大切だけど、微妙なテーマ、セックス。
している人、していない人。ずっとできる状態でいたい、したくない、できない、性交痛が辛い、前と違う違和感がある。
いろんな人がいて、さまざまな状況、考え方、感じ方があります。では、
「セックスは、しないと体に悪いのでしょうか?」
その答えは、「NO」。
でも。しなくても体に悪いことはないけれど、「したい人」も「したくない人」も、
更年期の女性の腟まわりは、急速に劣化が進む
という、衝撃的な医学的事実があります。
つまり、してもしなくてもいいけれど、閉経前後の女性の場合、卵巣機能低下に伴って、女性ホルモンのエストロゲンが低下します。その結果、顔より早く、腟まわりが急速に衰えていくので、ケアしないと、腟まわりが萎縮したり緩んだりして、性交痛だけでなく、尿もれや、乾燥による痛み、臓器脱など、さまざまなトラブルを引き起こすことがある、ということ。
もうひとつは、セックス「する」「しない」の前に、「心」の問題があります。話す、自分で触る、性にまつわることに罪悪感がつきまとうことが多い、日本。
自分が望んでいない状況にあっても、それを口にできない、相談もできない。
どうしていいか、わからない。
では、どうしたら??
この問題を取り上げようと思ったきっかけは、植物療法士の森田敦子さんが、抗加齢医学学会で発表した内容を教わったことでした。
「日本では『セックス=恥ずかしいもの、隠すべきこと』とタブー視されがちで、性に対する罪悪感を持つ人も多く、なかなか語られることがないのですが、フランスを含む海外では、セクソロジー(性科学)という学問が大学にもあり、人間の性や性行為、性的機能に関係する問題は、科学の分野として研究が進められていて、決して嫌らしいことではないんです。
私がフランスで師事した教授クロード・エステュールジー先生はセクソロジー(性科学)専門の医師でした。
そしてね、例えば腟まわりを"揺らす"ことで、実は、女性の心と体を満たす脳内ホルモンは出るんですよ」(森田敦子さん)
このお話を伺って、「セクソロジーって? 揺らすと出るホルモンって?? もっと詳しく教えて下さい」と尋ねたところ、この数日後から伊勢丹新宿店で始まる、森田敦子さんプロデュースのフェムテックPOP-UPイベント「センシュアル・ライフ」で、富永ペインクリニックの院長、富永喜代先生と森田さんが、このテーマについて対談なさるというのです。
富永先生は、性交痛外来で5000人の悩みをオンライン診断しているお方。
その二人のお話をさっそく聴きにいってとても興味深かったので、取材して対談記事を作ることにしました。
ちなみに、OurAgeで2021年10月1日~11月1日に行った調査(平均年齢49.08歳・507人が回答)では、半数以上が、セックスレスでした。そして、する人もしない人も、回答を見るとそれぞれ悩みがあるようですが、どうしたらいいでしょう?
「加齢により、腟まわりの筋肉が劣化したり、腟が萎縮するのは事実。けれど、フェムゾーン専用アイテムでケアしたり、マッサージをすることで、必要な粘液が再び出る体になります。セックス(挿入)をしなくても、腟まわりに"振動を与える"ことで、女性の心身を満たす脳内ホルモン(脳内のβ-エンドルフィン、ドーパミン、オキシトシン)は出るのです」(富永先生)
これって、知ることで気持ちが変わるような情報ですよね。
まず、考えたことは、している人、していない人、どちらも女性ホルモンは低下するし、腟の劣化は起こるので、今の状況やこれからどうしたいかは、それぞれ違うけれど、みんなに届く情報や考え方を届けたいということ。
ずっとできる状態でいたい人にも、したくない人にも、できない、性交痛が辛い、前と違う違和感があるというようなお悩みがある人にも、役に立つ記事にしたい。「私は関係ないわ」という人が出ないように。
例えば、印象的だった腟萎縮のスピードについて。
「セックスをある程度している人でも、「2カ月に1回」の頻度では、腟が萎縮するスピードのほうが早いですね。なのでセックスだけで萎縮を防ぐと考えると、最低でも「月2回」。できれば「1週間に1回」してほしいですね。それが難しい人、セックスをしたくない人は、ぜひセルフプレジャーグッズなど、フェムテックの力を借りることをおすすめします」(富永先生)
これぞ性科学。
「最近、フェムテックの中でもヒットしているのが、挿入タイプではなく、外陰部を振動させるもの。挿入しなくても、クリトリスや腟まわりを揺らすことで粘液が出たり、オーガズムを感じてホルモンが分泌されたりするので、これからはセックスの固定概念にしばられる必要もないと思います」(森田さん)
しかも、最近はオーガズムを得ることによる、女性の健康メリットに注目が高まってきています。もはやポジティヴな健康メソッドになってきているということ。
「例えば睡眠の改善、ストレスの解消。オーガズムによって脳内のβ-エンドルフィンやドーパミン、オキシトシンなど、リラクセーション効果が高まるホルモンが分泌されるというメリットは、医学的にも認知されています。
コロナ禍、旅行や外食などの制限によって閉塞された中、自分だけでコンプリートできるストレス解消法として、セルフプレジャーなどのフェムテックは、その価値が見直されているのです」(富永先生)
もはや、恥ずかしがっている場合ではありません。
人生100年時代。後半の約50年を女性ホルモンがなくなっていく状況で、どこまで健康でいられるのか。ホルモンの担っていた役割を、自分でできるだけカバーしていくという発想は、これから必要になっていくといえます。
「腟ケアアイテムもいろいろなものが出ているので、悩みや目的に応じて、使い分けて欲しいですね」(森田さん)
「セックスの価値観は、『みんな違って、みんないい』んです。社会や男性のものさしで線引きされることではないです。ただ、する・しないは、自由だけれど、更年期前後の女性の腟は劣化が早い! なので自分で触れて、ケアをすることは医療の領域でも大切であるという点は、ほんとうにお伝えしたいですね」(富永先生)
森田敦子さん。日本における植物療法の第一人者。サンルイ・インターナッショナル代表。植物療法に興味を持ち渡仏、フランス国立パリ第13大学で植物薬理学を学ぶ。帰国後、デリケートゾーン&パーツケアブランド「アンティーム オーガニック」の処方・開発や、「ルボア フィトテラピースクール」、フェムテック・ウェルネスメディア「WOMB LABO」を主宰
富永喜代さん。富永ペインクリニック院長。医学博士。日本麻酔科学会指導医。1993年より聖隷浜松病院などで麻酔科医として勤務、2万人を超える臨床麻酔実績を持つ。2008年愛媛県松山市に富永ペインクリニックを開業。全国から患者が訪れ、のべ23万5000人の痛みを治療し、性交痛外来では、5000人のセックスの悩みをオンライン診断している
更年期の女性の意識や葛藤、さまざまなお悩み事例とともに、おふたりのディープな対談と、フェムケアアイテムのバリエーションや、いろいろな最新フェムテックのツール、マッサージ法などについての詳しい情報の詰まった記事は、
で特集しています。ぜひ読んでみてくださいね。
撮影/天日恵美子 ヘア&メイク/佐々木篤
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