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更年期の治療、よりよく受けるためのポイントは「患者力」。医師とのコミュニケーション、どうしたらいい?

更年期外来に、学会に、講演にと忙しく飛び回る産婦人科医の吉形玲美先生。いつも涼やかなポーカーフェイスに見えますが、更年期医療に対する思いは熱く、お話の中にはいつも本音が満載。今回は、患者と医師のいい関係について、最新の事情を踏まえたお話を伺いました。

医師も患者も同じ人間同士。お互いさまと思っておつき合いしたい

こんにちは。産婦人科専門医の吉形玲美です!
前回も少し触れたように、更年期外来は全国的にはまだ数が少ないので、多少遠くてもいい先生に巡り会ってほしいなといつも思います。

 

遠隔診療、オンライン診療が実現できたらいいんですけどね。
オンタイムだと物理的に1対1の対面診療と同じなので、最初にチャット機能があったり、アドバイザーが間に入ったりする仕組みができるといいですね。

 

私が副理事長を務めるNPO法人 更年期と加齢のヘルスケアでは「メノポーズカウンセラー」の認定制度があります。
更年期にかかわる正しい知識を持ち、患者さんに近い立ち位置で相談に応じてくれる人たちです。

 

例えば、まず患者さんがメノポーズカウンセラーと直接やりとりし、そこから医師とのオンライン診療につなげてもらえたら、すごくスムーズ。
そんな仕組みができ始めれば、すぐに広まりそうですね。

 

 

 

そして、よく聞かれるのが、相性のいい先生にどうやってたどり着くか?

やはり医療機関のホームページをしっかりチェックするのが基本です。
口コミを参考にするのもいいですが、友人知人の紹介が一番でしょう。

 

私自身、問診票の「ここをどこで知ったか」の項目に、「知人の紹介」と書いてあるとちょっと気が引き締まりますね。
「誰かがうちをすすめてくれたんだから、粗相があってはいけないな」と思ってしまいます。

常識の範囲内でよいコミュニケーションがとれるよう「お互いさま」と思っているし、患者さんにもそう思ってほしいですね。

 

 

この先生は嫌だと思ったとき、どうすれば?

では、せっかく受診したのに、その先生と馬が合わなかったときは?

それはね、さっさと変えたほうがお互いのためだと思います。

 

HRT(ホルモン補充療法)をはじめ、更年期医療に詳しくない婦人科の先生もいます。ホルモン治療に偏見がある先生も。
例えばですが、「ピルは避妊薬」とか「ピルは遊んでいる女子が飲むもの」なんて、いまだに言ってしまう医師もいるかもしれません。

 

相性が悪いと感じたとき、「あぁ、この先生無理〜」と思ったとき、何が無理だったのかを考えてみましょう。
話をちゃんと聞いてくれなかったからなのか?  自分の思っている治療法をすすめてくれなかったからなのか?  杓子定規な対応だったからなのか?

 

例えば、HRTをしたいと思っているのに、どうもホルモン治療をしないほうしないほうにもっていく先生もいると思います。
更年期医療に力を入れていない医療機関なんかだと、ありがちです。
HRTは時間だけかかって薬代も安く、保険診療では全然お金にならないので、そういう方針のところも確かにあるでしょう。

 

1回受診したけどもう行きたくなければ、「2回目の予約をしましたが、行けなくなりました」と断っていいと思います。
理由は別に言わなくてもいいんです。

せっかくやった検査の結果は聞きに行かれないですが、もっと相性のいい先生を探すほうが、更年期症状の改善には建設的。気持ちの切り替えができていい気がします。

 

「あまり話を聞いてくれない」という不満も多いですよね。
それには、私たち医師側の言い分もあって…。

例えば、延々と30分しゃべり続ける患者さんもいるんですよ。
保険診療では一人の枠がだいたい10~15分。
そこで30分間聞いてほしいというのはなかなか難しい。
だから、自費で30分話をちゃんと聞いてくれるような案内が、ホームページに載っているクリニックもあるわけです。

 

話は聞いてほしいけど、お金はあまりかけられない。それも普通。
だからずっとギャップが埋まらない。

でも、保険診療でそんなに時間をかけていたら、日本の女性医療は一部のボランティア精神にあふれた先生だけがやることになる。
効率の悪い医療なんです。それが更年期医療の苦しみ。
更年期問題の解決を1から10まで保険でやるのは所詮無理、というのが現状なんですよね。

 

患者力を高めて、医師とよりよい関係を築いて!

だからこそ、婦人科を受診するときにはちょっと気をつけていただきたいことがあります。

 

更年期症状がつらくて「先生、助けて〜」という状態の人が多いんですが、たいていは症状がひとつでなくいくつも重なっています。
保険診療という制約の中でやっているので、10個解決したいと言われても10個いっぺんには無理。

「これだけは改善したい」を、2つ3つは言えるように整理してきてもらえるといいですね。
メモに箇条書きにしてみるといいでしょう。
何枚ものレポートを書いて渡されるとそれはそれで読むのに時間がかかるので、簡単でOK。

 

初めて行くところなら、まず予約のときに「診察時間は何分くらいですか? 先生とは何分お話しする時間がありますか」などと聞いてもいいと思います。
「できればHRTをやりたいんですが、対応していますか?」なんていう聞き方もいい。
「更年期かどうか調べてほしいんですが」でも、もちろんいいです!

 

ただし、初診の予約で「腟炎なので診てください」と聞いていたのに、受診の日になったら「更年期の相談」に○がついていたりすると困ります。
こちらは5、6分で終わるかなと思っていたのに、「ええ〜〜っ」となります。30分かかっちゃう。

 

 

そして、薬を使いたいか使いたくないか、それはとても重要。
特にHRTは説明にも時間がかかるし、必要な検査もあります。
もし、自分の中である程度気持ちが固まっていれば、予約のときに言ってくださるととても助かる。

「症状がつらいので、HRTの相談をしたい」とか。
「更年期の症状だと思うが、治療法に迷っている」でもいいんです。
そういう予約の仕方だと話が早いし、スタッフも準備ができます。

具体的にわからなくても、願わくは「私もHRTが必要かもしれない。私はしたいのかな、したくないのかな」くらいは自問自答しておいてもらえたらうれしいです。

 

治療の進め方、一人一人異なるのが当たり前です

私の診察では、初診で汗やホットフラッシュに悩んでいれば、たいていはHRTをおすすめします。
発汗やホットフラッシュが、HRTを始める基準のひとつになるんです。
また、どんな症状かに限らず、本人が希望しているということも大きな基準になります。

身体症状がなく、倦怠感など精神症状だけの人には、HRTはいきなりすすめません。
それでも本人がHRTを望んでいるなら、100%やります。

中には、HRTをやりたいと言っているけれど明らかにうつ症状で、心療内科が先だと思われる人もいるので、その場合は心療内科や精神科の受診を提案します。

 

HRTをスタートするには、必要な検査があります。
初診では必ず検査を行うようにしていますが、「今日は検査をしたくない」という方には、「次回は必ず検査を」と約束して、まずはお試しで、1カ月か2カ月分のHRTのお薬を出すこともあります。
クリニックによるかもしれませんけど、私の場合はそうですね。

 

ただ、HRTは最強みたいに思われますが、10人に2、3人は全然効かない人もいるんですよ。
「試したけど、出血して嫌だったからやりたくない」という人もいるんです。
そういう人は一度試してだめだったことを体験できているので、逆に別の治療にスムーズに進めるのがメリット。
速効性がないとしても、サプリメントや漢方薬に前向きに取り組んでもらえます。

 

また、全身症状はなく、性交痛などフェムゾーン系の困り事だけの場合は、HRTじゃなく腟坐薬やフェムケアなど、局所に絞った治療をします。
イライラや不安感があるという人には、安定剤(精神安定剤=抗不安薬)を出すことも。

 

更年期の不調を感じ、勇気を出して受診したのに、お話と検査だけでは満足しないというか「せっかく来たのに」という思いをさせてしまうでしょう?
希望があればせめて何かを出して、様子を見るようにはする。
「何か」は、例えば前述の安定剤、睡眠導入剤、漢方薬、エクオールのサプリなど、何かしらです。

もちろん、検査結果を見てから考えたいという方もいるので、その場合は処方しません。

 

HRTのお試しもですが、処方すると安心して帰れます。

それで調子がよくなったり、症状が改善したりすることもあるんですから。
検査結果を待って「1カ月後にまた来てください」よりは、いいに決まっていますよね。

 

クリニックや医師にもよると思いますが、私の場合はこんなふうにして治療を進めていきます。

 

 

【教えていただいた方】

吉形玲美
吉形玲美さん
産婦人科医、医学博士
公式サイトを見る
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浜松町ハマサイトクリニック特別顧問。大学病院で医療の最前線に立ち、女性医療・更年期医療のさまざまな臨床研究にも数多く携わる。女性予防医療を広めたいという思いから、現クリニックへ。更年期、妊活、月経不順など女性の体のホルモンマネジメントが得意。著書に『40代から始めよう! 閉経マネジメント』(講談社)

 

イラスト/Shutterstock   取材・文・画像制作/蓮見則子

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