乳がんになっても周囲に公表しない人が多いのはなぜ?
実は私の周囲には、私と同じように乳がんを患った友人が何人かいます。彼女たちは、こんな風に乳がんの体験をブログに書くなどしている私とは違って、家族や限られた数人にしか自分の病気を公表していないケースがほとんどです。 hijiriさんだから話すけど他の人に言わないでね、と言われたことも何度かありました。
私はある程度公表した方がいろいろ楽ちん(定期検診の時間調整や薬による体調不良など)だと思う方なのですが、ふと公表するしないの違いはどこにあるのだろうと改めて思ったのです。
そこで何人かに聞いてみたのですが、これはもしかして周囲の人も理解しておいた方がよいかもと思ったので、ちょっと書いてみようと思います。
理由その1:なんでも乳がん(病気)と結びつけられて特別扱いされてしまう
いわゆる弱者として見られてしまうと言ってもいいかもしれません。「病人」というラベルがついてしまうから、ということかもしれません。
私はこの連載で趣味のランニングに触れることが多いせいもあるのか、たまに乳がんサバイバーであること自体を忘れられてしまうくらいです。それであまり実感はなかったのですが、思い返してみれば私でさえ、初対面の方に話すとこわごわとした扱いを感じることはありました。わざわざ「今はもう大丈夫なんですよ」ってお話ししないといけない雰囲気になったりして、公表するのが嫌だという気持ちはわかる気がします。
それに、逆の視点で考えれば、確かに友達が大きな病気をしたとか、重症だといわれるとやっぱり心配するし、無意識にそういう特別扱いをしてしまうことは誰にもありそうです。 私でさえ定期健診もかなり頻繁ですし、それに付随する血液検査やマンモグラフィーなどの検査も多い。有休や早退なども増えてしまうかもしれません。悪い意味ではなく、心配のあまりきつい仕事はいいよ、と言われることもあるかもしれません。
そういう意味では、私は経験がありませんが、お子さんができた方に配慮しすぎたばかりに、本人が望まない仕事の軽減がされる、みたいな話にも近いのかもと感じました。もちろん感じ方は、それぞれの置かれた状況にもよると思いますが。
記事が続きます理由その2:変な民間療法などの誘いが増える
これは私もわかります。以前も書きましたが、手術後しばらくは本当に民間療法の誘いが多かったです。相手は100%好意でしかないので、断るにもまるでその好意まで拒否しているようにならないかと、とても気を使ったことを覚えています。
上に書いたように私は手術後もランニングを続けていて元気なイメージのほうが強いようです。手術から6年たった今はほぼそんなことはありませんが、それでもやっぱり薬の影響で寝られないとか、発汗がひどくて辛いというと、こういうのを試したらとか、医者のいうことだけで大丈夫かと言われることもあります。「乳がんサバイバー」という事実があると、心配のタネが尽きることはないのかもしれません。
症状によってはまだ再発が不安な方もいらっしゃると思うし、そんな中でよかれと思って言ってくれることは心配の表れでもあると考えると、一概に責められないとは思います。
でも、なんといっても標準治療は、「科学的根拠に基づいた、現在利用できる最良の治療」です。民間療法の誘いはがんサバイバー側にとって困ることであるのは事実です。公表しないことで、それを回避できるなら、その方法を選択する人も確かにいるのだろうなと思います。
こうやって考えると、結局「公表しない」という選択は、周りの態度が選ばせるのかもしれないなと感じました。もちろん、家族だから、友達だから、仲間だから心配することはあるでしょう。でも、以前も書きましたが、病気になった本人が一番大変なのですから、むしろ暖かく変わらずいてくれるほうがうれしいしありがたいのです。
「hijiriさん、乳がんサバイバーなの?ランニングして大丈夫?」と言われるより、「今度一緒に走りにいこうよ」と言われるほうがずっと嬉しいのです。