股関節の骨の状態は人それぞれ!
股関節はどこにあるのか? と聞かれると…「股の間」や「腰骨の出っ張り」だと思っている人が少なくありません。
「実際はもう少し奥のお尻に近いところ、太ももの骨が骨盤と接する部分の関節です。大腿骨(だいたいこつ)の上端にある球状をした大腿骨頭(だいたいこっとう)が、骨盤の寛骨臼(かんこつきゅう)と呼ばれるソケットにはまり込む形になっています。そのまわりを22もの筋肉が支えることで、脚をさまざまな方向に動かすことができるのです」(武田淳也先生)
その動きは…屈曲=前に曲げる、伸展=脚を後ろに伸ばす、内転=内側に動かす、外転=外側に動かす、内旋=内側に回す、外旋=外側に回すという6つの方向。
「骨盤の形状や大きさは男女で違うように、大腿骨頭と受け皿になる寛骨臼のかぶり方にも、男女差や個人差があります。一般的に女性のほうが骨盤が横に広いため、股関節への負担が大きくなります。そのため『変形性股関節症』の患者の約8割が女性です」
変形性股関節症は40代~50代で増えてくる!
大腿骨頭と寛骨臼の間には、クッション役となる関節軟骨があります。これが加齢などにより、すり減ったり変性することで、骨頭や寛骨臼が変形してしまうのが変形性股関節症です。
「股関節には、普通に歩くだけで体重の3倍、ランニング時には4~5倍、階段の昇降には6~8倍の負荷がかかるといわれています。また、姿勢が大きく影響します。股関節は腰や膝と連携しているので、猫背や反り腰の人はそのバランスをとるために、股関節にも大きな負担がかかります。
大腿骨頭と寛骨臼の形には個人差があり、生まれつき“かぶりが浅い”人がいます。こうした、発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)や寛骨臼形成不全(臼蓋形成不全)の場合は、変形性股関節症を発症しやすくなり、原因の8割を占めます。
このように股関節の形状に個人差があることを知っておくことは大切。股関節を柔らかくしようと、無理な開脚などのストレッチをするのは注意が必要です。もちろん、その周囲の筋肉を柔軟に保つことは大切ですが、やりすぎないことです。できたら、若いうちにここの形状をレントゲンなどで調べて、自分で把握しておくのが理想です。
また、こうした“かぶりが浅い”人は、腰を反らせて骨盤を前傾させてバランスをとろうとするので、腰にも負担がかかり、腰椎変性すべり症を発症してしまうケースもあるので、注意が必要です」
病院では最新の再生医療も!
「痛みや炎症を抑えるための、消炎鎮痛剤の内服薬、湿布や軟膏の外用薬の処方、患部を温める温熱療法、股関節を安定させるSスプリントなどの装具を取りつけるなど。
外科的な治療では、関節鏡視下手術があります。小型カメラを股関節の内部に挿入して、傷んだ軟骨を切り取る、内部にはがれ落ちた組織の破片を取り除く、内部を洗浄するなどを行います。
また、一部の病院では、多血小板血漿(PRP)という再生医療の治療を行うところもあります。患者自身から採血した血液を遠心分離して得た多血小板血漿(PRP)を濃縮して、自己タンパク質溶液(APS)を調整し、股関節内へ注射する方法です。個人差がありますが、1回で痛みが軽減し、数回行うことで軟骨が再生します。ただし、自由診療になり、1回20万円~くらいかかります」
外転筋を鍛えるエクササイズを!
もちろん、変形性股間節症を自分でケアする方法もあります。
外転筋が弱ると、股関節が外れる方向に動くようになります。痛みのコントロールができたら、このエクササイズをプラスしてみましょう。股関節のエクササイズ時はつねに腰と骨盤の安定を意識して行うことがポイントです。
■ヒップアブダクション
外転筋を鍛えて股関節の動きをアップ!
① 横向きに寝て腕枕をします。下の脚は軽く曲げ、息を吸って準備します。
② 息を吐きながら、上側の脚を上げます。つま先は前に向けたままで。これを左右同様に各10回行います。
■クラムシェル
固まった股関節を気持ちよく開いて!
① 横向きに寝て腕枕をします。股関節を前に曲げ、両膝と脚をそろえて曲げます。息を吸って準備します。
② 息を吐きながら、上側の脚を開きます。両方のかかとはつけたまま。上体は前後に倒れないように固定して行います。これを左右同様に各10回行います。
日常生活では座り姿勢に注意!
実は股関節に座り姿勢が大きく関係しています。こんな姿勢をしていませんか?
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猫背で骨盤が後傾した姿勢は股関節にも負担がかかります。逆に反り腰で骨盤が前傾しすぎた姿勢もNGです。
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骨盤を立てて、背骨の上に頭がくるように。このニュートラルポジションは腰だけでなく、股関節のためにも維持したいポイントです。
長時間のデスクワークの人などは、ぜひ座り姿勢に気をつけてください。
【教えていただいた方】
「整形外科 スポーツ・栄養クリニック」(福岡、東京・代官山)理事長。日本で初めて医療にピラティスを取り入れ、独自の「カラダ取説」プログラムの普及に尽力
イラスト/かくたりかこ 構成・文/山村浩子