
熱中症予防クイズ!
年々、猛暑に見舞われる日本の夏。特に都市部では、ヒートアイランド現象の影響も加わり、日中だけでなく、夜間も気温が下がらない熱帯夜も増加。そんななか、毎年、熱中症になる人が増え続けています。
そこで「熱中症予防」に関するクイズです。
次のことはウソor ホント?
Q1 日傘の色は黒や濃い色のほうが予防になる。
ウソor ホント
A ウソ。いちばん効果が高いのは「表は白や淡い色、裏は黒や濃い色」。
「熱中症は脱水症状から体温調節ができなくなり、体温が上がってしまう病気です。日傘は体全体を直射日光から守ることができ、そのため体温上昇を抑える効果があります。
傘の色は、紫外線を通しにくいのは黒や濃い色です。しかし、温度を上げるのに関係するのは赤外線です。赤外線は黒や濃い色の生地のほうが吸収されやすく、結果、生地自体が熱くなります。一方で、白や淡い色は赤外線を反射して、熱くなりにくい傾向があります。
また、傘の内側が白や淡い色だと、地面の照り返しの紫外線を反射して、顔や首に紫外線を大量に浴びてしまう可能性があります。内側を黒や濃い色にすると、赤外線を吸収してくれるので、体への熱吸収を軽減してくれます。それらを考えると、外側は白や淡い色、内側は黒や濃い色がベストと言えます」(谷口英喜先生)
Q2 水分補給は喉が渇いてからでは遅い。
ウソor ホント
A ホント。渇きを感じたときにはすでに脱水症状が始まっています。
「喉が渇いたと感じたときには、すでに体内の水分が2%ほど失われている状態です。水分補給をしてから、体全体に水分が行き届くまでには20~30分かかります。喉が渇いたと感じる前に飲むのが理想です。
年代別の理想的な水分補給方法は、成人は『喉が渇く前、渇いたらすぐに飲む』、小児は『自由にいつでも飲む』、高齢者は『時間を決めて定期的に飲む』と覚えてください」
Q3 汗は拭いてしまうと体温調節にならない。
ウソor ホント
A ウソ。不快な汗は拭いたほうがいいでしょう。
「暑いと汗が出ます。これは汗が蒸発するときに熱を奪って体温調節をするのが目的です。それなら、かいた汗は拭かないほうがいいのでは? とよく聞かれます。答えは、拭いても問題ありません。その理由は拭き取れる汗は、体から出ている汗のほんの一部だからです。
拭かずにいたら、汗はボタボタ落ちるだけ。いずれにしても蒸発しません。汗には老廃物も含んでいるので、そのままにすると皮膚への悪い刺激になります。汗を拭けば、またすぐに次の汗が出てくるので、不快な汗はすぐに拭くのがいいと思います」
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Q4:暑い日はシャワーですますほうがよい。
ウソor ホント
A ウソ。入れる状態なら湯船につかったほうがベター。
「この答えは『生活スタイルによります』というのが正解です。一日エアコンの効いた室内で過ごしている人なら、湯船につかって体を温めたほうが、疲れが取れるでしょう。一方、暑い屋外で一日汗をかいているような人は、家に帰ってすぐに熱いお風呂に入ったら、さらに疲れが増してしまいます。
そんなときは、エアコンで体を冷やしてから、ぬるめの湯につかるのがいいでしょう。血行を促し、自律神経を整え、リラックス効果を高めて疲労回復を早めるので、やはりできたら湯船につかるのが理想です。半身浴でも効果があります」
Q5:カフェイン飲料は水分補給にならない。
ウソor ホント
A ウソ。水分補給になります。
「カフェインには利尿作用があるので、カフェインを含む緑茶や紅茶、コーヒーなどは水分補給にならないと言われていました。
しかし、カフェインに対する感受性は人によって異なり、普段から飲んでいると耐性がついてきます。最近の研究では、カフェイン飲料を飲み慣れている人なら、水分補給になると結論づけられています。ただし、すでに脱水症状になっている人はNG。飲みすぎにも注意しましょう。
一方、アルコール飲料は強い利尿作用があるので、水分補給にはなりません。汗をかいたあとの冷えたビールはおいしいですが、お酒を飲むときには、一緒に水や食事から水分補給することをおすすめします」
いかがでしたか? 間違って認識している人もいたのでは?
熱中症の初期段階では手足が冷たくなることも!
熱中症になるとき、私たちの体はどのようになっているでしょうか?
「私たち人間は恒温(こうおん)動物といい、外の温度にかかわらず体温を一定に保っています。暑いときは、汗をかいたり血管を拡張して熱を外に逃し、寒いときには、血管を収縮させて放熱を防いだり体をブルブル震わせるなどして熱を発生させて、一定の体温を保ちます。
しかし、暑いときに大量に汗をかくと、体が水分不足になる『脱水症状』になります。体の水分が3~5%失われると軽度、6~9%で中度、10%以上だと重度の脱水症状です。
中度~重度になると、外に熱を逃せなくなり、体内に熱がこもって深部体温が上昇していきます。こうして異常な高体温が続くと、臓器をつくっているタンパク質が変性します。こうなると、体のさまざまな器官がダメージを受け、最悪、多臓器不全で死に至ることもあります。一度、変性したタンパク質は元に戻らないので、命が助かったとしても、重い後遺症が残ることになります。
熱中症というと体温が上がるイメージがありますが、高体温になるのは重度の場合です。軽度の脱水症状では、血液が体の隅々まで行き渡らなくなるため、手足の先は冷たくなります。こうなったら熱中症の初期症状なので、この段階で水分補給をするなどして素早く対処することが重要です。
中期では体温が徐々に上がり、筋肉の痛み、麻痺、意識低下、嘔吐などの症状が現れます。こうなったら一刻も早い医療機関の受診をおすすめします」
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体が暑さに慣れていない梅雨時が要注意!
熱中症というと、一年で最も暑い8月に発症するイメージですが、実は救急搬送される数の第1ピークは梅雨時です。そのあとの第2ピークが7月です。
「それは、梅雨時はまだそれほど暑くないのですが、湿度が高いこと、そして、体がまだ暑さに慣れていないことが要因と考えられます。熱中症は気温だけでなく、湿度と赤外線の強さが関係しています。
湿度が高いと、汗をかいても蒸発しにくいので、体温が下がりにくくなります。また喉の渇きに気づきにくいので、水分補給が遅れることも一因でしょう。
また、体温を上昇させることに赤外線が関係しています。赤外線は太陽光に含まれる電磁波の一種で、紫外線よりも波長が長く、物体を温める効果があります。そのため、熱中症を防ぐためには、赤外線をカットすることが重要です。
例えば、自動車の車内温度の上昇を抑えるためには、紫外線だけでなく、赤外線をカットする遮熱効果のあるカーフィルムなどが必要です。これからの季節は自動車内での熱中症が増えてきます。予防をして、早め早めに対処していくようにしましょう」
イラスト/内藤しなこ 取材・文/山村浩子