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【更年期、槇村さとるさんの場合】 アフター更年期はHRT(ホルモン補充療法)とダンスに救われ絶好調(インタビュー後編)

その年齢も、期間の長さも、症状の有無も。驚くほど個人差のある更年期。閉経する年齢も大きく異なります。大活躍しているあの人は、どんな更年期を体験しているのでしょう? それぞれの貴重なエピソードを、自身の言葉でお届けします。

槇村さとるさんが「更年期の本編がやってきた」というほど不調に見舞われたのは、閉経後だいぶ経過した55歳のとき。医療機関できちんと検査したことで、体に何が起こっているのかを知りました。治療を始めてからは体力・活力が一気に上向きに!  67歳の現在も漫画と趣味のダンスを生きがいに毎日をハツラツと送っています。

 

数々の不調に見舞われた槇村さとるさんのインタビュー前編「不調が押し寄せる「更年期の本編」は、閉経後にやってきた」はこちら。

 

槇村さとるさん(67歳・漫画家)

更年期、私の場合。槇村さとる後編
HRT(ホルモン補充療法)のスピーディな効き目に驚き!

「58歳のとき、クリニックの検査で女性ホルモンがゼロと診断されて、すぐにHRT(ホルモン補充療法)を始めました。自分から先生にリクエストしたと思いますね。漫画もちゃんと描けない、こんな生活は嫌だと思っていたので。

すると、その効き目がすごかった。補充療法を始めた翌日には、体温が上がって体が楽。自分の中心に“意欲”が戻っている。びっくりでした」

 

そう振り返る槇村さん。補充療法として、女性ホルモン「エストロゲン」の飲み薬に加え、男性ホルモン「テストステロン」の注射も受けたそうです。初めから、ホルモン補充療法についての知識はあったのでしょうか?

 

「本や雑誌の記事を読んで、だいたいは知っていました。

なにしろ、このままでは連載の原稿をいつか落とす(締め切りまでに原稿が間に合わない)、信用まで落とすことになる…とハラハラするような体調でしたから。原稿を描けるようになることが第一目的でした。

 

ただ、夫の反対はありました。自然医学、自然人類学の学者なので、それで反対だったのかな。反対されても『こんなにしんどいんだから、治療を受けるわ』と言うと、私が急に“女”に戻ると思ったのか『あなたが補充療法を受けるのはいいけれど、僕、お相手は無理だと思います』って。

何それ、どういう意味なの?って。あなたとやりたいために補充療法を受けるとかいう話じゃないでしょ(笑)」

補充療法と同時に鉄剤も処方してもらったので、貧血も徐々に解消。最初は鉄剤の注射も打たれたそうです。

 

「さらには、橋本病であることもわかったので、近くの甲状腺専門病院を紹介してもらい、甲状腺ホルモン薬『チラーヂン』を飲む治療を始めました。それからはずっと両クリニックが連携。女性ホルモンのケア、甲状腺ホルモンのケアをお願いしています。

ホルモン補充療法を始めてからまもなく10年、今でも続けていますよ。定期的に血液検査をしているので、薬の量を変えたときや体調に変化があったときに検査の数値を見てもらえるので、安心なんです」

 

社交ダンスとの出会いで健康管理のモチベーションUP!

槇村さんが今夢中なのはダンスです。特に60歳で始めた社交ダンスは健康にも大きな影響をもたらしてきました。

 

「過去にほかのダンスもやってみたことはあるけれど、今ひとつハマらなかった。それが、社交ダンスは違ったんです。すっかりハマった。友人と同じダンススタジオに通い始めてもう7年ほどになります。

始めたら、姿勢がもう全然変わりましたね。長年、原稿を描き続けてきましたが、描くときは背中を丸くして前にかがむ姿勢だけ。なんとかしなければ、と思っていたんです。

そこに社交ダンスが来ちゃった。背中も首も何もかも上に伸ばさないと踊れない。姿勢は絶対に激変しますよね。すごく動くから筋肉もつきました。社交ダンスって、男の人と一緒に走るみたいな感じなんですよ。だから肺活量も上ったし」

 

社交ダンスだけでなく、同じ時期からスポーツクラブのバレエのクラスにも通っているのだそう。

 

「今1週間のうち6日は踊ってるんです。自分でもちょっとあきれるくらい(笑)。社交ダンスが週2回、バレエが週2回、スポーツクラブのスタジオでヨガ系やピラティス系のクラスも2回は参加しています。仕事は昔のように詰めてはいないけれど、昼に原稿を書いて、夜ジムに行って踊って…という日は死にそうですよ。でも、好きでやるって決めたことですから、全部楽しいんです。

今体脂肪率は28%、筋肉量も標準らしいです。体組成計には毎日乗って、記録しています。30代のときから続いている習慣ですね」

そう言って見せてくれたのが、槇村さんが体重や体調をずっとメモしているスケジュール帳です。なんと通算161冊目! グラフまで描いてあります。

 

「スマホのアプリとかもっと便利なものもありますが、ずっと手でノートに書いてるの。疲れてぐったりしているときでも体組成計には乗るし、食べたものやその日にやったことも書いてあります。後で見返すと、何が体調不良の原因かだいたいわかるので。外食も多いから、そういうのが如実に体調に出るんです。だから、なんでもメモしていますよ」

更年期、私の場合。槇村さとる前編

更年期以降はセルフケアが重要。習慣にしてしまえば楽!

槇村さんの並々ならぬ自己管理力。そのモチベーションはどこから?  やはり、ダンスのためでしょうか?

 

「健康のため、筋肉のためもあるけれど、ダンスもジムも鏡があちこちにあるので、自分の肉や脂がたぷたぷしているのを見るのは単純にイヤ。特に社交ダンスはドレスを着て踊るから、首が短いとか背中の肉がぷにっかいろんなことに気がつくわけです。

今はね、背中キャンペーン中。その前はふくらはぎキャンペーンでした(笑)。だめなところは自分でケアします。お風呂の中で二の腕をもむとかね、続けているとそのうち習慣になる。習慣になったら、体も変わるんです」

 

スタッフとともに行う仕事場での体操(NHKテレビの「ラジオ体操」や「みんなの体操」)も習慣になっているのだそう。

取材当日はピンクのピンヒールを履いて、さっそうと歩く姿が印象的でした。

 

「更年期に不調がある人は自分の具合が悪いのを我慢したり、ほったらかしにはしないでほしい。イライラしたら『更年期なんだよ、ほっといてくれよっ』と、ワーッと言って。それだけでずいぶん楽になると思う。我慢しているといいことないんですよ。

特に男の人には、はっきり言ったほうが通じる。『あ、はーい』ってなると思う。

どう見ても具合悪そうなのに『大丈夫、大丈夫』とか言ってても、パートナーはいろいろ考えちゃうでしょ。『嫌われたのかな』とか。私も夫に不機嫌に当たって『僕、何かしましたか?』って言われましたから。言っちゃいましょ、言っていいんです!」

●HAPPYに過ごす秘訣●

槇村さとるさん 更年期インタビュー 

 

 

なんでも記録するのが習慣。 30年は続いているため、これが161冊目! 超人的な自己管理能力です。

 

槇村さとる

Satoru Makimura

1956年生まれ。漫画家。’73年、別冊マーガレット(集英社)にて漫画家デビュー。1978年にフィギュアスケートを題材にした『愛のアランフェス』、’80年代には『ダンシング・ゼネレーション』『白のファルーカ』などの連載がブレイク。2023年に最終回を迎えた『モーメント 永遠の一瞬』も再びフィギュアスケートを題材にして話題に。TVドラマ化された『イマジン』『おいしい関係』『Real Clothes』なども代表作。画業50周年を迎え、東京・弥生美術館で開催した「デビュー50周年記念 槇村さとる展」も好評のうちに終了。『THE 槇村さとる -デビュー50周年記念画集-』が発売中。

槇村さとる 書影

『THE 槇村さとる -デビュー50周年記念画集-』3,960円/集英社

 

撮影/富田一也 取材・文/蓮見則子

 

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