Q閉経前の月経の乱れに悩んでいるけれど、どうしていいかわからない人が多いようです。
更年期の月経はイレギュラーになって当たり前。程度に個人差はあるけれど、閉経に向かって変化していくのが普通です。
前触れもなく、突然止まってそれきりという人もいますけどね。
まず、閉経に向かっては周期がイレギュラーになります。28日周期だったものが短くなったり長くなったりバラバラだったり。
期間もイレギュラーになります。経血のある日は3〜8日間が普通だけど、それより短かったり(過短月経)あるいは長かったり(過長月経)。
あとは経血の量のイレギュラー。少なかったり多かったりね。
量は子宮内膜の厚さが反映されるんです。
1日に生理用ナプキン1枚だけというのが1週間続くなら少なすぎる(過少月経)。逆に、日中でも夜用ナプキンがあっという間にだぶだぶになっちゃう、夜は紙オムツみたいな大きなナプキンが必須…なんていう場合はやっぱり「過多月経という月経異常」よね。
これらすべてに症状の名前がついているということは、治療の対象になるということなんですよ。
Q 閉経前の月経不順で婦人科を受診してもいいですか?
もちろん、だから受診していいの。治療すべきよ。
「閉経に向かっている最中だからしょうがない」「閉経までの我慢我慢」なんて思ってはダメですよ。
そもそも月経中に体から血が出るってことは大変なことなんだけど、日常生活に支障がなければ、それはとりあえず正常。月経は人間の体の摂理であって、人の体を脅かすものじゃない。
なのに、女性は月経がくるとお腹が痛い、腰が痛い、頭が割れそうに痛い…、それで家事もできない仕事にも行けない、何もできない…これはもう日常生活に支障をきたしている状態です(月経困難症)。
閉経に向かっているときでもこういう症状があれば「月経異常」。症状があったら治療すべきです。
更年期で月経がいつくるかわからないのが嫌だという人もたくさんいます。
「来月、海に行くから」「海外旅行に行くから」って。
じゃあ生理をずらしましょうっていうのは、年齢に限らず、やっていいんですね。
Q 閉経までの月経トラブルは仕方ないと思われがちですが?
仕方ないとか、しょうがないなんて思わないようにしましょう。
昔々の女性は家にこもっていて、月経がきたらわら小屋へ行って静かにしていなさい、と言われていたという話があります。わらの上に寝そべってね。わらが汚れたら燃やせばいいんだからと。
家の裏が川だから、体が汚れたらすぐに洗えばいい。お風呂もないから裏の小川でお尻を洗って、いつもきれいにしておきなさいよって。そういう感覚の時代があったのね。
ショーツという下着もないし、もちろんナプキンもなかった。
でも今の女性はすばらしい下着もナプキンも月経用ショーツもある。
だから逆に月経だからって休暇もないし、休むなんて言ってられないし、男性と同じだけ働かなきゃならない。
そして今は、月経に左右され、コントロールされて「プールに入れません」「すみません、休みます」「ごめんね、旅行に行けないの」という時代じゃない。
こちらが月経をコントロールしてやろうという時代になったんです。
昔は月経にコントロールされている人生だったけど、逆に月経をコントロールしながら生きる社会になっているんですね。
Q 閉経前の月経の困り事で多いのは?
人それぞれですね。個人差も大きいから。
今は人生100年時代。「灰になってもオンナよね」という人もいます。つまり50代でも60代でも、70代以降でも女であることは変わらない。
1945年の終戦後くらいまでの寿命は50歳だったのよ、人生50年だったの! でも、その時代でも閉経する年齢は今と同じ50歳。更年期がどうのといっても、閉経と同時に寿命ということですからね。
ところが、閉経したあとも元気でいられることがわかってきたので「さあ、若さを保とう、若くなろう」と思う人が増えたの。
昔は人生50年で50歳で性生活がなかったのに、今は70歳でも80歳でも夫と仲良くしたい人もいる。
月経はもういらないという人がいる半面、毎月あるほうがうれしいという人もいるんです。
月経があることによって女を自覚する。「今日は生理だから今夜はダメなの」って伝えるほうが夫も喜んでいるというんです。
そういう人には、極低用量ピル(低用量ピルのひとつ)を処方したりもできます。
つらい月経はしばらくいらないという人はディナゲスト(黄体ホルモン剤のひとつ。これを飲んでいれば月経はこない)の処方、または、ミレーナ(子宮内に挿入して、少しずつ黄体ホルモンを放出することで子宮内膜が薄くなり、経血量が減る)でもよいかも。
いずれにしても、解決策はあるということなのよ。今はもうそういう時代。
月経に左右されるんじゃなくて、私たちが月経をコントロールできる時代なんですよ!
【教えていただいた方】
日本産婦人科学会専門医。医学博士。妊娠・出産はもちろん、思春期、更年期、老年期の女性に寄り添い、40年以上診療を続けている。著書に『婦人科医が不安と疑問にやさしく答える 更年期の処方箋』(ナツメ社)、『50歳からの婦人科 こころとからだのセルフケア』(高橋書店)など多数。
イラスト/Shutterstock 取材・文/蓮見則子