閉経前後の不安を抱える読者の疑問や質問をご紹介します。回答するのは自身の閉経ストーリーを語ってくれた産婦人科医の八田真理子先生です。
閉経前後の読者からリアル質問、ここが知りたい!
Q. 閉経前ですが、過多月経やPMSがひどくなってきました。対策や治療法はありますか?(50歳・自営業)
A. 黄体ホルモン剤単体かIUS(ミレーナ)、漢方薬がおすすめ!
個人差が大きいのがこの世代。子宮筋腫や子宮内膜症などの合併も多く、女性ホルモンの揺らぎ期でもあるため、その人にあった治療法を考えます。血栓症リスクの低い黄体ホルモン剤単体か、子宮内に黄体ホルモンが5年間持続放出されるIUS(ミレーナ)も保険適用。
ただし、粘膜下筋腫があると入れられない場合もあります。PMSには漢方薬が有効なことも。低用量ピルはホルモンの波を穏やかにして経血量も減りますが、血栓症リスクも上がるので慎重に投与する必要があります。
Q. 閉経して更年期の症状が出たらHRT(ホルモン補充療法)がいいと言われました。どんな不調がどの程度出たらおすすめなのでしょう?(48歳・主婦)
A. 不調の程度によらず、推奨します。
エストロゲンを錠剤やジェル、パッチなどで補うのがHRT。ピルに比べて補うエストロゲン量はごくわずか。のぼせや多汗、不眠、気分の落ち込み、関節痛、腟の乾燥など、ホルモンが減ったことによる症状と医師が判断すれば、いつでも保険で始められます。つらい症状がある人は、その程度にかかわらず、ぜひ婦人科で相談してみてください。
Q. 40代後半に月経が乱れてから、もう8~9年たっています。いつになれば閉経するのでしょう?(56歳・主婦)
A. なかなか予想はつきにくいのです。
55〜56歳頃までに9割が閉経を迎えるといわれますが、体質やストレス、環境、生活習慣などにより個人差があります。恋をしたり夫婦でも恋人同士のようにワクワクしている人、チャレンジ精神旺盛な人、さらには遺伝…などさまざまな要因により、予想がつかないのが閉経なのです。
Q. 周期が長く量も減ってきたので、閉経が近いと思っていたら、突然大量出血! これは異常ですか?(50歳・会社員)
A. 閉経あるあるです。エストロゲンの大暴れによるもの。
まずは子宮がんやポリープなどがないことを確認! 多くはエストロゲンが最後の力を振り絞って分泌量が急に増えるため。エストロゲンは子宮内膜を厚くし、通常は黄体ホルモンにより内膜がはがれます(=月経)が、黄体ホルモンが分泌されないと内膜は厚くなる一方で、はがれるときドッと出血します。黄体ホルモン製剤で調整できます!
Q. 月経がこなくなってそろそろ10カ月。「閉経すると女性じゃなくなる」と思えて寂しい気持ちになります。こんなとき、どうしたら?(49歳・会社員)
A. 女性らしいかどうかは別問題。毎日ワクワクを忘れずに!
そんなふうに感じる人も多少います。でも、たとえ病気で子宮や卵巣を全摘しても女性に変わりはないですよね? それと同じこと。閉経しても人は意識で変わります。ワクワクしてセックスもしている人のほうが断然きれいで若々しいはず。閉経を逆手にとり、「予定も立てやすいし妊娠もしない」と毎日を楽しむことを考えてみて。
Q. 閉経した頃から、ちょいもれが気になるようになりました。尿もれと閉経は直接関係がありますか?(53歳・パート勤務)
A. 閉経ではなく、女性ホルモン量に関係が!
尿もれはGSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)という病気です。更年期に起こるのは、閉経したからというより、女性ホルモン、エストロゲンの減少で尿道の粘膜や周辺組織の弾力が失われるためです。
Q. 閉経したら、急に太りやすくなりました。これはどうしてですか?(51歳・会社員)
A. 脂質代謝が悪くなるからです!
脂質代謝を促すのもエストロゲンの働き。閉経期はこれが減ってしまうので、脂肪がつきやすくなると考えられます。基礎代謝も下がるため、一般的に更年期には「太りやすく痩せにくい」と感じるもの。食事や運動などを見直してみましょう。脂肪は免疫とも関係しているので「ちょい太りぎみ」のほうが元気で長生きともいえます。
Q. 月経のバラつきや更年期の不調が気になり、婦人科に行ってみようと思います。こういった治療には保険がききますか?(47歳・自営業)
A. 健康保険が適用になるので、賢く利用しましょう。
閉経期、更年期の不調の改善にはほとんど健康保険が適用に。治療法は年齢や症状により低用量ピル、HRT、漢方薬などがあります。ただし治療ではなく、美容目的でHRTを受けたい場合は、保険適用にならないので気をつけて。
Q. 婦人科ですすめられてエクオールのサプリを飲んでいます。このような「女性ホルモン様」のサプリを飲んでいると閉経は遅くなりますか?(47歳・飲食業)
A. 直接、閉経を遅くする作用はないようです。
エクオールは、大豆イソフラボンが腸内細菌によって変化した成分で、エストロゲンに似た働きをしてくれます。不調の改善にもつながるデータは多数報告されていますが、直接エストロゲン量を増やすわけではないので、閉経が遅くなるかどうかはわかりません。
Q. 結局のところ、閉経が遅いのと早いのでは、どちらがいいのですか?(46歳・介護士)
A. どちらにもメリット・デメリットが!
閉経が早いとエストロゲンの作用が得られなくなり、骨粗しょう症や動脈硬化のリスクが高くなります。逆に閉経が遅ければエストロゲンの恩恵が長く続く一方、乳がんや子宮内膜症などエストロゲン依存性の病気のリスクが高まるデメリットが。
Q. 月経がなくなってほぼ1年。不調続きで婦人科に行くとHRTをすすめられました。少し不安です。(52歳・会社役員)
A. がんのリスクが上がらない薬剤も保険適用に!
HRTでエストロゲンを補うと、子宮がある人は子宮体がん(子宮内膜がん)リスクを回避するため黄体ホルモン剤(プロゲステロン)を併用するのが一般的です。今まで使用されてきた合成黄体ホルモン剤は、長期間使うと乳がんのリスクが若干上がるといわれていました。
ところが、2021年に国内で発売になった保険適用薬「天然型」黄体ホルモン剤は、乳がんや子宮体がんのリスクを上げず、HRTを受けていない人と変わらないというデータから、より安心して使えるように!
教えていただいた方
幅広い世代の女性の診療・カウンセリングを行う地域密着型クリニック「 聖順会 ジュノ・ヴェスタ クリニック八田」院長。著書に『思春期女子のからだと心 Q&A 資料ダウンロード付き』(労働教育センター)、『産婦人科医が教える オトナ女子に知っておいてほしい大切なからだの話』(アスコム)ほか。
取材・原文/蓮見則子