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レントゲンではわからない「変形性股関節症」に要注意!

姿勢の悪さ、長時間の立ち放し・座りっ放し、運動不足、スポーツのやりすぎなどで、股関節に違和感や痛みが生じることがあります。その痛みの中で最も多いのが「変形性股関節症」だといいます。それはどのような病態でどんなことに気をつけたらいいのでしょうか? 整形外科医で股関節の専門医である高平尚伸先生に伺いました。

40代で軟骨のすり減りはすでに進んでいるかもしれない!

股関節の痛みを招く、最も多い原因である変形性股関節症とはどんな疾患なのでしょうか。

 

「股関節は、骨盤にお椀のような形の寛骨臼(かんこつきゅう)があり、そこに球状をした大腿骨の先端である大腿骨頭がはまり込んだ形状をしています。

 

股関節の構造、機能については第1回参照。

 

寛骨臼と大腿骨頭の間には関節軟骨があり、体を支えたり動かすときにかかる荷重のクッション役を果たしています。この軟骨がすり減ってしまうのが変形性股関節症です。

 

軟骨のすり減りはある日突然起こるのではなく、月日をかけて少しずつゆっくりと進行します。原因は加齢、肥満、股関節に負担がかかる生活やスポーツ習慣などです」(高平尚伸先生)

 

【変形性股関節症】

股関節 変形性股関節症 進行図 イラスト

〇初期
X線画像で見ると、軟骨が薄くなり、寛骨臼と大腿骨頭の隙間が部分的に狭くなっているのが確認できます。個人差はありますが、痛みを感じることが増えてきます。

 

〇進行期
軟骨のすり減りが進み、骨の一部がぶつかることで「骨棘(こっきょく)」という棘(とげ)のようなものができたり、骨の一部が吸収されて空洞が生じることも。痛みも増します。

 

〇末期
軟骨が完全になくなり、骨の変形が進行して強い痛みを感じます。やがて関節が動かなくなると、痛みを感じなくなります。

 

 

変形性股関節症が進行すると、腰や膝にも影響が広がり、歩行が難しくなります。転倒や骨折のリスクが高まり、寝たきりの大きな原因に!

 

記事が続きます

レントゲンに写らないケースに要注意!

中には、確かに股関節が痛いのに、レントゲン撮影をしても軟骨のすり減りが確認できないケースがあります。それはどうして?

 

「最近わかったことなのですが、寛骨臼をマフラーのように覆っている股関節唇(こかんせつしん)という軟骨組織が原因であることがわかりました。股関節唇は大腿骨頭と接する面積を増やし、関節を吸着させることで、股関節を支える役割を果たしています。

 

この股関節唇が損傷することでも痛みが生じます。これが股関節唇損傷という病態です。しかしながら股関節唇はレントゲンには写らないので損傷がわからず、それ以外の軟骨は残っているので、寛骨臼と大腿骨頭の間には隙間が確認されます。そのため『異常が認められない』と判断されてしまうのです。

 

また、最近注目されている病態が大腿骨寛骨臼インピンジメントです。インピンジメントとは『衝突・ぶつかる』という意味。寛骨臼や大腿骨の形の異常が主な原因となり、骨同士がぶつかることで痛みが生じます。

 

寛骨臼側が大腿骨頭に対して大きい場合がピンサータイプ。逆に大腿骨頭側のほうが大きい場合をカムタイプといいます。もともとこうした形成異常があるところに、股関節の過度な動きが繰り返されることで、関節軟骨や関節唇が損傷してしまうのです。

 

こうした股関節の損傷も含めた総称が変形性股関節症です。

 

治療はいずれも、まずは日常生活での動作指導などによる環境改善、痛みを軽減する薬物療法リハビリテーション(理学療法やセルフケア)が行われます。炎症を抑えるステロイド剤や関節の動きをスムーズにするヒアルロン酸などを患部に注射することもあります。

 

これらで痛みが軽減しない場合には、最終的に手術療法が行われます。痛みの原因になっている骨を切って動かして整える骨切り術、人工物と置き換える人工股関節置換術などです。

 

最近は股関節鏡を使用して、ごくわずかな切開ですむ股関節鏡視下手術も行われており、体への負担を最小限にすることができます」

 

【変形性股関節症の主な症状】

初期
〇動き出すときに股関節が痛む
〇足を動かすとゴリッと音がして股関節が痛む
〇痛みがあるため股関節が動かしづらいことがある
〇股関節の痛みのために力が入りにくいことがある
〇お尻や太もも、膝にこわばりや痛みがある
〇長時間の歩行や運動後などに脚の付け根に痛みを感じる

 

進行期
〇椅子に座っているときに股関節に痛みがある
〇階段を上り下りすることが困難である
〇床や畳から立ち上がることが困難である
〇バスや車への乗り降りが困難である
〇しゃがみ込むことが困難である
〇和式トイレの使用が困難である
〇浴槽の出入りが困難である
〇足の爪切りや靴下を履くことが困難である

 

末期
〇安静にしていても股関節が痛くて苦痛である
〇股関節の痛みのためよく眠れない日がある
〇お尻や太ももが痩せ細ってきた
〇脚を広げると激痛が走る
〇脚の付け根を真っすぐ伸ばせない
〇左右の脚の長さが異なる
〇体を左右に揺らして足を引きずるように歩く

 

これらの症状はあくまで目安です。股関節に異常を感じたら、整形外科の受診をおすすめします。

 

 

【教えていただいた方】

高平尚伸
高平尚伸さん
日本整形外科学会専門医、医学博士
公式サイトを見る

北里大学大学院 医療系研究科整形外科学教授。日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本リウマチ学会認定専門医および指導医、日本人工関節学会認定医。専門は股関節で、最小侵襲手術 (MIS)、運動器リハビリテーション、スポーツ医学に精通。著書に『股関節痛 こわばり・ だるさ・ 脚長差 自力で克服! 名医が教える最新1分体操大全』(文響社)など多数。 股関節ケア 高平先生 書影

 

 

イラスト/green K 取材・文/山村浩子

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