股関節痛を引き起こす意外な生活習慣
「例えば、仕事や買い物などで重い荷物を持ったり、肩に掛けていませんか?
これは肩や腕だけでなく、股関節にも大きな負担がかかっています。赤ちゃんを抱っこする姿勢なども同様です。特に筋力に自信がない人は、キャリーバッグやベビーカーを上手に利用することを習慣にしてください。
さらに、不意な動きにも注意が必要です。
電車やバスなどで立っているとき、急に揺れたりすると、バランスをとるために無理な姿勢で踏ん張ることがあります。
そして、結構多いのが犬の散歩です。犬が急に思いがけない方向に引っ張ったり、突然走り出すなどすると、股関節をひねるなど、予期せぬ力がかかることがあります。
また、スポーツもやりすぎると股関節に負担がかかり、逆に運動不足の人も股関節が衰えて痛みの原因になります。
特に、デスクワークや車の運転などで、長時間同じ姿勢を続けていると、筋肉や筋膜ラインが拘縮し、股関節をスムーズに動かす関節包内の滑液も滞ります。この状態で突然動き出すと動作時痛を起こすことがよくあります。
そんな場合は、動き出すときに意識して動作をゆっくりしたり、事前に簡単なストレッチをしてから動くようにします」(高平尚伸先生)
座り姿勢から立ち上がるときにおすすめのストレッチは、座ったままで行う「パカパカ体操」です。
【パカパカ体操のやり方】
椅子に座った状態で、「膝を閉じる↔左右に開く」という動作をゆっくり行います。これを30秒~1分ほど繰り返します。
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日常生活の動き、これはNG!
上記のほかにも、股関節に負担のかかる日常動作があります。
〇股関節が深く曲がる姿勢を避ける
「腰が沈み込むソファ、低い椅子や車の座席などに座り、股関節が90度以上深く曲がる姿勢は避けてください。
体育座りもNGです。椅子が低い場合などは、クッションなどで調節をしてください。
股関節への負担を軽減するためには、寝具は床に布団を敷くよりもベッドを、食卓はちゃぶ台より椅子とテーブルを、トイレは和式より洋式を選ぶといいでしょう」
〇椅子から立ち上がるときは一度浅く座ってから!
「椅子から立ち上がるときは、そのまま無理な姿勢で脚だけの力で立たず、まず手をついて浅く座り直してから、ゆっくり立つようにします」
〇階段の上り下りは痛む脚の動きに注意!
「階段では手すりを使い、1段ずつ上り下りするのが基本です。上がるときは痛みや違和感のないほうの脚から、下りるときは痛みや違和感のある脚を先に出します」
〇車の乗り降りには、手で脚を支えて

「よく車に乗り込むのに、頭から入ろうとする人がいますが、これはNG! 乗るときには、まず脚を外に残したまま座席にお尻を乗せ、両手で膝裏あたりを支えながら、体を回しながら片脚ずつ社内に運びます。降りるときはその逆を行います。
後部座席でドアよりも遠いほうの座席に座るときにも、上のように乗り込んでから、両手で体を支えながら横にスライドしていくといいと思います」
〇入浴時は手すりや椅子を利用する
「お風呂タイムでは、しゃがむ、かがむ、またぐといった股関節に負担がかかる動作が多いので、特に注意が必要です。浴槽に入るときは、浴室の壁や浴槽の縁につかまってゆっくりと入ることを心がけてください。できたら手すりを取りつけるのがベスト。
また、またぐ動作がつらい場合は、一度浴槽の縁に座り、片足ずつゆっくり入れるようにします。髪や体を洗うときには、少し高めのバスチェア(風呂椅子)を選ぶといいでしょう」
小さなことですが、毎日積み重なるとその負担は侮れません。こうした動きを習慣にすることで、いつまでも股関節の健康を維持していきたいですね。
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【教えていただいた方】

北里大学大学院 医療系研究科整形外科学教授。日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本リウマチ学会認定専門医および指導医、日本人工関節学会認定医。専門は股関節で、最小侵襲手術 (MIS)、運動器リハビリテーション、スポーツ医学に精通。著書に『股関節痛 こわばり・ だるさ・ 脚長差 自力で克服! 名医が教える最新1分体操大全』(文響社)など多数。

イラスト/green K 取材・文/山村浩子


