
医学博士、日本整形外科学会専門医。東海大学医学部卒業後、慶應義塾大学医学部整形外科学教室入局。骨粗しょう症の治療と予防に力を入れており、骨密度を調べるためのDEXA(腰椎、大腿骨)で骨の状態を詳しく調べ、早期発見に導いている。
【測ってもらった人】

ライター・イオちゃん
フリーランスで編集・ライター・出版プロデュースなどを行う50代。「50代、30代TikToker女子にメイクを学んで大変身」の連載がキッカケで、昭和メイク→今どきメイクのコツに目覚め、自分の美と健康に向き合い始める。
骨密度を正確に測る測定…それはDEXA法!
子育てや仕事に追われ、人間ドックも後回しにしてきた私がやってきたのは…ここ、神保町整形外科です。

以前、骨粗しょう症の取材をしたときに、正確な値を測るのは「腰椎と大腿骨の値を見ること」と知った私。で、その測定方法を行っている病院を探しました! その測定方法とは、DEXA法なるもの。はたして、どんな機械で行うのでしょうか…。

これがDEXA法測定の機械!
通常の検診や人間ドックでは、踵骨(しょうこつ/かかとの骨)・橈骨(とうこつ/前腕の2本の骨のうちのひとつで、親指側に位置)・中手骨(ちゅうしゅこつ/手のひらの中心部にある五本の細い骨)で測る簡易法(超音波・MD法)。いわゆるスクリーニング結果で、治療効果の追跡には不向きなのだそうです(ご存じでしたか?)。
板倉先生いわく、「かかとの超音波や手のMD法に比べて、変化を敏感に反映しやすいのがDEXA法の特徴」だそう。「かかとや手の骨は、骨粗しょう症で折れる部位ではありません。腰椎や大腿骨で測るほうが、実際の生活リスクに直結します」とのことで、思わずナットク!
イオ:つまり、正しく測るには整形外科で、かつDEXA法測定の機械が置いてあるところに行かなければけない、というわけですね!
板倉(以下同):そのとおりです。

横たわるだけで、特に痛みはないものの…。不安半分、期待半分で、早速、検査台に横になりました。ウィーンという音とともに、体をスキャンされているような気分です。
検査結果は…?
イオ:今、59歳なんですが、本当は何歳くらいで測ればいいのでしょうか?
板倉:骨粗しょう症は閉経とともに始まります。女性ホルモンが減ることで骨量も減少するので、閉経後3年くらいを目安に一度は測定してほしいですね。その後は数年おきで十分ですが、要注意ゾーンに入ったら半年ごとにチェックすることもあります。
多くの人が、あまり知らないその事実!
さて、出てきた数字を見ると…
・腰椎:1.126g/cm²
→ 若い人と比べて98%、同年代比122%
・大腿骨:0.840g/cm²
→ 若い人と比べて87%、同年代比101%
板倉:特に腰椎の値が、めちゃくちゃいいですね!(笑)
イオ:この連載、私の健康優良児っぷりを見せつけているようで…恐縮です…。

グリーンのゾーンにある点が、私の腰椎(左)と大腿骨(右)、それぞれの骨密度です。特に腰椎は、20代〜30代の人との比較で98%、同年代比では122%!
板倉:ほとんどの方は、「95%以上がこの幅に入ります」っていうところの、さらに上にいるんです。めっちゃいいですよ。
イオ:いやぁ〜。えへへ(笑)。
でも、安心しきれない理由がアリ!
板倉:ただ、頸部が80%なんですよね。
イオ:頸部って、どこですか?
板倉:いわゆる太ももの付け根の骨です。

板倉:頸部骨折の原因となる頸部です。そこの値が平均87のところ、80。今は数値がいいので大丈夫なのですが、1年後に頸部がどうなっているかを測って、値の変化を見てください。これが「頸部75%でした」となると、検査のペースだったり、食事の見直しだったり、骨密度を高めていく必要があるんです。
イオ:そうなんだ〜。今がいいからといって、油断は禁物ですね!
そして、「腰椎は海綿骨、大腿骨は皮質骨といって、性質が違うんです」と先生。海綿骨は代謝が早く、50代から急に密度が落ちやすい部分。「一方、皮質骨はゆっくり減っていくけれど、折れると生活に大きな影響が出ます。だから両方測ることで、将来のリスクが見えるんです」とのこと。
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母を思い出して…
閉経後の女性は特に骨密度が下がりやすく、70代以降は転倒から骨折→寝たきり、というリスクも高まるのだとか。
「女性の場合は、特に母方の骨折歴が参考になります」と、先生。
イオ:結果を見ながら、ふと母のことを思いました。70代以降、大腿骨骨折や圧迫骨折などは一度もなく、骨のトラブルといえば、足の小指をちょっとぶつけて折った程度です。
板倉:それはいいことですね。足の小指をぶつけて折れた、という程度は、若い人でもよくあることです。
イオ:普段は忘れていましたが…。「丈夫に産んでくれて、ありがとう」という気持ちです…。
母のように、年齢を重ねても元気に歩ける自分でありたい。そのためには、検査で安心して終わりではなく、生活習慣を見直すことが大事だと改めて感じました。
食生活で大切なこと
先生によると、最終的に骨密度を決めるのはやはりカルシウム!
板倉:でも、カルシウムが体に入るためには、食事からとって、ビタミンDで吸収しやすい形にしてあげる必要があります。ビタミンDは日光を浴びることで活性化されて、体の中に取り込まれます。そして歩いたり走ったりして、“負荷”をかけることで、骨に刺激が入る。宇宙飛行士は、無重力で骨密度が下がってしまうんですよ。
イオ:なるほど…! 食べる・浴びる・動く、すべてがつながっているんですね。具体的な食材はどうですか?
先生:ビタミンDは鮭やマグロ、魚全般やきのこ類に多いです。あとは青菜や納豆も“骨の質”を変えていきます。毎日必ず食べなきゃ、というよりは週単位で、「今週は青菜を多めにしよう」とか、「今日はきのこを足してみよう」といった気持ちで続けるのがいいと思います。
毎日きっちり、ではなく“ゆるく続ける”というアドバイスにホッとしました。これなら私にもできそう!
また、「足腰が弱い方は、古典的には“かかと落とし”なんて方法もありますが、イオさんのご年齢ならもっと積極的に。ウォーキングやジョギングで、骨にどんどん刺激をあげてください」というアドバイスもいただきました!

イケメンで明るい板倉先生。
記事が続きます食生活の課題も、見つめ直したい
正直に打ち明けると、朝はパンとコーヒーだけですませる日も多い私。カルシウムやビタミンDどころか、タンパク質も不足している気がします…。
でも、先生の言葉に背中を押されて、「今週は魚を1回増やしてみよう」「スーパーでしめじを買って帰ろう」というくらいならできそうだと思いました。
「骨は見えないからこそ、測ってみると安心にも課題にもつながる」。そんな実感を得た今回の検査。
健康優良児的な結果にホッとしたのもつかの間、「この値を1年後も落とさずにキープするには?」という新しい目標ができました。
骨の健康は“一発勝負”ではなく、日々の積み重ね。母がくれた丈夫な骨を次の世代に引き継げるように、これからは食べること・動くことを、少しずつでも丁寧に続けていきたいと思います!
撮影/藤澤由加 取材・文/井尾淳子


