更年期の不調解消のため、様々な方法にチャレンジしてきた作家・横森理香。
閉経前後の挑戦体験を描いた『コーネンキなんてこわくない』(集英社刊)は、
読むと”コーネンキ”を明るく乗り越えられるパワーが湧いてくる一冊です。
さて、今回の旅は、東北、岩手県の世界遺産・平泉へ。
毛越寺での座禅に続き、中尊寺で写経に挑戦!!
世界遺産・平泉、中尊寺では写経に挑戦!!
毛越寺から一路、中尊寺へ赴いた我々を待っていたのは、登り坂だった。
月見坂、なんて風流な名前がついていて、樹齢350年の杉林の中を登る、すんばらしい参道ではあるが・・・。
「ほらほら横森さん、がんばってー」
「もう無理~(*´Д`)」
いかんせん、急こう配がキツイ。ふだん、歩き慣れてないせいもあり、息が切れる。
「やばいよ、こんな坂ぐらいで息切れてちゃ」
と編集者Kは言うが、やはり、フットワークが仕事の編集者とは、物書きは体力レベルが違うのだ。
「ほらー、もう約束の時間だよ! 先に行ってるねー」
急な坂を小走りに走り登るK? 私は途中で休み休み、やっとこさ追いついた。
中尊寺の本堂では、写経を担当してくださる僧侶が待っていた。お写経の一通りを説明され、お尻の下に、正座が楽ちんにできる小さい座椅子を仕込んで座る。
「一字一字、丁寧にお写経すると、二時間ほどかかってしまうので、ほどほどに。こちらは何時間でもお待ちできるんですが・・・」
正座椅子をもってしても、キツイだろうことが目に見えていた。なんせ膝に負担がかかるお年頃、正座できる時間も短かくなっている。毛越寺の住職が修業時代、何時間も正座していたら、最後は首まで痺れて来たと言っていた。ムリ~?
「写経というのは元来、現代のコピーの役目をしていたんですね。昔はコピーや印刷というものがなかったので、経典をみなさんに写し書いてもらい、保存する。それが写経の始まりです。ここでするみなさんの写経も、奉納されます」
お手本の最後には、為 藤氏四代追善供養 と入っていて、その横に自分のお願いを入れる行がある。
中尊寺は、奥州藤原氏三代の御遺体が祀られる金色堂を有す、壮大な天台宗東北大本山だ。行くまで知らんかったが、一つの「中尊寺」というお寺さんではないのだ。
一山にいくつものお寺や、神社・能楽堂まであって、彦摩呂じゃないけど、
「これはもう、祈りのアミューズメントパークや~」
と叫びたくなるほど!
まず、お清めに、「塗香」(ずこう)といって、粉末になった香を渡され、手にとり、口と胸辺りに塗る。
それから「洒水」(しゃすい)。僧侶が、お香の入ったお水を撒き、お経を唱える。
そのあとに、「中尊寺写経勤行儀」に書かれる「三帰依文(さんきえもん)」、「懺悔文(さんげもん)」、「十方念佛(しほうねんぶつ)」、「開経偈(かいきょうげ)」を、お坊さんと一緒に唱える。
それから、墨をすり、写経に入るのだ。
「それでは、私は十五分ぐらいの間隔で様子見に来ますから、御自分のペースで進めてください。足、お辛いようでしたら、崩して結構ですので」
僧侶が去り、編集者Kが言った。
「墨をするのなんて、何十年ぶりかなぁ。小学校のとき以来だよ」
「私は結構、近年、写経、何度かやってるよ。取材と、友達が嫁いだお寺さんでもやらしてもらった」
般若心経の意味は分からないが、墨をすったり、見たこともない難しい字を写し取っていると、無心になれた。
座禅のときは雑念が入りまくったが、慣れない筆や字に集中せざるを得ず・・・。
編集者Kは、
「なんかいいわ~、墨をすって筆で書くって。うちのおばあちゃんが毎朝早起きして写経してたのを思い出すわ~、やろうかな、わたしも・・・」
と郷愁に浸っていたが、たぶん無理。俗世は忙しすぎる・・・。
なんだ坂こんな坂で大汗をかいたが、山の上、特に本堂は涼しく、瞬く間に汗も引いた。
メンドクサイ気持ちもなく、心地よかった。足も思ったほど痺れなかった。
写経もまた、「瞑想」なのだ。雑念を払い、無心になれる。
「何も考えない」という時間が、コーネンキにはどんなに大切なことか! まさにこの「禅定」こそが、心の「極楽浄土」と言えるのではないか。
はてさて・・・写経はスタートしたものの・・・
僧侶が三回ほど、様子を見に来た。
「ちょっとペースアップしないと、マジで二時間かかるかもよ」
編集者Kがスピードを上げ始めた。
ぐぅぅ。お腹が鳴った。お昼時は、とうに過ぎていた。
無心になっても、お腹は空く。生きている、証拠だねw。
一時間半ほどでなんとか写し上げ、お渡しする。
代わりにありがたい「写経受納証」と、美しい花びらのお札を頂いた。
「この原本はお持ち帰りになり、おうちでも写経していただくことができます」
と言われたが、ムリ? だからこその中尊寺。ここまで来て、坂を上り、たどり着いた末にご利益があるのだ。
写経の後は中尊寺巡りスタート!!
写経を終えた我々は、まずは腹ごしらえに「かんざん亭」に赴いた(任務か)。
境内の高台にあり、絶好のロケーション。そこから平泉が一望できる。空は蒼青と澄み渡っていて、その風景はまさに極楽浄土。
藤原氏三代の御遺体が安置される金色堂のすぐそばだし、やはり人間、死んだらいい眺めのところに安置されたいと思うものなのだろう。
しばらく和食が続いていたので、ランチメニューに「自然薯ピザ」なるものを見つけると、ヨダレが垂れた。えー、どーゆーこと? 生地に自然薯が練り込んであるの?
と思いきや、なんと、チーズと自然薯のめくるめく「とろとろコラボ」だったのだ。
「ひゃー、モッツァレラと自然薯がお口の中でダンスしてるー」
と、勢いグルメレポーターとなってしまう私。今夜は蕎麦割烹に泊まる予定なのに、昼も自然薯蕎麦を食す編集者K。渋いね!
そして、いよいよ金色堂へ!!
昼食後、大本山行脚が始まった。
まずは目玉の金色堂。
奥州藤原氏百年の栄華を物語る金色堂。
堂全体が金箔で覆われた、まさに極楽浄土を現世に表したお堂だ。南洋から渡って来た螺鈿細工が施され、梁に至るまで眩いばかりの装飾。縁には象牙も使われ、漆細工や精巧な彫金も含め、平安仏教美術の最高峰と言われている。
平泉は砂金が採れ、水が豊富だったから栄えたという。それだけでなく、風光明媚なこの土地に、藤原氏が住み着いたのも、行って見て分かった。ここにいるだけで癒される、まさに極楽浄土なのである。
金色堂から色々なご利益の様々なお寺を回り、御祈願とお守りを購入。
特にコーネンキ世代に危惧される「目」のお寺さんでは、絵馬を購入、御祈願した。
私の飛蚊症がこれ以上悪くなりませんようにと。マジで祈った。
家族や友達にも、「ペット守り」や「商売繁盛」、「健康祈願」、それぞれお土産に買い、代わりに祈った。
これはまさに、ジュリアロバーツの映画じゃないけど、「Sutras,Eat,Pray 写して、食べて、祈って」。
インドまでいかずとも、平泉で一冊書けるなw
スマホのヘルスチェックを見ると、この日、11719歩。久々の一万歩ウォークだ。
「足が棒~。なんかマメできてる感じするぅ」
メソメソする私に、
「マジで? やばいよホント、普段からもっと歩かないとさ。足腰弱っちゃうよ」
と、激を飛ばす編集者Kであった。
・・・次回は、平泉の旅で感じた、見た、食べたあれこれをご紹介!!・・・
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