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「寝ても疲れが取れない」のは「睡眠力」の衰えかも! ぐっすり眠って眠りの質を上げるには?

「新しい生活様式」を明るく前向きに送るための、読んでトクする連載。今回は、これから寒くなる季節。大事にしておきたい「睡眠力」についてです!

40~50代は社会でも家庭でも責任のある立場になる機会が多く、家事や育児、親の介護などやることが盛りだくさん。忙しくて、どうしても自分のコンディションを整えることが後回しになりがちですよね。

 

そんなOurAge世代が効率上手に眠ることに着目して体と心の調子を整える方法について、睡眠専門医の柳原万里子先生におうかがいしました。

 

◆気持ちよく深く眠るための「睡眠力」は、年齢とともに衰えていく!

 

「“睡眠力”という医学用語はありませんが、睡眠力とは快眠する、もしくは効率よく寝るための力と考えてください。この力は、加齢とともに低下することが知られています」(柳原先生)。

 

”睡眠力”は、年齢とともに衰えていってしまうそう。同じ時間ベッドで横になっていても、赤ちゃんと比べて大人は実際に脳や体が休息をとっている時間が減ってしまうのだとか! それがわかるのが、下の図です(Ohayon et al. Sleep 2004;27(7):1255-73.より引用・改変)。

 

睡眠の図

 

オレンジと赤が布団の中で起きている時間、水色や青が寝ている時間です。赤ちゃんの頃に比べて、年齢とともに起きている時間の割合が増え、寝ている時間の割合が減っているのがわかりますね。年齢とともに、きちんと寝られている時間がこれほど少なくなっていくなんて、ショックです・・・。

 

「睡眠をF1レースに例えるとします。レースで勝つためには、車の性能の良さとピットインした時にいかに効率よくメンテナンスを受けられるかが重要です。レース中の車は覚醒時の私たち、ピットでメンテナンスを受けている時間は私たちの睡眠時間と考えるといいと思います」と柳原先生。

 

「この年齢になると、私たちも新車ではないし、メンテナンスのスタッフも年をとってきます。車がピットインしてスタッフが駆け寄ろうとしても足元がもたつく、老眼で細かい数字がよく見えない…。そうイメージすると、加齢とともに効率良くメンテナンスができなくなってくる、すなわち睡眠の効率(=睡眠力)が落ちていくことが伝わりやすいかもしれません。」(柳原先生)

 

新車の頃は車の性能もいいし、ピットインのスタッフも若くててきぱきメンテナンスしてくれるけれど、年とともに車も中古になり、ピットインのスタッフももたもたしてメンテナンスの腕が落ちる。そうイメージすると、先ほどの図の加齢による睡眠の変化ってこういうことなんだ、というのがわかりやすいですね。

 

ところで、睡眠中に私たちが受けているメンテナンスとはどういうものなのでしょうか。

◆質のいい睡眠をとるメリットは無限大!

 

睡眠をとることにより、私たちは次の3つのメンテナンスを受けています。

 

●体のメンテナンス(健康な体を作る)

●脳のメンテナンス(頭の回転や記憶を良くする)

●心のメンテナンス(メンタルを安定させる)

 

「睡眠によりメンテナンスが正常に機能すると情緒が安定し、日中のパフォーマンスが向上し、健康美が目指せます。現在から将来に向けて、自分も周囲も幸せに生きていくためにはこの3つのメンテナンスはとても大事。ご自分のことを後回しにしすぎずに、必要な睡眠を効率よくとる工夫をし、色々なことが起きる中でも出来るだけ幸せに過ごしましょう」(柳原先生)。

 

質のいい睡眠が取れていれば、具体的には、次のような嬉しい影響が出てきます。

☑日中に倦怠感や眠気がない

☑頭の回転が速く日中の判断力や集中力が上がる

☑機嫌良く過ごせる

☑体調が良く風邪をひきにくい

☑肌つやが良い

 

忙しい毎日を過ごす私たちこそ、本当はしっかり眠って日中はてきぱき動きたいところですね。では、良い睡眠をとるために、私たちはどうしたらいいのでしょうか。

◆ぐっすり眠るためにしたいこと

 

自分ではちゃんと寝ているつもりでも、睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害となる病気がある場合は、寝ても寝足りず疲れが取れない状態になりがちです。また、特にそういった病気がなくても、寝室の環境や運動不足などでよく寝られないことも。スマートフォンを眠る直前まで見ていることの睡眠への影響はよく言われていますが、それ以外で、ぐっすり眠るためにできることを教えていただきました。

 

【1】必要な睡眠時間を確保する

世界の中でも寝不足大国として有名な日本ですが、その日本の中でも40~50代女性がどの年代の男女と比べても一番睡眠時間が短いのだそう。「米国のNational Sleep Foundationの2015年の報告によると、OurAge世代の40~50代の方に推奨される睡眠時間は、7~9時間。6時間未満はアウトです」(柳原先生)。世界の人々はそんなにしっかり寝ているんだと驚きましたが、「6時間未満は動物としてはアウトな領域」と先生にうかがって衝撃でした…。忙しいと自由時間が夜中しかなく、つい夜更かしをして気分転換しがちですが、リベンジ夜更かしはほどほどにしておきましょう。

 

【2】毎日規則正しく寝起きする

「例えば勤務などの都合により毎日遅寝遅起きにしかできない場合でも、規則正しく必要な睡眠時間を確保することが良い睡眠をとるために大切です」(柳原先生)。よく言われるお肌のゴールデンタイムに合わせる必要はなく、遅寝遅起きなりに規則正しく睡眠時間を固定することが大切だそうです。

 

【3】頭と体をバランスよく疲れさせる

「ヒトには脳と体の疲れをためて、疲れた勢いで寝るという仕組みがあります。ところが、在宅勤務の影響などによる運動不足で身体の疲れが減ってしまい、その一方で頭の疲れやストレスが多いと、疲れて眠いのに変に目が冴えて考えごとをしてしまう…ということが起きがちです」(柳原先生)。日中の活動量を増やして、心身ともに、ほどよく疲れさせましょう。また、リフレッシュするための仮眠は15時までの30分以内に留めて。

 

【4】寝る前にはリラックスを心がける

「ベッドに入ってから考えごとをしたり、うまく寝れないからと頑張って寝ようとするのは逆効果。寝る前はできるだけリラックスできるよう、ストレッチやお気に入りの音楽、アロマなどを取り入れていきましょう」(柳原先生)。

 

【5】睡眠をサポートする栄養成分を取り入れる

「昨今では、脳腸相関に着目した睡眠に良いとされる乳酸菌やリラックス効果が期待されるポリフェノール類、アミノ酸などを含む食品が睡眠に役立つとして注目されています。ただ、実は内臓にとって食べ物を消化・吸収することは負担の大きな活動です。睡眠中は内臓も休めたいため、いくら睡眠に良い食材であっても就寝前に大量に飲食することは避ける必要があります」(柳原先生)。就寝前にはサプリメントや嗜好品などの形で内臓に負担をかけないよう少量を効率よく摂ることを心がけましょう。


〈編集部のおすすめ栄養成分〉

●GABA

リラックスに関わる成分として、体内にも存在するアミノ酸の一種です。身体の中で、神経伝達物質として働きます。興奮した精神を落ち着かせたり、ストレスを緩和したりする働きが研究によってわかっており、睡眠の質を高める効果が期待できます。

 

●ハーブティー

自分が好きな香りのハーブティーを寝る前に飲むと、リラックス効果があるほか、入眠儀式にもなります。特に、ラフマは古くから精神を癒す生薬として知られ、睡眠に効果があるとされているので、香りや味が好みなら試してみても。

 

●はちみつ

ビタミン、ミネラル、アミノ酸を豊富に含み、天然のリラックス素材としても注目されています。中でもアカシアはちみつが睡眠にいい影響があるという報告が。日本で買えるはちみつの多くはアカシアはちみつなので、買いやすいのも魅力。

 

これらを効率よく摂るには、サプリを活用するのも一つの手です。例えばこちらはGABA、ラフマ、はちみつを含むもの。国産はちみつや天然ハーブのラフマ、大麦由来GABAなど厳選した天然由来の成分を配合し、安心して続けられます。

 

グッスリ―P商品画像

グッスリ―P 30粒 2,268円(山田養蜂場)


【6】寝室の環境を整える

「良い睡眠のためには、寝室は居心地がよく安心できる環境が理想的です。そのためには適した温度・湿度のほか、静かさや適度な暗さになるように整えましょう。室温は冬は16~19℃、夏は24~25℃くらいが目安。湿度は50%前後がいいでしょう。暗さの目安としては、天井の明かりなら豆電球程度までが良いとされています」(柳原先生)。真っ暗だと眠れない人は、直接まぶたに光が当たらない位置に間接照明を。柳原先生は、ベッドより低い高さにフットライトをつけているそうなので、そういったものを活用してもいいかもしれませんね。

 

【7】上手に体温を調節する

「睡眠中は体の表面から体温を逃し、体の奥の体温を下げています。上手に眠るためには、体の内側に熱をこもらせないよう、工夫することも役立ちます」(柳原先生)。就寝直前には体温が上がるような熱いお風呂や激しい運動は避けましょう。ぬるめの入浴の湯温の目安は38〜40度で20〜30分が目安とのこと。汗の蒸発を妨げない寝具やパジャマもおすすめです。これからの寒い季節、冷え性の方は湯たんぽや靴下を上手に使って手足を温め、手足の表面から熱が放出されやすいようにするのも良いそうです。

 

「睡眠の質が低下する原因は加齢に伴う生理的な”睡眠力”の低下だけではありません。不眠症や眠りを妨げるような他の睡眠障害、例えば睡眠時無呼吸症候群や周期性四肢運動障害などが隠れている場合があります。40〜50代は不調があってもついつい年齢や疲れ、更年期のせいにしてしまいがち。眠っている間のことは自分ではわかりません。ご自分でできる工夫をしてみても日中の不調が続く場合には、睡眠外来を受診してみましょう。」(柳原先生)。

 

眠りの質が気になる方は、日常でできることから始めてみてはいかがでしょうか?

 

お話を聞いたのは

柳原万里子
柳原万里子さん
医学博士・日本睡眠学会睡眠専門医
公式サイトを見る

女性ならではの細やかな視点で睡眠障害全般について診療と臨床研究を行なっている。睡眠総合ケアクリニック代々木、東京医科大学睡眠学講座、公益財団法人神経研究所睡眠研究室に所属。2022年11月15日に「眠りと咳のクリニック虎ノ門」を新規開院。

 

◆資料提供/山田養蜂場

 

取材・文/倉澤真由美

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