舌と口まわりの筋肉を柔軟にしておくことが大切
「通常、呼吸は鼻で行います。鼻を通るときに空気は加温され、鼻毛や繊毛がほこりや細菌、ウイルスといった異物をキャッチします。粘液を分泌したり、免疫が発動して、外部からの異物の侵入を最小限に抑える機能を備えています。
一方、口は通常、食べ物を運ぶ場所なので、こうした機能がありません。口呼吸は上咽頭にとっては過酷な状況といえます。そのため、口呼吸が習慣になっている人は、まずこれをやめることが、慢性上咽頭炎を悪化させない方法といえます。
慢性上咽頭炎を悪化させる要因については第2回参照。
注目すべきは舌の位置です。口を閉じて普通にしているときは、舌の先は歯にはつかず、上あごに当たっているのが正常です。しかし、口呼吸が習慣になっている人は、舌が低位置となり、舌の先が下前歯について、かつ舌の位置が後ろに下がっているケースが多く見られます。
舌の位置により、気道の広さが変わります。舌先を上あごにつけると気道が広くなり鼻呼吸がしやすくなるのです。
また、口呼吸が習慣化している人は、常に口をポカンと開けていることがあります。口元をしっかり締めるためには、口まわりの筋肉を柔軟にして、鍛えておく必要があります」(堀田修先生)
「かっ、に~、ゆ~、で~」と発音することで、舌と口輪筋が鍛えられる!
普段の生活で、舌と口まわりの筋肉(口輪筋)をしっかり使っていますか? これらの筋肉も、年齢とともに衰えていきます。意識して動かすことが大切!
それには次の体操がおすすめです。
【かにゆで体操のやり方】

【1】「かっ」:舌先を上あごのへこみに押しつけて、強く「かっ」と声を出します。
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【2】「に~」:口を思い切り横に広げて「に~」と発音します。

【3】「ゆ~」:唇をつぼめて、突き出すようにして「ゆ~」と発音します。

【4】「で~」:少し上を向いて下あごを突き出しながら、舌先を上に向かって突き出し、鼻につけるようなイメージで、「で~」と発音します。
「特に『かっ』と『で~』が重要で、しっかり舌を動かすように心がけてください。この一連の発音を、5~10回繰り返します。
舌や口をしっかり動かす習慣をつけることで、舌が正しい位置(舌先が上あごのへこみについた状態)に収まり、鼻呼吸がしやすくなります。それだけでなく、頬のたるみ予防や嚥下(えんげ・飲み下し)を助け、誤嚥性肺炎の予防にも役立ちます」
【教えていただいた方】

防衛医科大学校卒業。2011年に仙台市にて、医療法人モクシン堀田修クリニックを開業。認定NPO法人日本病巣疾患研究会理事長。IgA腎症・根治治療ネットワーク代表。日本腎臓学会功労会員。2001年、IgA腎症が早期の段階であれば扁摘パルス療法により根治治療が見込めることを米国医学雑誌「AJKD」に報告。その後は同治療の普及活動と臨床データの集積を続ける。また、扁桃、上咽頭、歯などの病巣感染(炎症)が引き起こすさまざまな疾患の臨床と研究を行う。監修本『慢性上咽頭炎を治せば不調が消える』(扶桑社)など。ほかに著書多数。
イラスト/green K 取材・文/山村浩子


