休肝日は本当に必要?
よく週に1~2日は休肝日を設けるように…と言われていますが、それは効果的なのでしょうか?
「40~69歳の日本人男性を対象に、飲酒パターンと死亡率の関係を調査した研究があります」(青木晃先生)
それによると、週に純アルコール量300g以上飲むグループでは、休肝日が少ない人は週に1、2日だけ飲酒するグループよりも、総死亡率が1.5倍高いという結果でした。
一方、週に純アルコール量450g以上のグループでは、休肝日があるなしにかかわらず、総死亡リスクの高いことがわかりました。純アルコール量450gは、日本酒なら1日3合以上を毎日飲んだ計算です。
「そう考えると、休肝日を設ければたくさん飲んでも問題ないということはなく、飲む総量を抑えることが重要ということになります。
ちなみに『休肝日』という考えは日本だけの概念で、海外にはないそうです。それは日本人にお酒に弱い人が多いことからの考えだと思われます」
これで、休肝日を設けるより、お酒の量をほどほどにすることが肝要だということはわかりました。
でもついつい飲みすぎてしまうという人も多いはず。
そういう生活をしていると、(もしかして飲みすぎていなくても)40歳を過ぎたあたりから、健康診断の数値で引っかかることが増えてきます。
代謝も悪くなってきて、体のあちこちに疲れがたまり、ますますお酒の影響が出てきているかも?
ならば指標として、特にお酒好きの人がチェックすべき健康に関する数値とは?
中性脂肪値や血清尿酸値は閉経後に増える
●チェックする数値1:中性脂肪
「飲酒によって数値が上がるもののひとつが中性脂肪値でしょう。飲食により栄養を摂取すると、一部が中性脂肪になり、体内のエネルギー活動に使われます。しかし、運動不足などでそれが使われないと、そのエネルギーは皮下脂肪や内臓脂肪になっていきます。
すると、セットのように、HDL(善玉)コレステロールの働きが弱まり、LDL(悪玉)コレステロールが増えてきます。これらが進むと、動脈硬化などの血管障害の原因になります。
中性脂肪は女性の場合、更年期世代になると自然と上がってきます。その高い数値が自然なものなのか、お酒が原因なのかを知るために、検査の1週間前くらいからお酒の量を減らしたり、前日は禁酒をするといいでしょう。
それによって、前年よりも数値がよくなっていれば、お酒が原因であることになります。一度、お酒が関与しないときの数値を知っておくことが重要です」
意外にも前日の禁酒だけでも数値が変わってくるそう。また、検査の前日は、夕飯以降は水以外の飲食をせずに、空腹の状態で採血するのが基本ということも、覚えておくといいでしょう。
中性脂肪の基準値
150mg/dL未満
注意したい病気
脂質異常症、動脈硬化、膵炎(すいえん)、糖尿病、心筋梗塞、脳梗塞など。
●チェックする数値2:血清尿酸値
高尿酸血症や痛風になる原因は、以前はプリン体を多く含む食品のとりすぎ説がありましたが、今はアルコールのとりすぎが主犯と言われています。また、女性も閉経後に血清尿酸値が上がる傾向があり、痛風になりやすくなるので注意が必要です。
血清尿酸値
基準値:7.0mg/dL以下
注意したい病気
痛風、糖尿病、肝硬変など。
肝臓の機能低下はこの数値をチェック
●チェックする数値3:γ-GT
γ-GTは肝臓がアルコールなどを無毒化するときに使われるグルタチオンの働きを助ける酵素です。過度の飲酒などで、数値が高まり、アルコール性肝障害の診断の目安に使われます。
γ-GT(γ-GTP)
基準値:30 U/L以下
注意したい病気
アルコール性肝障害、胆のう炎、総胆管結石など。
●チェックする数値4:ALP
ALP(アルカリホスファターゼ)はリン酸化合物を分解する酵素のこと。肝臓や肝細胞に異常があると、胆汁が排泄されなくなり、血中にこのALPがあふれて数値が上がります。骨や甲状腺の異常でも高くなります。
ALP
基準値:113U/L 以下
注意したい病気
急性・慢性肝炎、総胆管結石、胆のう炎、胆管炎、肝硬変など。
●チェックする数値5:GOT(AST)
タンパク質を分解し、アミノ酸を合成・代謝するうえでなくてはならない酵素の値です。GOTは肝臓以外にもあるため、肝臓の異常かどうかを判断するには、GPTを同時にチェックします。
GOT(AST)
基準値:35U/L以下
注意したい病気
急性・慢性肝炎、アルコール性肝炎、脂肪肝、肝硬変、心筋梗塞、肝臓がんなど。
●チェックする数値6:GPT(ALT)
大部分が肝細胞に含まれるため、GOTの数値とともに見ることで、病気の種類が特定できます。
GPT(ALT)
基準値35U/L以下
注意したい病気
急性・慢性肝炎、アルコール性肝炎、ウイルス性肝炎、脂肪肝、肝硬変、肝臓がんなど。
いかがでしたか? やはり過度な飲酒が病気や死亡リスクを高めることは確かのよう。
これらの数値が基準値から外れる場合は、お酒の量を控えることが肝心です。
上手にコントロールしつつ、いつまでも健康的にお酒を楽しみたいですね。
【教えていただいた方】
医療法人晃和会「ウェルエイジングクリニック南青山」理事長。元・順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座准教授。日本健康医療学会常任理事、日本抗加齢医学会評議員など歴任。日本のアンチエイジング医学の第一人者。ソムリエ、ワインエキスパート・エクセレンス、SAKE DIPLOMAの資格を持ち、ワインスクール「レコール・デュ・ヴァン渋谷校」の校長も務める。医療監修を担当した『美しい女は呑んでいる』(主婦と生活社)が好評。
イラスト/内藤しなこ 取材・文/山村浩子