大腸がんについて知っておきたいことQ&A
Q. 大腸がんになりやすいのは、どんな人? 発症しやすいのは何歳くらい?
A. 遺伝的要因以外に環境要因も! 60~80歳が要注意
大腸がんの発症には、後天的要因と遺伝的要因が関係しています(下図参照)。まず、後天的要因では60~80歳が発症しやすい年齢。さらに、環境要因が加わるとハイリスクになります。慢性便秘、運動不足、糖尿病、喫煙、腸内環境不良<腸内細菌叢(そう)の不良、炎症性腸疾患>があると大腸ポリープができる可能性が高く、ポリープの一部ががん化するリスクも高まります。
もうひとつの遺伝的要因については、次の質問で詳しく紹介しますが、原因となる遺伝子変異の有無が不明でも、血縁者に大腸がんの人がいる場合はリスクとなり、そこに後天的要因が加わればハイリスクとなります。
大腸がんのさまざまな要因
●遺伝的要因と環境要因でリスクがわかります
遺伝的な要因以外にも、さまざまな環境要因と加齢で、大腸がんのリスクは高くなります。生活習慣で気をつけられることは、いろいろあります
後天的要因、遺伝的要因でリスクがあると思う人は、大腸内視鏡検査を行ったほうがいいです。リスクが少ないと思う人は、50歳までは便潜血検査でもいいと思います。しかし、50歳を過ぎたら、低リスクでも一度は大腸内視鏡検査を行って、自分の大腸の状態や性質を確認することをおすすめします。
Q. 家系内に発症が多い遺伝性の大腸がんとは?
A. 50歳未満で発症した血縁者がいたら要注意
大腸がん罹患者の中で、遺伝性のものは全体の約5%です。約95%の要因は年齢(60~80歳)と、慢性便秘や運動不足などの環境要因です。
とはいえ、血縁者に大腸がんの人がいると心配ですね。現在わかっている遺伝性大腸がんには、「家族性大腸腺腫症」(FAP※)と「リンチ症候群」があります。
※FAP=Familial Adenomatous Polyposis
遺伝性の「家族性大腸腺腫症(FAP)」「リンチ症候群」とは?
●家族性大腸腺腫症(FAP)
ポリープがたくさん(100個以上)「大腸内視鏡検査をしないとわからない」
FAPは、大腸に良性のポリープ(腺腫)が100個以上発生します。良性の腺腫もがん化のリスクがあり、高い確率で大腸がんを発症します。しかし遺伝性大腸がんのうち0.8%と多くはありません。
【FAP(0.8%)が疑われるのは?】
- ・ 若年(20〜50歳未満)発症の大腸手術をした家族がいる
- ・ ポリープがたくさん〜無数に(数えきれないくらい)あると指摘される
●リンチ症候群
ポリープは少ない
リンチ症候群は大腸がんの2~3%といわれています。50歳未満の発症者に多く、ポリープは少なく、右側結腸(下図参照)がんが多いといわれています。
【リンチ症候群(2〜3%)が疑われるのは?】
- ・ 若年(20〜50歳未満)発症のがん既徃
- ・ 多発がん、多重がん(いくつも、いろいろなところに)
- ・ 家族で大腸がん・子宮がんが多い(若年子宮体がん)
- ・ 大腸がんの発症部位(右側結腸がん)
- ・ 比較的稀ながん(粘液がん・低分化がん)
大腸がんのほか、子宮体がんも発症しやすく、複数のがんが多発しやすくなります。遺伝性がんはいずれも50歳未満で発症しやすいので、血縁者の大腸がんが若年性なら、大腸内視鏡検査を行いましょう。
東邦大学医学部卒業。昭和大学藤が丘病院消化器内科、がん研有明病院内視鏡診療部医長を経て現職。日本消化器病学会専門医、指導医、日本消化器内視鏡学会専門医、指導医ほか
イラスト/カツヤマケイコ 構成・原文/増田美加