれば飲めるようになる 

Answer 

「鍛えて飲めるようになる体質の人と、ならない体質の人がいます」

 

「アルコールが体内に入ると、肝臓で分解されます。このとき、よく二日酔いの原因といわれている『アセトアルデヒド』を分解するのに、『ALDH2』という酵素が関係しています。この酵素の活性具合は大きく3タイプに分かれます。

 

① 活性する(活性型)

②そこそこ活性する(低活性型)

③活性しない(非活性型)

 

①はお酒に強く、よく“ザル”と言われるタイプ。②は飲めるけれど、それほど強くないタイプ。③はまったく受けつけない“下戸”と言われるタイプです。

 

これは遺伝子で決まります。ちなみにこの違いは人種により顕著で、欧米人のほとんどが①の活性型。日本人や中国人は、②の低活性型が40%、③の非活性型が4% と報告されています。

この日本人に多い、②の低活性型の人なら、お酒に弱くても、飲み続けると飲めるようになる可能性があります。一方で、③の非活性型の人はお酒を解毒できないので、頑張っても強くなることはありません。よってチャレンジするのはNGです!

また、②の低活性型タイプの場合、飲み続けていると飲めるのですが、しばらく飲むのをやめていると、また飲めなくなることがあります」

 

特に昔は「鍛えれば飲めるようになる!」と、上司から無理やり飲まされた人(特に男性)は少なくないでしょう。今やこれはパワハラでしかなく、へたをすると健康や命にかかわること。無理強いをすることは絶対にやめましょう。

 

ちゃんぽんすると二日酔いになる

Answer ×

「複数のお酒を混ぜることが原因ではなく、味が変わることにより適量を超えて飲んでしまうから」

 

これも、まことしやかに言い伝えられている説ですが…答えはウソ!

 

「二日酔いになるかは、飲んだ“純アルコール量”※の総量と、小腸でのアルコールの吸収スピードが関係します。何種類かのお酒を飲むからではなく、飲み口が変わることで、飲むペースが早まったり、つい飲みすぎるからだと考えられます」

 

二日酔いの防止には、急激に血中アルコール濃度を上げないことも大切なのだとか。飲むペースをゆっくりにして楽しみましょう。

 

※純アルコール量/そのお酒に含まれる純粋なアルコール量のこと。1日の“適量”といわれる基準は20g。

 

お酒の種類(平均的なアルコール度数)/純アルコール20g相当の量(女性はこの1/2~2/3の量が目安)

ビール  (5%)/ロング缶1本500㎖

日本酒  (15%)/1合弱160㎖

ワイン  (14%)/グラス2杯200㎖

焼酎   (25%)/半合強100㎖

ウイスキー(43%)/ダブル1杯60㎖

 

 

醸造酒は悪酔いしやすい?

Answer ×

「はっきりした根拠はありません」

 

醸造酒である日本酒やワインを飲むと頭が痛くなる…といった話はよく聞きます。醸造酒と蒸留酒で酔い方は違うのでしょうか?

「確かにこの説はよく聞きますね。しかし、明確な医学的根拠はないはずです。中には、蒸留酒は水とエタノール(アルコール)以外の成分が少ないので、二日酔いになりにくいと唱えている学者もいますが…。

 

私の考えでは、醸造酒のほうがアルコール度数の低いものが多く、口当たりがいいので、飲みすぎることが一因なのでは?と。度数の高い蒸留酒をチビチビ飲むよりも、トータルの純アルコール摂取量が多くなるのではないでしょうか。

 

ひとつ注意が必要なのは、度数の高い蒸留酒をストレートで飲むことを好む人は、醸造酒を飲む人に比べて死亡率が高いことがわかっています。ペースを落として、必ずチェイサーとして水を飲むようにしてください」

 

オーガニックワインや自然派ワインのほうが健康にいい

Answer 

「病気への罹患率や寿命に関するデータはありません」

 

ワインを飲むと頭が痛くなるのは、添加されている保存料のせい…これも、一般的に言われていることです。

 

「最近では、有機農法で栽培されたぶどうから造られるオーガニックワインや、ビオディナミ農法によるビオワインなどが、ヘルシー志向の人に人気があります。確かに、残留農薬や薬剤耐性菌などの、体への影響は少ないかもしれません。しかし、それによる健康被害、病気の罹患率や死亡率が高くなったという医学的なデータはありません。

 

また、ワインに酸化防止剤として添加される亜硫酸塩で頭が痛くなる…という声もよく聞きます。しかし、これも亜硫酸塩が原因ではないと考えます。むしろ、自然派の赤ワインのほうが、マロラクティック発酵(乳酸菌による発酵で、酸味がマイルドになる)で、ヒスタミンが発生しやすく、これが頭痛を起こす原因という説もあります。

 

おいしいワインはいいぶどうから造られることには変わりありません。どちらのワインでもおいしいと思うものを選び、造り手に敬意を持って飲みたいと思います」

 

 

ビールを飲むと、ビール腹になる

Answer 

「腹部が太るのは、ビールだけのせいではありません」

 

ビール好きの人にお腹が出ている人が多い…確かに実際に存在します。これってビールならではの現象なのでしょうか?

 

「ビール好きにお腹が出ている人が多いのは、ビールは喉ごしがよいので、つい飲みすぎてしまい、基準の純アルコール量を上回ってしまうからと考えられます。

アルコールを大量にとると、エネルギーとして使われず、中性脂肪に変化します。これが皮下脂肪や肝臓などの内臓脂肪になっていきます。飲みすぎれば、どんなお酒でも同様。ビールだけの問題ではありません。

 

またこんなデータもあります。男性の場合、飲酒量が1日当たりビール大瓶1本以上になると、腹囲だけでなく、肥満度も上がる傾向があります。ところが女性の場合、1本までだとむしろ痩せる傾向があるのです。

 

また、「ビール腹になる」という伝説については、一緒に食べるものが関係していそうです。お酒と食事の相性からか、ワイン好きの人は野菜や果物、チーズなどを好み、ビール好きは鶏肉やソーセージ、ポテトなどを好む傾向のあることが、デンマークの研究グループの調査でわかったのです。

 

つまりビール腹になるのは、ビールのせいではなく、飲みすぎと一緒に食べる料理にあるのではないかと推測できます。つまみなども総合的に考える必要がありそうです」

 

 

飲む前に牛乳を飲むと酔いにくい

 

Answer 

「飲む前に油脂分をとると酔いにくくなります」

 

「二日酔いを予防するには一気にアルコールを吸収させないこと、すなわちアルコールがダイレクトに小腸に行かないようにすることが肝心。胃にできるだけとどめておくようにするのです。

そのためには、飲む前に少量の油脂分をとっておくことが手助けになります。油脂分により、消化管ホルモンが分泌され、胃の出口である幽門部が閉まるため、胃に留まりやすくなるのです。

そのひとつのアイデアが牛乳ですが、ほかにも、スープ、チーズ、オリーブオイルを使ったつまみ(カルパッチョなど)もいいでしょう。例えば、カルパッチョ2~3切れにオリーブオイルを少しかけて食べるくらいでOKです」

 

 

いかがでしたか? 常識として言い伝えられたことも、実は科学的根拠がないこともありましたね。

「健康的にお酒を楽しむ」ノウハウ、ぜひ活用してください!

 

 

取材・文/山村浩子

 

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