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更年期のイライラ、うつなどのメンタル症状改善には、何をしたらいい?

更年期の症状で意外に多いのはメンタル系のトラブル。体に症状がないと、心の不調が女性ホルモンの減少によるものだと気づかないことが多いものです。閉経前後にメンタルが落ちていると気づいたら、まず何をすればいい? 更年期医療のスペシャリスト、吉形玲美先生に伺いました。

幸せホルモン「セロトニン」を増やすためにしたいこと

こんにちは。産婦人科専門医の吉形玲美です!
更年期の不調といえば、心の問題をスルーするわけにはいきませんね。

 

イライラする、ゆううつ気分、落ち込み、不安感・焦燥感、やる気が出ない、意味もなく悲しくなる、何も楽しめない…など、更年期のメンタル症状は人によって違います。どれもQOLを下げてしまうばかりで、放置していいことは何もありません。

 

心の不調が新たな体の不調として表れたり、逆に体の不調がメンタル症状を招くというように、負のスパイラルに陥るのもよくあること。

更年期に「私、メンタル弱ってるな」と感じたら、我慢したり放っておかないで、まずは婦人科で相談することをおすすめします。

それが女性ホルモンの低下によるものであれば、その人に合った何らかの治療はできますし、婦人科から心療内科などへの紹介もできます。

 

私の外来でいうと、10人中イライラ系が7人、うつうつとした人が3人。イライラ系のほうがとても多い印象です。

うつっぽい人は、心療内科に行かれているから婦人科では少ない気がするのでしょうか? もしくは、うつうつ系の人は外に出ることも億劫で引きこもっているためかもしれません。

 

どちらにしても、メンタルの不調を軽くするためにやってほしいことは、ずばり“運動”です。

運動で増えるホルモンにはいろいろありますが、幸せホルモン(*)と呼ばれる「セロトニン」「エンドルフィン」「ドーパミン」の分泌を促す作用がいちばん注目してほしいところ。
*「幸せホルモン」はあくまで俗称です。ホルモンとは各内分泌臓器から分泌されて全身に送られる生体内情報伝達物質ですが、セロトニン、エンドルフィン、ドーパミンはおもに神経伝達物質として働く物質です。

 

幸せホルモンの中でも、特にセロトニンは脳の興奮を抑えて心身をリラックスさせ、精神を安定させる効果があります。

セロトニンは女性ホルモンによっても調整されているので、更年期に女性ホルモンが減ればセロトニンも不足する。そのせいでイライラや不安感を感じやすく、眠りの質が低下したりやる気や集中力の低下、気分の落ち込みなどにもつながるんです。

 

更年期の心の不安定さ、外来での私の対応は…

前回お話ししたように、運動は男性ホルモン「テストステロン」も増やしてくれるので、やる気や気力のアップに直結します。

女性ホルモンが減って、いつもぐったりしている人は、運動で男性ホルモンも増やしたいところです。

 

ただし、うつうつとしている人は、運動なんてしたくない状態でしょう? 無理に筋トレや特別な運動をしなさいとは言いません。散歩だけでもいいんです。日光に当たることでも幸せホルモンは増えますからね!

 

 

うつうつタイプの人が受診してくださったら「ここに来てるんだから、それだけでもえらいねー」と言ってさしあげます。

中には、おでかけやお友達と会うのは無理だけど、病院だったら行けるという人もいるんです。

 

「何ならできそう?」と聞いて、何かその人ができそうなことを見つけて、「これならできそうじゃないですか?」と提案してみる。
メンタルのことで病院に行くのが嫌でなければ、「心療内科も行ってみましょうよ」とも言います。「先生に何と言われたか、次回は私にも教えてくださいね」とか。

 

「頭からつま先まで吉形先生にしか診られたくない」と言う人もいます。そんな方には、好きなものを聞いたり、どんな環境に家があって、駅からどのくらいだとか近くにどんなものがあるかなどを聞く。

「家の近くのそこ、毎日行ってみましょうよ」とか「もしデパートに行ったら、デパ地下で魚のお惣菜のいいのがあったら、次回教えてくださいね」なんていう宿題を出す。

 

「ベランダに出られますか?  1日1回でもいいのでベランダで深呼吸をしてみたらすごく気持ちがいいですよ」とか。
ベランダがなければ「窓は開けられますか? 朝起きたら窓を開けてみませんか。そして深呼吸してみましょうか」なんて話します。

 

カウンセラーみたいなことですよね。保険診療なので時間はものすごく限られますが、その中でも精一杯お話をするようにしています。

 

HRT(ホルモン補充療法)もサプリメントも、メンタル不調に効果が!

体の更年期症状があって心にも不調を感じている人、精神症状が強い人にはHRT(ホルモン補充療法)をおすすめします。

HRTというと、のぼせや発汗、ホットフラッシュに効くイメージでしょうけれど、精神症状の改善にも使います。HRTでよくなる人は本当に多いんですよ。最初、顔がどんよりして下を向いていた患者さんが、治療を始めると顔が上がってくるんです。

 

HRTは女性ホルモン「エストロゲン」を飲み薬や貼り薬、塗り薬(ジェル)で補う治療。これがメンタルにも効く理由は、前述のようにエストロゲンが「セロトニン」を増やしてくれるからでしょうね。

私の感覚では、HRTはイライラしている人のほうが治療効果は表れやすいです。治療をするとガラッと変わる。たいてい、いい人に変わるんです。
「よくなりましたよね、先生」って、スタッフが見てもわかるほど、劇的にいい人になったり、言われたことをきちんとやる優秀な患者さんに変わっていくんです。

 

患者さんの心が軽くなり、うれしく感じているのがわかると、私もスタッフたちも「あーよかった」と思いますね。

 

 

HRTはやりたくない人でも、漢方や「エクオール」のサプリメントで変化を感じられることも多いですね。どちらでも「不安定さがなくなる」というような体感。

特にエクオールは「心の内側が安心感で満たされる」「なんだか安定した感じ」というのが、患者さんがよく使う言葉です。

 

私が監修しているエクオールサプリメントがあって、それはエクオールの吸収を高める工夫をしているだけじゃなく、「通院しながら、先生の開発したサプリを飲んでいる」というプラセボ効果もあるのかもしれません。

家でネットでポチって買ったものを確信もなく飲み始めるより、診察を受けてすすめられたサプリを飲むほうが安心感がありますよね。

 

皆さん、保険診療の婦人科でそこまで寄り添ってくれると思っていないかもしれませんが、私たち専門家と少し話をしてみるだけでも、楽になることが多いような気がします。

 

この連載のように、婦人科でもできることを記事に書き記すことで「私も受診してみようかな」と思う人が増えればいいなと思っています。

 

 

【教えていただいた方】

吉形玲美
吉形玲美さん
産婦人科医、医学博士
公式サイトを見る

浜松町ハマサイトクリニック特別顧問。大学病院で医療の最前線に立ち、女性医療・更年期医療のさまざまな臨床研究にも数多く携わる。女性予防医療を広めたいという思いから、現クリニックへ。更年期、妊活、月経不順など女性の体のホルモンマネジメントが得意。著書に『40代から始めよう! 閉経マネジメント』(講談社)

 

イラスト/Shutterstock   取材・文・画像制作/蓮見則子

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