早口言葉は楽しく! が大切
人と会話をする、言葉を発する機会が減ると、すぐに言葉が出なくなったり、どんどん滑舌が悪くなります。現代ではインターネットの普及で、何かを伝えるのにもメールが主流。気がつけば、一日誰とも話さなかった…なんていうことがあるのではないでしょうか?
「舌も筋肉ですし、話をするときに使う口まわりの筋肉も、話をせずに動かさなければ衰えます。上手に話せないと、しゃべらなくなり、さらに話せなくなる…という悪循環に陥ることも。やがて人とのコミュニケーション能力が衰退することになりかねません。
私は小学生からシニアまで一般の人にも朗読指導をしています。なんらかの事情でしばらくお休みをしていた生徒さんが復帰すると、以前には読めていたものが上手に読めないことがあります。やはり、舌や口まわりの筋肉は使っていないと衰えるのです。そんな人に『早口言葉』の訓練はとても有効です」(佐藤正文さん)
ポイントはふたつ!
1 早いことが重要ではありません。正しい口の開け方と舌の位置で、はっきり正確に発音すること。
2 文章の内容を理解して、イメージを描きながら発音すること。
「いろいろな早口言葉にチャレンジしていくと、自分の苦手な発音がわかってくると思います。そうしたら、それを何度も何度も繰り返します。すると、やがてスムーズにできるようになりますよ」
かわいい動物をイメージしながらトライ!
【早口言葉】
そそら そらそら ウサギのダンス 難易度★☆☆
どんなウサギを思い浮かべましたか? 白いウサギ? 茶色いウサギ? どんなダンスを踊っているのでしょうか? 情景をイメージしながらトライしてみてください。
「これは歌の歌詞です。音楽にのって踊っているような楽しい内容なので、明るく発音するのがおすすめです。そのためには、口の奥ではなく、できるだけ前のほう、歯や唇でしゃべるようなつもりで、口角を上げて笑顔で発音するのがポイントです。
また、この早口言葉は、サ行をきちんと発音する訓練になります。サ行は上の歯茎と舌の間の隙間を勢いよく息が抜けていくときに出る音です。この隙間が広すぎたり、息が弱いと『しょしょらしょらしょら』というように、舌足らずの小さな子どものような発音になってしまいます」
【早口言葉】
進化(しんか)し続ける猿も 進退(しんたい)きわまりましたとさ 難易度★★☆
「進退きわまる」とは、「進むことも退くこともできず、どうすることもできない状態に陥る」という意味。進化した猿が陥る状況って、何をイメージしましたか? 進化しないほうがよかった?
「『進化し続ける猿も』の『し続ける』は、『することをやめない』という意味です。忘れずに、『し』を確認しながら大切に発音してください。
これもサ行をクリアに発音することが重要です。特に「進化し続ける」が言いにくいのではないでしょうか? 言葉ごとに区切りながら、ゆっくりはっきりと発音してみましょう。徐々に早くしていくといいでしょう」
記事が続きます
【早口言葉】
トドなどと共に 徒党(ととう)を組むのは 難しい 難易度★★★
「徒党を組む」とは、「何かを遂行するために集団を構成する、もしくは、同じ目的を持つものが集まり団結する」さまを意味します。トドと? それは難しいかもしれませんね!
「ナレーターになった気分で気持ちをこめて言ってみましょう。ただしそのとき、気持ちをこめすぎると、根拠のない過剰な抑揚をつける、『うねる』ような読み方になりがちです。本人は満足かもしれませんが、聞く側は少し気持ち悪さを感じてしまうかも。うねる読み方は小学校の音読でよく見かけますが、プロは決してしません。
また、これはタ行をきちんと発音することが大切です。タ行である「タ・テ・ト」は上の歯茎に舌先を押しつけて、息で破裂させるように、勢いよく口を開くときに出す音です。舌の位置を確認しながら、最初はゆっくりと発音してみてください」
意味を考えながら実践すると、楽しくなりませんか? ナレーターになった気分でトライしてみてください。
【教えていただいた方】

1970年、桐朋学園大学演劇専攻科卒業。劇団 俳優座、安部公房スタジオを経て日本大学芸術学部非常勤講師、尚美学園大学客員教授。大手芸能プロダクションで演技レッスンを担当し、多数の俳優を育成。ほか、アマチュア劇団や朗読サー クルなどで、高齢者を含め約5000人を指導。トレーニングのひとつとして「早口言葉」を取り入れている。共著に『「早口ことば」で認知症予防』(ART NEXT)など。
協力/『「早口ことば」で認知症予防』(ART NEXT)
イラスト/midorichan 取材・文/山村浩子
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