閉経へのプロセスは人によって千差万別ですが、閉経する年齢に関してもかなり幅があるようです。40歳で閉経した人もいれば、60歳でもまだある人も。 今回は、早く閉経してしまうことについて、婦人科の先生方にお聞きします。
将来の病気のリスクを考えると、ホルモン補充療法をおすすめ
【教えていただいた方】
幅広い世代の女性の診療・カウンセリングを行う地域密着型クリニック「 聖順会 ジュノ・ヴェスタ クリニック八田」院長。著書に『思春期女子のからだと心 Q&A 資料ダウンロード付き』(労働教育センター)、『産婦人科医が教える オトナ女子に知っておいてほしい大切なからだの話』(アスコム)ほか。
40歳未満で閉経することを、医療では「早発閉経(早発卵巣不全)」と診断します。
早発閉経は遺伝性のもの、自己免疫性疾患によるもの、外科手術や放射線治療などが原因のもの、といろいろなんです。
いずれにしても平均的な閉経は50〜51歳なので、10年以上早いということ。
そこまで早いと、女性ホルモン・エストロゲンに守られる期間が短くなり、30代から骨粗しょう症、動脈硬化をはじめ、病気のリスクが上がってしまいますよね。
妊娠を希望しているかどうかによるけれど、希望する人にはホルモン補充療法(HRT)を含めた不妊治療をします。
希望がなければ骨粗しょう症予防対策を一番に考えて、ホルモン補充療法はすすめます。
では、40代前半での閉経はどうなのでしょう?
45歳未満での閉経は定義づけられてはいませんけど、私はやはり将来のリスクを考えますね。
ホルモン補充療法を始めて、健康を保ってほしいと思います。
早く閉経するということは、単純に月経がなくなるという意味じゃないことを肝に銘じて。
30代から40代前半では、月経がちょっと不順だと思ったら、やっぱり婦人科に来てほしいですね。
正常な月経とは、周期が25から38日までの間で、期間は2日から7日。
そこから外れる人はぜひ婦人科を受診して、月経をきちんと整えてください。
そして他の病気がないかどうかチェックしてほしいですね。
45歳より早く閉経したら、もれなくお薬を出します!
【教えていただいた方】
土屋産婦人科院長および目蒲病院理事長。土屋産婦人科では、婦人科一般、美容皮膚科診療担当。“Total Care For Women” 、女性のライフスタイルを総合的にサポートしたいと考えている女性のためのクリニックで、東京都練馬区で産婦人科・婦人科・美容皮膚科の診療・治療をしています。1959年の開院以来、2代目として地域に密着した、患者さんに負担のない診療を心がけています。
45歳までは月経があったほうがよいので、それより早く閉経した方には、私はエストロゲン製剤(プレマリンやジュリナ)とプロゲステロン製剤(デュファストン)を処方しますね。
後々、支障が出ることを考えて、ホルモン剤を投与して月経を起こすようにしないといけないと思っています。
若い方で、女性ホルモンが出ていない方にホルモン剤を投与するのは「カウフマン療法(エストロゲン・プロゲスチン療法*)」といわれてきた、一般的な方法です。
*エストロゲン・プロゲスチン療法とは、卵巣機能不全の治療法のこと。ホルモン剤を使用して擬似的に自然なホルモン変化を促し、人工的に月経周期を作る治療法です。眠っていた卵巣が再び働き始め、次の周期からは自然に排卵をすることもあります。以前はカウフマン療法と呼ばれていましたが、2020年の産婦人科診療ガイドラインで呼び方が改められています。
やっぱり45歳ぐらいまでは、3カ月に1回でも月経を起こさないといけないので、お薬を出しますよね。
それは更年期的な症状があってもなくてもです。
ホルモンが出ないことによって血管が守られない、要するに動脈硬化が早く進んだりとか、心臓の病気とか、高脂血症になってしまったりとか。
もちろん骨粗しょう症もですが、体の中でいろいろなリスクが出てきてしまうので。
「2カ月たっても月経がこなかったらまた来てね」と伝えて、なければ来院してもらって。定期的に飲んでいる方もいます。
平均的な閉経年齢に近づくまで、飲んでもらっていますよ。
今の時代、47~48歳の閉経でも、ちょっと早いイメージ
【教えていただいた方】
1958年生まれ。対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座・新宿理事長。女性の生涯にわたる健康推進活動に積極的。『「閉経」のホントがわかる本 更年期の体と心がラクになる!』(集英社)が大好評。
平均的な閉経年齢よりだいぶ早く閉経したら、ホルモンに守られない時期がかなり早くやって来たということ。
残念ながら、その分だけ早く老化すると思ったほうがいいですね。
40歳未満で閉経する早発閉経はわずかですが、私のクリニックにも何人かは通ってきています。
「少なくとも50歳まではホルモンを補っておいたほうがいいわよ」と伝えて、皆さんホルモン補充療法をしていますね。
早発閉経の定義は40歳未満ですけど、45歳より早い人、40代で閉経すると「ちょっと早いねー」と言ってしまいます。
平均値は長らく50.5歳といわれてますけど、最近はもうちょっと遅いと思うんです。
大規模調査結果がないだけで、患者さんを見ているとやはり51歳か52歳の感じはしてますね。
だから、40代で閉経してしまうのはちょっと早いんじゃないかなと思うわけです。
実は47、48歳でも「ちょっと早い」と思ってしまうほど。
閉経が早い患者さんには、骨は大丈夫かな、血圧とか糖尿病とかはどうかな、動脈硬化は…と、老化の症状や機能の低下が早く出てしまわないか、自分で気にして調べておきましょうという話をしていますね。
昭和の時代まではね、30代になるとおばさんになって、40代ではみんなでっぷりしてきて、50代になるともう病気でヨボヨボになる、なんて普通に言われてましたが。
今はもう、みんな見た目だって若いでしょう。
昔よりウエストが細くなったり胸が大きくなったり、スラッとした体型になったりしてきている。
人間というのは、思っているようになっていくんだなって思いますね。
40代、50代で老化するとか中高年の病気になんかなってはいられない。
だから、早く閉経してしまったらホルモンを補充することが大事だと思っています。
イラスト/Shutterstock 取材・文/蓮見則子