更年期の不調を、ようやく口に出して言えるようになってきた日本。おかげで更年期に関する情報も世の中にあふれています。正しく情報を選び、自分の症状と向き合って、きちんと改善していこうという勇気も必要です。
今回の話を伺った先生
1958年生まれ。対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座院長。産婦人科医、医学博士。女性の健康のための啓蒙活動を行う。9月4日、吉川千明さんとの共著『「閉経」のホントがわかる本 〜更年期の体と心がラクになる!』(集英社)を上梓
物理的に女性ホルモンを補う、根本治療
HRT(ホルモン補充療法)とOC(低用量ピル)
HRT(ホルモン補充療法)は、更年期に欠乏した女性ホルモンを薬で補い、不調を改善する方法も。保険も適用になる根本治療です。ホルモンを若い年代の量まで増やすわけでなく、補うのは必要最小限の量。ほんの少し前の状態に戻すことで、ホルモンの急激な減少を緩やかにします。閉経前の人には、OC(低用量ピル)が使われることもあります。どちらも医師とよく相談して。
急減するカーブを緩やかにするのがHRT。一方のOCは、急降下が始まる前にホルモンを補充。脳が安心し、ホルモンが安定します
保険が適用になるタイプも!
プラセンタ注射
美容のイメージが強いけれど、実は更年期症状の治療として認可されている、医療用の注射剤もあります。プラセンタは「胎盤」のことで、医療用プラセンタは、ヒトの胎盤から有効成分を抽出したもの。栄養豊富な成分で、さまざまな効果が期待されますが、なぜ更年期症状にも効果があるのかは、まだ研究途中。治療を受けた人は献血ができなくなるので気をつけて。
クリニックの処方から市販薬まで
漢方薬
昔から更年期症状の治療に使われてきた漢方薬。婦人科では保険が適用になり、HRTと併用して処方されることも普通です。一人一人の体質や体調を見極めて症状に合った薬を決めるので、漢方に詳しい婦人科ドクターとの出会いが重要。また、医療機関ではないけれど、専門の漢方薬局に相談してみるのも手。更年期向けの市販薬も、漢方処方に基づいています。
100年以上の歴史を持つ命の母は、13種の和漢生薬とビタミン類の複合薬です。「命の母A」〈第2類医薬品〉¥2,600(420錠35日分/84錠・252錠・840錠もあり)/小林製薬
東洋医学のパワーを借りる
鍼灸・ツボ
更年期の症状は「腎」や「肝」の問題ととらえることが多い東洋医学。一時的な対症療法から、根本的に改善しようとする本格治療までいろいろ。自分でも気軽に試せるツボ押しは、特定の症状を緩和したいときに便利です。
栄養不足から不調が出ている人も
食事の改善
栄養が満たされると、心身の調子は確実に底上げできるもの。40代・50代に不足しがちなタンパク質、ミネラル類、ビタミンB群を十分とるように心がけて。また、意外に効果を発揮するのは糖質を控える血糖値コントロールです。血糖値の無駄なアップダウンがなくなると、ホルモンバランスが整うだけでなく、精神症状が改善されることも。
イラスト/しおたまこ 構成・原文/蓮見則子