ただの月経痛や過多月経と軽視して、発見されるのが遅くなりがちな子宮内膜症についてお伝えした前回に引き続き、子宮内膜症の方がさらに注意しておくべきリスクをご紹介します。
知っておきたい子宮内膜症リテラシー
40代以降の子宮内膜症は
心筋梗塞や脳梗塞のリスクが上がる
子宮内膜症は月経のたびに出血や炎症が起こる、いわば慢性の炎症性疾患。
長く続く炎症により血管内皮機能が低下する(血管が硬くなること)ため、動脈硬化が起こりやすく、心脈管系の疾患のリスクが上がることが明らかになっています。
特に閉経前後で子宮内膜症にかかっている人は、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを考慮した対策を。
臓器同士が癒着して固まってしまう
フローズンペルヴィス(凍結骨盤)
子宮内膜様組織が子宮以外の場所に発生し、出血を繰り返していくうちに、血の塊が骨盤内にある臓器全体に広がってベタベタと癒着が起こります。
すると臓器がひと塊になって動かない「フローズンペルヴィス(凍結骨盤)」と呼ばれる状態に。
ここまで悪化すると手術も大変です。子宮内膜症は必ず治療を受けましょう。
50代以降のチョコレート嚢胞は
卵巣がんのリスクが急上昇!
チョコレート嚢胞のがん化は、昔から知られています。
最近の国内での報告によると、がん化率は20代~30代では1%前後ですが、40歳以降は4~5%に増加、50歳以降のがん化率は20~25%。さらに60歳まで放置すると約半数ががん化するという報告も。
内膜症は閉経で自然治癒するとされてきましたが、がんリスクは確実に上がります。
異型があると子宮体がんに!
子宮内膜症と子宮内膜増殖症とは別物
子宮内膜症と名前が似ている「子宮内膜増殖症」は、まったく別の病気。子宮内膜がうまくはがれず増殖する病態で、閉経前後のホルモン異常で起こります。
この子宮内膜の細胞核が異型に変化するのが「子宮内膜異型増殖症」で、20~25%が子宮体がんへ進行。
子宮体がんの70~80%は子宮内膜増殖症から発生するので、注意が必要です。
お話を伺ったのは
対馬ルリ子さん
Ruriko Tsushima
1958年生まれ。対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座・新宿理事長。産婦人科医、医学博士。女性の生涯にわたる健康推進活動に積極的。『「閉経」のホントがわかる本 更年期の体と心がラクになる!』(集英社)が大好評。
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八田真理子さん
Mariko Hatta
産婦人科医。1998年、千葉県松戸市で女性のためのクリニック「ジュノ・ヴェスタクリニック八田」を開業。著書に『産婦人科医が教えるオトナ女子に知っておいてほしい大切なからだの話』 (アスコム) など。
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イラスト/かくたりかこ 構成・原文/蓮見則子