手で触るように丁寧に発音して!
年々、歳を重ねるたびに、心身のさまざまな部分に老化を感じてきます。そのひとつに「物忘れ」があります。特に固有名詞が出てこないという声をよく聞きます。
さらに、「スムーズに言葉が出てこない」「滑舌が悪くなった」といったことがあるのではないでしょうか? こうした物忘れや会話力の低下には、「早口言葉」で脳を活性化することが役に立つといいます。
脳と早口言葉の関係については第1回参照。
「特に年齢を重ねると苦手になる言葉に、『ナナナナ』や『ママママ』といった『同じ音が続く』ものがあります。例えば、『77番』を『ナナナナ番』と言えずに、『ナアナア番』と音同士がくっついてしまいがちです。
このように同じ音が続く場合には、一音一音はっきり発音することが大切になります。こうして確かめながら読むことを、私たち言葉のプロは音を触ると表現します。
手で触って確かめるように発音するという意味で、『音を触るように読むことが大切』と表現します。音は手や足で触ることはできません。そう、頭の中で触るのです。つまり、頭の中でしっかり意識して大切に扱ってあげるのです」(佐藤正文さん)
「音を触るように読む」って、ちょっと素敵ですよね!
こうして同じ音が続く言葉を丁寧に発音していくと、口まわりや舌の筋肉が鍛えられて、滑舌アップに効果絶大だといいます。特に今回は、ほほえましい親子関係を表した早口言葉を集めました。
ほっこりする親子を思い浮かべながらトライ!
あなたの親子関係はいかがでしょうか? 良好という人も、ちょっと険悪という人も、子どもが小さかった頃のこと、年老いた親が若かった頃のことを思い出して、ナレーターになったつもりで読んでみて!
【早口言葉】

ママも 今のまま 娘を見守る 難易度★☆☆
いくつになっても子どもは子ども。常に心配しているのが母心!? でも口を出さずに「見守る」ことも大切ですね。
「この早口言葉では、母の意味の「ママ」と「今のまま」はアクセントが違います。「ママ」はひとつめの「マ」にアクセントがあるので、最初のマが高く強い音になり、ふたつめのマは高くも強くもなく平らです。
今のままの「まま」は、もともと平板で「今の」とつながっても平板です。つまり高くも強くもなく平らになります。そんなところも意識して発音してみてください。
そして、『ママも』が『マアも』にならないように。『見守る』も前に『娘を』がくると発音しにくいので、そんなところを注意してトライしてみてください」
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【早口言葉】
母(はは)の頬(ほほ)に 微笑み(ほほえみ)を 見た 難易度★★☆
いつでも家族には笑顔でいてほしいものです。特に最近、「笑ってないな」という人は、この早口言葉を、口角を上げて言ってみてください! 楽しい気分になるかも。
「『はは』と『ほほ』、微笑みの『ほほ』を発音するときに、『はあ』、『ほお』にならないように気をつけてください。軽く腹筋を使うと、はっきり発音しやすくなります。また、ハ行は、比較的たくさんの息が必要な音です。息をケチらずたっぷりな息で発音しましょう」
【早口言葉】
ナナの 電話番号は 070(ゼロナナゼロ)の777の 7777番 難易度★★★
この「ナナ」の連続はかなりきついですね~! かなり口(あご)をしっかり開閉して、舌をフル回転しないと発音できない感じです。
「ナ行の発音は、いったん、舌先を上の歯茎につけて、離しながら口を開けて発音します。『通鼻音(つうびおん)』といい、息を鼻に抜くような感じで発音するのが特徴です。
何度も言っていると『ナンナンナン』になりがちですが、はっきり、きっぱり、歯切れよく発音するようにしましょう」
【教えていただいた方】

1970年、桐朋学園大学演劇専攻科卒業。劇団 俳優座、安部公房スタジオを経て日本大学芸術学部非常勤講師、尚美学園大学客員教授。大手芸能プロダクションで演技レッスンを担当し、多数の俳優を育成。ほか、アマチュア劇団や朗読サー クルなどで、高齢者を含め約5000人を指導。トレーニングのひとつとして「早口言葉」を取り入れている。共著に『「早口ことば」で認知症予防』(ART NEXT)など。
協力/『「早口ことば」で認知症予防』(ART NEXT)

イラスト/midorichan 取材・文/山村浩子


