脚を前に上げて痛む人は筋膜のフロントラインが拘縮している
あなたは股関節をどのように動かすと違和感や痛みがありますか?
その動きのタイプによって、効果的なストレッチ方法が違います。
「どのような動きで股関節が痛むか は次のようなものが挙げられます。
膝を曲げて脚を前に上げると痛む①屈曲困難型、脚を後ろに伸ばすと痛む②伸展困難型、あぐらをかくポーズで痛む③外旋困難型、ぺたんこ座り(女の子座り)で痛む④内旋困難型などです。
この回では、①の屈曲困難型の人にフォーカス。 膝を曲げて脚を前に上げる、もしくはあお向けになって膝を抱えて胸に引き寄せるポーズをとると違和感や痛みがある人です。
こうしたタイプの人は、腿骨寛骨臼インピンジメントや軽度の変形性股関節症が原因のことが多く、主に筋膜ラインのフロントラインが拘縮している場合があります。そんなタイプにおすすめなのが、『とんがりストレッチ』です」(高平尚伸先生)
※大腿骨寛骨臼インピジンメントや軽度の変形性股関節症については第2回参照。
※筋膜ラインについては第3回参照。
「とんがりストレッチ」でフロントラインの拘縮を緩める!
「とんがりストレッチ」は左右の脚を前後に大きく広げ、両手を頭の上で合わせ、前に出した脚の膝を曲げるポーズをとります。
これは主に筋膜ラインのフロントラインの拘縮を緩めるのに役立ち、痛みの予防や軽減、病態の進行を抑えることが期待できます。
【とんがりストレッチ】
【1】 背すじを伸ばして立つ

両足を肩幅に開き、背すじを伸ばして立ち、顔は正面を向きます。
【2】片脚を踏み出し、両手のひらを合わせる

左脚をできるだけ大きく前に踏み出し、両手のひらを頭の上で合わせます。背すじと腕をピンと上に向けて伸ばします。
【3】 踏み出した脚を曲げる

踏み出した脚の膝を曲げて、腰を落とし、顔を斜め上に向けます。膝と股関節それぞれを90度近くまで曲げ、後ろ脚の膝はあまり曲げないようにします(少し曲がってもOK)。
首から胸、お腹、後ろ脚の付け根から太ももへとつながるフロントラインが気持ちよく伸びるのを感じます。この状態で20秒キープします。
脚を替え、今度は右脚を前に出して同様に。左右で1セットとして、1日2~3セットを目安に行います。
記事が続きます
【POINT】
前に出した膝は、できるだけつま先より前に出さないようにします。バランスがとりにくい人はできる範囲でOK。股関節や膝が痛む場合は、踏み出す距離や曲げる角度に工夫して、無理をしない範囲で行いましょう。強く痛む人は中止してください。
「このストレッチは全身が伸びるので、股関節痛以外にも、猫背の解消、肩こり、腰痛の予防にも役立ちます。朝起きたときや夜寝る前などに、一日の習慣にするといいでしょう」
【ストレッチの5つの注意点】
〇硬い関節を無理に伸ばさない
各関節には可動域があり、個人差もあります。無理やり伸ばすと思わぬ痛みを発症することがあります。
〇呼吸を止めない
呼吸を止めると筋肉が硬くなり、ストレッチ効果が薄れます。自然な呼吸をしながら行いましょう。
〇強く反動をつけない
小さな動きから始めていくことが大切です。反動をつけると関節に無理な負荷のかかることがあるので注意が必要です。
〇いきなり行わない
体が冷えた状態だと関節がうまく動きません。あらかじめ体を軽く動かして、筋肉を温めておくことが大切。お風呂上がりに行うのもよいでしょう。
〇やりすぎない
やりすぎると筋肉や関節を痛めることがあります。決められた回数やタイミングを守って、無理のない範囲で行うことがとても大切です。痛みを感じたときには中止してください。
【教えていただいた方】

北里大学大学院 医療系研究科整形外科学教授。日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本リウマチ学会認定専門医および指導医、日本人工関節学会認定医。専門は股関節で、最小侵襲手術 (MIS)、運動器リハビリテーション、スポーツ医学に精通。著書に『股関節痛 こわばり・ だるさ・ 脚長差 自力で克服! 名医が教える最新1分体操大全』(文響社)など多数。

イラスト/green K 取材・文/山村浩子


