外陰部を「揺らす」機能のフェムテックを味方に
富永 男性は「セックス=挿入」と考えがちなので、セルフプレジャーグッズが「アダルトグッズ」と呼ばれていた頃は、ペニスの形をしている、ちょっとグロテスクな挿入型がメインでしたよね。
森田 今はかなり進化しました。おすすめは、「SMILE MAKERS」というドイツのメーカー。女性が多く開発にかかわっていて、色や形もかわいいので手に取りやすいですよ。腟に当てたり少し中に入れて振動を与えたり、使用したい場所によっていろいろなタイプのものを選べます。
挿入しなくても、クリトリスや腟まわりを揺らすことで粘液が出たり、オーガズムを感じてホルモンが分泌されたりします。
富永 女性の立場としては、痛いだけのセックスよりも、クリトリスや会陰を、自分で思うリズミカルで優しいタッチで刺激されるほうがよっぽどオーガズムに導かれやすいし、合理的ではと思います。
森田 私がフランスで師事した教授クロード・エステュールジー先生はセクソロジー(性科学)専門の医師でした。セクソロジーは人間の性行為や性的機能に関する問題について科学的に研究する学問のこと。「女性がエロティックな想像ができなければ、必要な粘液は出ない」と医学的にも言われていて、決していやらしいことではないんです。
富永 目的も体の状態も、それぞれに合った選択肢があるのが今のフェムテック。その恩恵をとことん、楽しんでいいのではないでしょうか。
お悩み事例①
夫にだけ「腟萎縮」、妻にだけ「ED」問題は多発している
男も女も、みんな性に傷ついているんですよね。相手の態度に萎えたり、家族になると、性的魅力を相手に感じなくなったり。「動物の行動学に学べ」と、よくお話しするのですが、頭で考えないで。まず「視線を交わす」「肩に触れる」「腰に手を回す」「髪をなでる」といった、相手に警戒心を抱かせないコミュニケーションをもう一度、あきらめずに積み重ねていきましょう。(富永喜代先生)
お悩み事例②
最近、濡れなくなってしまって…。
最後は、「幸せなお悩み」を紹介したいと思います。これは83歳の夫がいる、75歳の奥さんのお悩みだったんです。この人の話では、「セックスのとき、夫はいつも“きみの中は温かくて気持ちがいい”と言ってくれるんです」「セックスの前はいつも、彼が足のマッサージを20分以上してくれます」とのこと。二人で会社を起こして二人三脚の人生だったご夫婦。奥さまにはエストラジオールのオイル(エッセンス)マッサージを指導。「また濡れるようになり、彼も満足しています」とのことで、お肌もツヤツヤ。皆さん、希望を感じませんか?(富永喜代先生)
挿入しなくても、腟まわりに振動を与えるだけで、幸せホルモンが分泌されます(森田敦子さん)
初心者でもトライしやすいセルフプレジャーグッズ
森田敦子さんが立ち上げたフェムテック・ウェルネスメディア「WOMB LABO(ウームラボ)」内セレクトオンラインショップでは、セルフプレジャーグッズが購入可能。「腟まわりに当てるだけ、揺らすだけのタイプがおすすめです」(森田敦子さん)。
【左から】
- 1. 従来のバイブレーターにはなかった「挿入しやすい形状」でしっとり柔らかな肌触り。プレジャー・アイテム・フィット MINAMOZUKI ¥12,500/iroha
- 2. クリトリスから陰唇まで当てて「揺らす」ためのバイブレーター。THE FIREFIGHTER ¥6,600/WOMB LABO(SMILE MAKERS)
- 3. 持ち運びもできるポケットサイズで見た目もかわいいバイブレーター。THE SURFER ¥3,300/WOMB LABO(SMILE MAKERS)
富永ペインクリニック院長。医学博士。日本麻酔科学会専門医。 1993年より聖隷浜松病院などで麻酔科医として勤務、2万人を超える(通常1日2名のところ、1日12名)臨床麻酔実績を持つ。2008年愛媛県松山市に富永ペインクリニックを開業。痛みの専門家として全国でも珍しい性交痛外来を開設し、1万人超のセックスの悩みをオンライン診断している。性に特化したYouTubeチャンネル『女医 富永喜代の人には言えない痛み相談室』は、チャンネル登録者数28万人、総再生数は6600万回超。SNS総フォロワー数44万人。真面目に性を語る日本最大級のオンラインコミュニティー『富永喜代の秘密の部屋』(会員数1.6万人)主宰。『女医が教える性のトリセツ』(KADOKAWA)など著書累計98万部。
日本における植物療法の第一人者。植物療法に興味を持ち渡仏、フランス国立パリ第13大学で植物薬理学を学ぶ。帰国後、デリケートゾーン&パーツケアブランド「アンティーム オーガニック」の処方・開発や、「ルボア フィトテラピースクール」、フェムテック・ウェルネスメディア「WOMB LABO」を主宰
撮影/天日恵美子 ヘア&メイク/佐々木 篤 構成・原文/井尾淳子