更年期の不調から脱するため、様々なチャレンジをしてきた作家・横森理香。
閉経前後の体験を描いた『コーネンキなんてこわくない』(集英社刊)は、
“コーネンキ”を明るく乗り越えられるパワーが湧いてくる一冊だ。
さて、引き続き、チャレンジのひとつとして、昨年初めて京都一人旅を体験。
だが、無類の方向音痴である横森さん、一人旅というより迷い旅だった。
そのリベンジを果たすべく再び京都へ!!
今度こそじっくり京都を味わいたい♥
神戸に隠居した叔父の見舞いに行ったので、はたまた、京都に寄ってしまった。前回、エサレンマッサージに行くため、京都大学の近くに泊まり、なんかあんま、観光っぽくなかったなぁという思いも残っていた。
編集者Kには、
「迷うだけの旅も面白いけど、大人女子としてどうよ?!」と叱られw
「京都は何度行っても新しい発見があるところだから、リベンジで行って来ては? 今度は迷わないでよ」
と、京都市役所近くのホテルをいくつか紹介された。さらにタイマーを使った自撮りの仕方、地図の読み方まで指導され・・・。
「ここからは歩いてスマートコーヒーにも行けるし、錦市場もすぐだから」
「ラジャー!」
二年前、錦市場に行ったときは夜だったから、ほとんどの店は閉まっていた。その後、テレビで見ると、あれも食べてない、あそこも行ってないと、胸がきゅんきゅんする。
「京都らしいところで、京都らしいもの食べたいなぁ」
京都熱がまた、ふつふつと湧いて来た。
京都らしい食べ物といえば、小学生の頃、初めて京都に連れてってもらったとき食べた、引き出し弁当。ネットで検索するも出てこない。京都在住の友人ヤタニーチェにラインで相談すると、
「私も探したんですが、今はないみたいなんですよね。引き出し弁当じゃないんですが、これなんかどうですか?」
と、「手織り寿司」なるものを出すお店のリンクを送ってくれた。
「いま話題のお店で、予約がなかなか取れないんですよ」
「イイネ!」
町屋を改装した京都らしいお店で、ちっちゃくて可愛い「手織り寿司」を、もう二十年来の付き合いになる大人女子といただく♥ いいじゃないか!
ホテルにチェックイン、さて一人で何しよう!?
しかしヤタニーチェは六時まで仕事だったから、ホテルにチェックインしてから、午後を一人でどう過ごすかだった。私は自分に、
「京都でなにやりたい?」
とたずねた。なんだかこの頃いろいろで忙しく、髪の毛も伸び放題、お買い物もしていないことに気づいた。京都に向かう電車の中で、
「京都 町屋 ヘアサロン」で検索すると、
「うっそー、あるんだぁ」
町屋を改装した美容院が出て来た。
しかし、無類の方向音痴である私が、ここまでたどり着ける自信はなかった。ググっても、見方が分からないから、最寄駅からホテルまでたどり着くのに、十分以上ぐるぐるしてしまった。「駅から徒歩二分」ってなに?
夕飯をいただく店にも、一人ではたどり着けないと思うから、ヤチニーチェが夕方ホテルに来てくれることになっている。
仕方がないので、サロンに電話をかけ、行き方を教わることにした。観光客であることを告げると、
「電車ですと、乗り換えが面倒で、かつ、駅から離れていますので、タクシーで向かわれた方が無難かと。タクシーだと十分ぐらいですから」
ホテルは御池麩屋町というところにあり、大通りに出ればすぐタクシーはつかまる。タクシーに乗り込むと、えっらい年寄りの運転手さんだった。
「京都は一通ばかりだから、ぐるーっとまわらにゃいかんよ」
と言いながら、ぐるぐる回る。すぐに、見覚えのあるアーケイドが見えた。
「あ、あれ錦市場ですよね? 二年前、夜行ったらもうなんにも食べられなくて」
「そうやね、市場やから、昼行かんと」
うーん、テレビで見た鱧の串刺しとか食べながら、立ち飲みで一杯やりたいものだ。
町屋風ヘアサロンで肩もみ✨
いまどき、カーナビもついてない古いタクシーだったが、おじいさんドライバーは頑張って目的地まで行ってくれた。この私が、グーグルマップを見せながら協力した。
「東京のデパートにも入ってる有名な和菓子屋さん、仙太郎のお向かいです」
「あー、あそこやね」
なんだか、達成感があったw
サロンは去年オープンしたばかりのhaku。町屋を改装したお洒落な店だった。一階がギャラリーになっていて、二階が美容院。なので、ぱっと見、美容院には見えない。
うえ~、一人で歩いて行ったら、ぜったい見逃してる?
サロンは満員で、外国人のヘアカットをしていたスタイリストが、私の担当だと挨拶した。
「こんにちは! 本日担当させていただくショータです」
ショータって、ファーストネームかい?
・・・・なんと大胆に初めての美容院へ!
シャンプーボーイに預けられ、しばらく待たされた。が、待たされて良かった。というのは、このシャンプーボーイ、マッサージがめっちゃうまかったのだ。
なんせ、忙しくて肩ゴリゴリ。マッサージに行く暇もなかった。それをこのシャンプーボーイは、別料金払ってもいいぐらい、ぐいぐい揉み解してくれたのだ。
「なんでこんなにマッサージうまいの?」と聞くと、
「先輩方が健康オタクで、整体師になってもいいぐらい、極めてるんです。それを教わって、僕らも練習してます」
町屋で髪を切ってみたいだけだったから、マッサージまでは期待してなかったけど、これはめっけもん♡
トップスタイリスト、ショータさんのカットも、早くてうまかった。
「これで当分、美容院行かずに済むねw」
滋賀出身で、ニューヨークで五年修業してきたそうだ。あ~、だから英語喋れて、自己紹介ファーストネームなんだぁ。
と思ったら、塩田さんだった。最後に名刺もらってびっくり。ずーっと、「ショータさんはさぁ」と会話していた。方向音痴だけでなく、耳も悪い55歳w
一人で四条をぶらつく
塩田さんに、「すっごい方向音痴なんだけど、ここからだと四条辺りまで歩けるよね?」と聞くと、
「お店出たら左に進んでもらうと、すぐ四条通りに出ますよ」と教えてくれた。
「でも大通りは観光客ばかりで面白くないから、小路に入ったほうが京都らしいです」
「はーい」
四条通りに出ると、方向音痴ながらも、土地勘が蘇って来た。何度か行ったことのある鴨川方向へ進む。塩田さんのアドバイスに従い小路に入ると、オバチャン一人でやってる、小さい和菓子屋さんを発見✨
高級店や有名店は京都駅でも買えるし、デパートにも出店してるから、京都でしか買えないものを買ってみたい。私はその花遊小路の和菓子屋さんで、京都らしい、小玉みたらし団子と、朝のお目覚用、生菓子を数点、買った。
四条通りを鴨川の方向に進むと、見覚えのあるクラシックな建物が見えて来た。食べたことはないが、有名な中華料理店だ。
「てことは、先斗町すぐじゃね?」
病的に方向音痴の私でも、大好きな先斗町界隈は体が覚えているみたいだ。
足取りも軽く、外国人観光客の中を進む。
「やった~」
先斗町到着、である。江戸時代から残る、風情のある小路✨
この中に、六年前、娘と行った、うさぎの焼き物屋さんがある。そこのレンゲが好きで、ヘビロテしてたら全部割ってしまったので、いつかは買いたいと思っていたのだ。
あんなに小ぶりで滑らかで、女子のお口に合うレンゲはない。二年前は夜呑みに来たから、お店はすでに閉まっていた。
「あった~」
そのお店、「うさぎのアトリエ ぴょんぴょこぴょん」を見つけた時は、心がじわぁっとした。ちっちゃくて可愛くて、ホントに京都らしいお店なのだ。
でも、レンゲはなかった。
「窯元からいつ何が来るかは分からないので、たまに電話してくれまっか?」
と、親父さんが言った。あれば、東京にも送ってくれるという。
「あ、じゃあ一カ月ぐらいしたら、電話してみますね」
私は、せっかくだから、私と娘用に、小皿と器、湯呑を購入して、もちろん帰りはタクシーでホテルに戻った。
・・・・・さて、お楽しみの晩御飯へ!!
町屋レストランで大人女子飯✨
ヤタニーチェに連れてってもらった「AWOMB(あうーむ)」は何店舗かあるらしいが、予約が取れたのは西木屋町店。ホテルからはタクシーで十分ぐらいだった。四条通りを越え、高瀬川に添って飲み屋街を進むと、幸せ感が込み上げてきた。
「私ねぇ、年々飲めなくなってきてるけど、呑み屋さん、見てるだけで幸せなの」
私はヤタニーチェに呟いた。父親に似たのか、色町が好きなのだ。
「AWOMB」は、一本入ったところの、これまた大変分かりづらいところにあった。ま、どこに行くにしても、案内なしには行かれないが。
町屋を改装したお店で(どんだけ町屋好きやねん)、入口は風情のある格子戸。
京都らしい、細長~い小道を進むと、「頭上注意」と書いてある低い入口があった。細いしめ縄や、魔除けのお飾りが祀ってある。
店内はこじんまりとして、キッチンもお客様も、女子ばかりだった。
大人女子による、大人女子の店。小さいながらも、微に入り細に入り、美を追求している様子がうかがわれ、「アウーム(子宮)」という名前らしい、落ち着いた気分にさせてくれた。
京都の純米酒を頼んで、熱燗で乾杯✨ 盃も選べる。花冷えで寒かったから、まずは温かい蕎麦椀で体を温め、アートのようなお料理を、少しずつつまみながら、ちびちび呑んだ。
西木屋町店は揚げ物が売りで、牡蠣やうずら卵、アーモンド衣の海老、カマンベールチーズや和牛、五色あられをまぶした粟麩、微塵粉をまぶしたゴボウなど、見目麗しい天ぷらにも、舌鼓を打った。
美味しい、そして美しい料理にコメントしつつ、大人女子同士、話は尽きない。
「こういう、目にも美味しいお料理って、女子同士じゃなきゃ楽しめないよね~」
「男の人はお腹いっぱいになんなきゃダメだもんね」と、既婚者同士、笑い合う。
あたたかい酢飯と焼き海苔がついているので、手の込んだ美しいお料理を具にして、手巻き寿司にして食べてもいいが、私はほとんど、日本酒のお供にしてしまった。
なんせ、野菜や魚介、京都の食材を使っただけでなく、和洋折衷の創作料理なので、組み合わせが絶妙で、酒に合うのだ。勢い、
「熱燗、もう一本!」
頼んでしまった。
最後にちょこっと、巻物もいただいた。酢飯も炊き立てで美味しい。
川沿いカフェでもう一杯✨
「AWOMB」を出たあと、もう一軒、鴨川沿いのお店に連れてってもらった。やはり町屋を改装したカフェで、フランス人男子がサービスしていた。うーむ、フランスと京都、大人女子にはしっくりくるね♡
おなかはいっぱいだったので、鴨川を眺めながらワインとナッツ、枝豆をいただく。こんなに贅沢なロケーションで、一人千円ぐらいのお支払だった。「アウーム」もそうだが、京都は色々なお値段、東京に比べるとお安いような気がする。
で、すっかりいい気分になった私は、ヤタニーチェと高瀬川を眺めながら木屋町通りをそぞろ歩いた。
どこも、京都らしい間口の狭い、ウナギの寝床みたいな小路を通って入る感じ。ライティングも斜暗く、お洒落。素敵なお店がいっぱいあることに感動した。
「そうなんですよ、理香さん、この辺は大人な界隈。また来てくださいね!! 次はあそこ、行きましょう!」
と、次なる京都に私を誘う。くぅ~、また行っちゃうよぉ。
・・・まずは順調な京都旅。 続きをお楽しみに!! ・・・・・・
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作家・横森理香が更年期の不調解決のため、空中ヨガ、イケメン太極拳、コルギ、観光ウォーキング、グルテンフリーなどに次々チャレンジ。読むだけで気持ちが前向きになる一冊です。
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