【教えていただいた方】

一般社団法人日本パーフェクト整体普及協会(JPSA)代表。赤門鍼灸柔整専門学校(現、仙台赤門医療専門学校)卒業後、東北大学や金沢大学医学部で2年間の解剖学実習研究生を経て、1986年に仙台市にて鍼灸院を開業。25年の整体師経験からパーフェクト整体®️3大メソッドを確立し、2012年に上京。パーフェクト整体のリアルの講座は500人以上、オンライン講座では3000人以上が受講。著書は10冊あり、累計17万部を超えている。
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脳脊髄液は大切な脳と脊髄を守る水!
私たちの体は骨や筋肉、脂肪などでできていると認識していますが、実は、体の6~7割を占めるのが「水」だと言われたら、あなたは信じられますか?
「体の6~7割を占める水が『体液』です。多くの人が思い浮かべる『血液とリンパ液』に加えて、もうひとつ重要な体液があります。それが『脳脊髄液』です。
この3つを総称して体液と呼んでいます。
脳脊髄液はあまり聞き慣れないと思いますが、その名前の通り『脳と脊髄を保護する液体』のことで、「頭蓋骨」と脳から仙骨まで伸びている「脊柱」の内部を満たしています」(片平悦子さん)
脳脊髄液のことを、私はよく豆腐のパックにたとえています。
「豆腐のパックには、豆腐が潰れないように水が入っていますね。その水のおかげで、少々乱暴に扱っても豆腐の形は保たれます。
実は、脳は豆腐よりも柔らかくて、プリンみたいにプルンプルンしているのです。豆腐やプリンのように柔らかい脳と脊髄を守るために、周りを水で満たしているわけです。その水が脳脊髄液です」
脳脊髄液は、脳の中の『第三脳室の脈絡叢』という場所で作られます。
「そして、『蝶形後頭底結合』という部位がポンプ役となって、血管から脳脊髄液をジワ〜っと染み出させているのです。
蝶形後頭底結合は、後頭骨(寝たときに枕に当たる骨)と蝶形骨(こめかみのあたりにある骨)が結合した部分です。蝶形後頭底結合はちょうど、のどちんこの奥のあたりにあると思うと、イメージしやすいですね。
この蝶形後頭底結合のポンプ機能が正常だと、脳と脊髄を守る水である脳脊髄液が常に生成され循環することで、脳脊髄液が最適な量を維持して脳と脊髄を守っています。
豆腐のパックも水が少なすぎたら、どこかにぶつけたら豆腐が潰れてしまうし、多すぎても潰れてしまいます。つまり豆腐を守る水は常時、適量であることが重要です。
同様に、脳脊髄液も多くても少なすぎてもダメで、一定の量が常に生成・循環していることが大切なのです」
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脳脊髄液の流れが悪いとどんな症状が出るの?
では、脳脊髄液の生成・循環がうまくいかないとどうなるのでしょうか?
「例えば、脳脊髄液の循環が悪くてたまってしまうと脳や脊椎を圧迫してしまいます。生成されずに少なくなってしまったら、脳や脊椎を十分に守れません。それにより、頭痛やめまい、嘔吐といったさまざまな症状を引き起こすことになります。
交通事故のあと、「脳脊髄液減少症」になって、ブラッドパッチ※の手術をしたという話を聞いたことはありませんか?
※ブラッドパッチとは「硬膜外自家血注入療法」といい、脊椎硬膜外腔に患者自身の血液を注入して、脳脊髄液の漏れを止める治療法です。
この脳脊髄液減少症というのは、交通事故や転倒、転落、打撲などの刺激で脳脊髄液が漏れ出てしまい、少なくなった状態のことをいいます」
最近では俳優の米倉涼子さんが罹患して、5年にわたり闘病したことで、耳にした人も少なくないでしょう」
脳脊髄液減少症になると、次のような症状が現れます。
【症状】
● 起立性頭痛(立位によって増強する頭痛)
● 頚部痛(首の痛み)
● 背部痛、腰痛
● 耳鳴り
● 不眠
● 記憶障害(もの忘れ)
● 集中力低下
● 聴覚障害
● 視覚障害
● 羞明感(しゅうめいかん・光がまぶしく感じるなど)
【特徴】
● 体を起こしたときに症状が出る。
● 寝ていると症状はなくなり、起きると悪化する。
● 体をひねったり、激しく咳き込んだりしたあとから始まることがある。特にきっかけがなく、徐々に出る場合もある。
● 外見からはわかりづらいため、病気であると理解されにくい。
「なんとなく、脳脊髄液の重要性がわかっていただけたでしょうか?
脳脊髄液減少症とまでいかなくても、脳脊髄液の生成・循環が悪くなると、頭痛や吐き気、めまい、耳鳴りなどの不調が現れることがあります。脳脊髄液はまさに、体液の親分ともいえる重要な液なのです」
イラスト/かくたりかこ 取材・文/山村浩子